Sunday, November 17, 2013

おいしい話 No. 78 「こんな日が来るなんて!」



人生最初の同性愛者の結婚式に出席してきた。まさか、生きている間に、こんな日が来るなんて。結婚式を挙げる当の本人も ま、さ、か、本当にこの日が現実になるとは 思ってなかっただろうね、ずっと願っていたとしても。

結婚したのは 長年の友達であるゲイの男の子ケイちゃん。「男の子」と言っても 私よりも年上の立派なおっさん。だけど 体型や若顔のせいで、「男の子」を保っているケイちゃんは、年上キラー。そしてお相手の方は、年上の 背の高い、品の良い雰囲気のアメリカ人男性。

晴れの日にふさわしく、小さな花のコサージュを胸に刺し、スキッとスーツを着こなした二人が 牧師の前に誇らしく立っている。お互いの手を取り、見つめ合いながら 牧師に従い、誓いの言葉を復唱している。

本当にこの日が来るなんて!


ケイちゃんに会ったのはアメリカに来てからで、私にとって初めてのゲイ友。 日本にいる時は、ピーターとか、美川憲一、カルーセル麻紀を代表として、テレビに映る芸能人しか知らなかった。(あれ、古い?でも 昭和でこれだけのキツイキャラ出して生きてたって、今考えたらすごい。)地元でも遭遇したことのなかったゲイ人に アメリカの学校のキャンパスで フツウに出会った。

ケイちゃんはおっとりと、平和的で、しずかーな男の子で、私より遥かに女らしかった。話し方も可愛らしく、当時のパートナーと同棲していたが、いつも恋をしていた。校内にあるコーヒースタンドの回りに集まり、他の女友達と混じっておしゃべりをするのが日課だった。私はそのうちに あと2人の日本人ゲイ人と知り合いになった。このコーヒースタンドで働くバリスタのオジサンも含め。日本からゲイ人口が流れて来ている!と思った。3人しか知らないけど。

ドギツイキャラのゲイ能人達は生きられても 素人には住みにくい日本だったのか。今では日本も随分変わり、一般のゲイ人も沢山カミングアウトし、オープンになっているように見られるけど、1015年前は まだまだクローゼットに入ったままの人が多かったんだろうね。自由になるには日本を脱出するしかないと、アメリカ移住計画を実行したようだ。


ケイちゃんと遊ぶようになって ゲイの男とはなんたるや、が面白いように、また怖いように見えて来た。ま、ケイちゃんの場合で言わせて頂くと、非常に恋愛に貪欲。真剣な関係を持つことでも、遊びの関係を持つことでも、いつも恋愛でウキウキしている状態でいる事を望む。あくまでもケイちゃんの言葉ですが、「浮気は当たり前。イイ男がいれば 行くわよ。」紙面には表現できない大胆発言も多い。平気で夜の営みの描写をしてくる。「カイカンは自ら追及していくものよ」は、ケイちゃんからのアドバイス。そう、イノセントな男の子を装いながら 実は物凄くはっきりしていて ストレートなヤツなのだ。


ケイちゃんは 前のパートナーと別れた後、次の恋愛へと進み、いろんな人達出会い、デートをした。相手のカレの言葉や行動に、天国に昇ったり、地獄に落ちたり、手相やタロット、電話でのサイキックなどで運命の行き所を探り 一喜一憂したり。普通の女子がクレイジーになる所となんら変わらない。

今のカレとも相当なドラマを繰り返した。女が時に正気じゃ無くなるそれと同じく、髪を振り乱し、相手の家まで乗り込んだこともあった。

そんなこんなとありながら、最後にはカレと違う州に引っ越して行った。


しばらく音沙汰がなかったケイちゃんから、突然結婚式の招待状が来た。グリーンカード申請のこともあるから、ちょっと急に決まって突然だけれども 出席してくれたら 嬉しい、と。「結婚」!「グリーンカード」! 同性愛者の結婚が合法化され、移民に関しても連邦政府でも認知されたとなれば、永住権申請も出来るようになるんだ!

アメリカはすごい進歩を遂げている。まさかこんな日がくるなんて。


お祝いのスピーチに あのバリスタのオジサンが立った。20年間連れ添ったバートナーを横に自分達も今年の8月に結婚をしたと皆に報告した。ゲイとして生きて、ここまで来るのに どんなに大変な目に合い、辛い思いをしたことか、と感極まる思いに涙をこぼしていた。そしてケイちゃんがこの日を迎えた事をとても喜んでいた。アメリカ移住は成功だったじゃあん!と 一概に他人が言えない苦労があったんだね。でも、本当にここまで粘って、辛坊してきた甲斐があった。世の中は着実に変化していってる。まさかと言いながら、夢に描いていた日が こうやって来たんだからね。


Kiki
 
 
Posted on 夕焼け新聞 2013年10月号

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