Sunday, May 26, 2013

おいしい話 No. 73 「ドライブの旅、Yakimaまで」



1泊でどこか素敵なところに遠出をしたいと考えているあなた、是非、今から紹介するルートに沿って、WashingtonYakimaまで車を走らせてみて。

ワイナリー巡りといえば、Oregonにも沢山ワイナリーはあるけれど、それだけではない楽しみが このルートにはあるのよ。

 

私がパワースポットだと断言し、主張し続けるColumbia Gorgeを抜けるH84Columbia River Hwyは、何度走っても飽きない 美しさと、神秘的な渓谷を見せてくれる。なんかGorgeを訪れる度に、心と体が浄化されるように気持ちになるんだよね。

途中Hood Riverに寄り ランチを取る。Hood Riverもいろんなレストランがあるから その時の気分で決めて良しだけど、どうしてもどこに行けばいいかわからない場合は、Nora’s Tableもいいよ。新鮮な食材を使ったNWらしい料理に、ちょっぴりフレンチのテイストが入ったおしゃれな料理。そして食後に必ず行って欲しいのが、Mike’s Ice Cream。ローカルにもVisitorにも大人気の、素朴な手作りのアイスクリーム屋さん。Baby Size ($2)のスクープは、「ちょっと待って、それホントにBaby Sizeかい」と、お姉さんに突っ込んだほど普通盛りだった。 Baby Baby Size ($1)でも たぶん私には充分でなかろうかと思われる。

アイスクリームを舐めながら Hood Riverの町を軽く散策した後は、引き続きColumbia Gorgeの美しさを堪能しながら H-84 を更に東へ。Exit104番で降りると、南はBend、北はYakimaに走るUS-97のハイウエイに差し掛かる。このハイウエイを北に、Colombia Riverを跨ぐ橋を渡り、Washington州に入る。

川を見下ろす丘を登り始めると、風力発電の巨大な白いタワーが 1本、2本、3本と見え始める。車がどんどん丘を上がっていくにつれ、その数が数本でないことに気付く。何本も何本も、次の峰、そのまた向こうの峰と、広範囲に渡って建ち並んでいる。この光景は、なんとも言えず ただ壮観で、圧倒される。これを人間が作ったのか。明らかに人間が作ったのだけれど、ピラミッドに匹敵するミステリーを感じる。「I can’t believe people made these!」ハビーに嫌がられるほど これを連発していた私。Yakimaからの帰りも 同じ地点で、同じ興奮状態になっていた。

Yakimaまでの道のりは とっても緩やかで キツイカーブもなく、スムーズなドライブを楽しめる。

宿泊は 普通のホテルもいいけど、Bed & Breakfastの体験もお勧め。私たちは オンラインで 当てずっぽうで見つけたOrchard InnというB&Bに泊まった。HennerKarenの夫婦だけで経営している4部屋だけのInn。リビングルームで話好きの二人と お茶を飲んでいると、なんだか実家に帰ってきたような気分になる。

チェックインした後は、ワイナリーの地図を掴み、いざワインテイスティングへ。Treveri Sparkling Cellarsはスパークリング ワインのワイナリー。ヒラリークリントンのパーソナルシェフが、ある政府の晩餐会用に、わざわざやってきて選んだというExtra-Brutを味わえる。他にSeverino Cellars, Hyatt Vineyards, Two Mountain, Paradisos Del SolSilver Lake Winery at Roza Hillsなどなど。とにかく、半日では回り切れない数のワイナリーがYakimaにはあるけれど、その時の気分と足の向くままに訪れてみて。チェリーの丘や、ブドウ畑の間を抜けて次のワイナリーへと続く道は、映画「Sideways」のシーンを思わせる。これからはどんどんいい季節になるよね。

夕食はDowntown Yakimaで。Yakimaの人が勧める店で必ず名の上がったレストランのひとつがCafé MelangeMedium rareにローストした鴨の料理“Marionberry Duck”は、私の鴨料理に対するイメージを変えた。今までの鴨体験でトップに立つよ。まだワインテイスティングが飽き足らないなら、食後の散歩をしながらGilbert Cellarsに。ここは夜の9時くらいまでワインテイスティングができる。

 

Yakimaからの帰りも、US-97を戻ってくるのだけど、Columbia Gorgeが開け、Columbia川が見えてきたら、Washington側で、川沿いを東南に走るH-14, Lewis and Clark Hwyに差し掛かる。ここですぐにOregon側に渡らず、このH-14に乗り西に走る。そうすると左手に Columbia川を見下ろす、1940年にオープンしたMaryhill Museum of Artの建物が見えてくる。こんな所に美術館があるなんて 知らない人多いんじゃないかな。結構大きな建物で、展示場がいくつもあり、あらゆるジャンルのアートが展示されている。

美術鑑賞の後は 引き続きUS-97を西に少し走る。今度はMaryhill Wineryが見えて来る。ワイナリー巡りの締めとして、最後のワインテイスティングをするもよし、ワインを1本買って、テラスでゆっくり楽しむもよし。ここからの景観もまた最高。青い空と、開けた渓谷、雄大に流れる川と足元に広がるVineyards。この美しさに心が洗われるというか、ちょっと一人で浸ってしまう、人間って、とか、生きるって、とか、人生って、とか、、、て。

 

そして帰りは US-97からH-197に乗り、その橋を渡ってOregon側に戻ってくる。そのままH-84Portlandまで。

 

ドライブの疲れもなく、美味しい料理を食べて、美味しいワインを飲んで、美しい景色を楽しめる!最近 人にシツコク勧めている1Getawayコースです。

 

 

Kiki

 

Nora’s Table

110 5th St  Hood River, OR 97031
(541) 387-4000

 

Mike’s Ice Cream                                                                             

504 Oak St  Hood River, OR 97031
(541) 386-6260

 

Orchard Inn

Bed & Breakfast, LLC

1207 Pecks Canyon Road

Yakima, WA 98908

 

Café Melange

7 N Front St  Yakima, WA 98901
(509) 453-0571


Posted on 夕焼け新聞 2013年5月号

おいしい話 No. 72 「Daddy Mojo’s Cafe」


NE FreemontNE 15thの角にDaddy Mojo’s Caféというバーがある。Caféというネーミングに騙されそうだけど、ここはいわゆる場末のバー。ビデオポーカーやブラックジャックなどのゲームの前に PBRを飲んでるオッチャンやオバチャンを昼の2時くらいから見るような そんな飲み屋。

NE Albertaに引っ越ししたばかりの数年前、シアトルから遊びに来た仲間たちと、Daddy Mojo’s Caféでご飯を食べることになった。あの時、なぜDaddy Mojo’sを ご飯を食べる場所として選んだのか、全く覚えていない。場末好きの友達Aのせいか、南部料理好きの友達Bのせいか。(料理はジャンバラヤとかガンボとか南部系だった。)3ドルのウイスキーサワーを飲みながら、イマイチなメニューをぼんやり、やる気のない感じで眺める。

南部料理もなあ、、、。いったい ここで何がDecentな料理なのか。こんな店でも無難なチョイスってどれ?

「あ!」

見つけた。「Yakisoba」!

あんなに これだっ!と思った瞬間はなかった。チープな酒にやられていたのか、あの時私は 焼きそばだったら 間違いない、と確信した。

勿論それは 大きな間違いだったけど。

南部料理がメインの場末のバーのメニューに、「Yakisoba」、とポツンと一品だけ載っている日本料理。信頼できるわけがない。実際、一口食べて 自分の浅はかな決断に腹が立った。「マズい、、。」

ハビーにも バカじゃねえの?と散々馬鹿にされた。あそこで日本料理の選択はしないでしょ、普通。

 

それからというもの、NE FreemontNE 15thの角を通る度に、あのマズい焼きそばを思い出す。あの日以来 一回も行ってないけど、今もDaddy Mojo’s は健在。今となっては笑い話の思い出だわ、なんて思いながら この間もその角を通りかった。

「あ!」

自分の目が信じられなかった。

Daddy Mojo’s Caféの隣に「Mojo Sushi」が出来ていた!

店の奥の部分を改装し、新しい出入り口のドアを取り付けていた。そしてそのドアの上に大きく掲げられた看板。 「スシぃー?」

焼きそばもまともに作れないのに 寿司とはまた、、、。

帰ってハビーに話すのが待ちきれなかった。

 

しかし、あの新しい看板を目撃した日から、私は どうにも Mojo Sushiに行きたくなってしょうがなかった。どんなにマズいか 見てみたい。期待度ゼロの期待が高まる。怖いも見たさの好奇心がどんどん湧いてきて止まらない。

 

ついにハビーを引っ張って Mojo Sushiのドアを開いた。

ミニ ダイナー的な内装に 小さいけど一見本格的な寿司のカウンターがあった。客はカップルが一組と、私たちが座ったテーブルの反対側に DVDを見ながらフライドチキンやハンバーガーを食べているメキシカンの子供達がいた。親はたぶん、アーチ形に切り抜いた壁の奥にあるDaddy Mojo’s のバーで飲んでいるのだろう。そして明らかに 寿司ではない料理も食べられるようだ。

店内の装飾のテーマは多様化もいいとこ。日本風、中国風、韓国風、タイ風、インド風に、どこ風とも言えない絵や写真、オブジェが飾られている。メニュー事態はアメリカで見る普通の日本食レストランにある料理だけど、ロールの種類が半端なくある。メニューを持ってきて 注文を取ったこの小柄なアジア系の女性が、どうやら寿司を作っているようだ。彼女がここの料理長? キョーレツなコンビネーションの創作ロールは避け、味の良し悪しがわかりやすく、怖い気もするが、スタンダードでシンプルなマグロやネギハマの巻き物と、ハマチカマ、きゅうりの酢の物を注文した。

 

バーの方から スポーツの中継やビデオポーカーのスロットの音、大声で話す酔っ払い客やバーで働くおばちゃんのガサツな話し声が聞こえて来る。昨今の不景気、たくさんのビジネスがオープンしては閉めていく中、どうしてこの店がこのロケーションで 何年も潰れずに営業できているのか、不思議だ。

 

注文した飲み物がバーから運ばれてきた。中肉中背の愛想もへったくれもない中年のおばちゃんが、はいよ、てな感じでテーブルにグラスを置く。私の注文した白ワインに目を見張る。上品さとかよりも 量でしょ!ていうくらい、なみなみと注がれていた。「$5?!  I am going to order that for my next drink!」ハビーが本当に量に釣られて 反応する。

 

出てきた寿司は 期待していたマズさもなく、期待外れの美味さもなく、、、。Daddy Mojo’sと日本食の関係は不明のまま。心に強く焼き付いたのは、あのワインの盛りだけだった。バーの壁いっぱいに飾ってあるジョージクルーニや ジェニファーアニストン、オバマなどの有名人のサイン付写真。絶対来てないよね、て断言できるけど、是非訪れて確認してみてほしい。

 

 

Kiki

 

Daddy Mojo’s Cafe

1501 NE Fremont Street
Portland, OR 97212

(503) 282-0956


Posted on 夕焼け新聞 2013年4月号
 

おいしい話 No. 71 「ある関係」



テーブルが空くまで エライ長いこと待たされるかも、と予測できながらも、それでも行きたいと思うレストラン。相当料理が美味しくて、値段もそこそこ納得が行かないと、そんな存在には成り得ないよね。

それは「OX」いう名のレストラン。あの味のためなら 1時間“ぐらい”待てると思えるレストラン。

 

ポートランドに住むグルメ人、雑誌に取り上げられた店には どんなロケーションであろうと見つけ出し、その味を体験しようと情熱の炎を燃やす。なんでまたこんなとこに、と思うNEMLK通りにある「OX」には そんなグルメが群がっている。もちろん評判の店には 一回は行ってみたいわよ。でも 予約は取らない、待ち時間は長い、全員が揃わないと席に着かせてくれない、そんな店にまた行きたいと思う? 1回体験できれば充分じゃない?

それが、「OX」は違うんだよね。それを承知で、また行きたくなっちゃうのよ。あの料理のために。

 

先日も友人と、「OX」の料理をまた食べたいと話していたら、その悶々とした気持ちが抑えきれなくなり、「じゃ7時に現地で」と、急遽出動することになった。

ドアを開けて入るとすぐ、先に来た客の壁にぶつかった。その壁の端から 中を覗きこむと 満席の店内の賑わいが見えた。こりゃ確実に待ちだな。水曜日の夜なのに、、、。

45分だったら平気だよね。」 普通なら出てこないセリフなはず。名前と電話番号をホステスに告げ、彼女が促す隣接するバーに移動。そこでピールを飲みながら 彼女からの呼び出しを待つことにした。

このバーも 「OX」のテーブル待ちの客で満員だった。「ここもテーブル待ち30分とか言われたらジョークだよね」と、笑うに笑えぬシチュエーション。

 

1時間後にやっと呼び出しコールが鳴った。お腹がが空き過ぎて 機嫌が悪くなる寸前だったけど、今はニコニコ顔の二人が用意されたテーブルに着いた。

大忙しな店内、サーバーのお兄さんがなかなか来ない。やっと来たと思ったら、カレ、ちょっといっぱいいっぱいな感じ。取り敢えずワインを注文し、一先ず落ち着く。「どれにするぅ? シェアしようよ。今夜のスペシャルなんだろうね。聞いてみよう。」メニューを見ながら ワクワクする二人。サーバーがワインを持って戻ってきた時に、今夜のスペシャルは?と ご機嫌状態で聞いてみた。「Are you guys first time here tonight?

今夜のスペシャルは?という質問に対して、君たちはここ初めてなのかい?っていう返しって、どういうこと? 友人と顔を見合わせる。

Well, we don’t have “special” because everything on the menu is special」とサーバーが続ける。そいじゃあ どれが美味しくてお勧めか教えてよ、と要求する。

Well, our Beef Ribeyes are good. Lamb Shoulder Chop is good.  And for small plates, I like these bottom four on this side of the menu.」そう言って、一旦テープルを去ったカレ。友人と顔を寄せ合い メニューを見下ろしながら、「なんか高いものばかり勧めてなかった?」と、カレが指した品の値段をチェック。しかも 「この下の4品目がお勧め」って、すごい手抜きじゃない? ちゃんと一品一品説明してよね。いくら忙しいからって説明する時間をカットするって、ヒドクない? ちょっと憤慨な感じ。

待ち時間の長さは兎も角、サーバーがイケてないのはダメよ。いくら味がよくても サービスが悪いと客は離れていくからね。ぜーんぜん ダメ。

 

私達が注文したBeef Skirt Steak, Wild Prawns, Roasted Brussels Sprouts & Butternut Squash, Tuscan Kale Risotto, そしてAsh-Roasted Sweet Onion, 次々と運ばれて来た。「美味しいーーー!」それしかなかった。それの連発だった。このレストランが謳ってるのは、Argentine Inspired Portland Food。どのパートがアルゼンチンなのかは ちょっとわからないけど、ポートランドの新鮮な食材が素晴らしく活かされた、まさにポートランドのグルメNerdsのための料理なのは確か。

 

こうやって書きながら、またOX」のことを考えている。ひどい扱いを受けてもまた戻っていくRelationshipのように、あの料理のことを考えると、長い待ち時間も、いっぱいいっぱいなサーバーも、大したことではないと思える。あの幸せなひと時を味わえるなら、あとは目をつぶれる。どんな仕打ちも 我慢できる。まさに 食に対する人間の欲望を掻き立てられるレストランだ。その欲望が満たさせる限り、私はまたあそこに戻る。他の誰が 何と言おうとも。


 

Kiki

 

OX

2225 NE Martin Luther King Jr Blvd  

Portland, OR 97212
(503) 284-3366

http://oxpdx.com



Posted on 夕焼け新聞 2013年3月号