Monday, January 20, 2014

おいしい話 No. 80 「納豆のチカラ」


最近恐ろしい事に気が付いた。女友達との会話で、「更年期かも」というセリフが、頻繁に出て来るようになってきた。相手が変わっても、同年代の女達に会えば、必ず出て来る。「更年期入ったかも」、「これって 更年期障害のひとつ?」もはや 自分の母親や、オバちゃんたちの話ではない。「自分達の話」になってきた。その現状にハッとした今日この頃、、、。OMG!自分より遥かに上の、年寄りに起こる未知の病だと思っていたのに、そんなお年頃に もう自分がなっちゃっているなんて。

いつまでも若ぶっていたいアタシ達は、「更年期」と自分が重なり合うのを避けるべく、今までは「ババ菌!」のように「更年期」という言葉を お互いに擦り付け合っていた。(メンタリティーは小学生。)

でもね、ちょっとの事でイラッ、ときたり、落ち込む時はズドーンと落ち込んだり、涙腺の緩み度が広がったり、疲れが酷かったり、異様に眠たくなったり、今まで 気にすることの無かった心と体の変化に気付き始めると もう無視はできない。これは真っ向から受け止めるしかない、と思うようになってきた。やっと。

しかし、そもそも 更年期とは、更年期障害とは、なんぞや。

知らないで避けるのでなく、知って直面するべし。先日、初めてインターネットで調査してみた。

「更年期とは、女性ホルモンを分泌する卵巣の働きが衰えて停止し、女性ホルモンが欠乏した状態で体が安定するまでの時期を指します。

具体的には、閉経をはさんでその前後10年ぐらいの期間を指しています。」

http://kounenki3.web.fc2.com/

そうかあ、閉経になる前から 更年期の期間に入るんだ。

40代、50代となるにつれ、卵巣の中にある卵胞が激減する。それにより、卵巣の機能が衰える。つまり、卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの量が減るということ。そうすると、体のホルモン環境全版に影響を及ぼすことになる。

いや~ん! 

卵巣から十分にホルモンが分泌されないところに、脳下垂体から刺激ホルモンが分泌され、女性ホルモンのバランスが崩れる。

「そうすると、自律神経の働きや情動まで影響を受け、様々な症状が襲ってきます。これが更年期障害です。」http://kounenki3.web.fc2.com/

女友達にすぐさま電話する。「アタシ、更年期の枠にもう入ってるよ、絶対。」

彼女に、前日ハビーの言動に瞬時で激怒となり、メラメラと脳みそが燃え上がった、という話をした。驚くのが、100分の1秒の速さで「自分なりの解釈と結論」を出し、それが怒りに変わるという事。そして、勢いで責め立てた後、豆鉄砲をくらったハビーの冷静な説明を聞き、まったくの誤解だったことが解る。そうすると、取り付いていた物が去って行くかの如く、すーっと冷静になり、視界が見えて来る。

「私も。最近それしょっちゅうやってる、旦那がかわいそうなくらい。」と彼女。

「怖い、、、。女性ホルモンが減るって、鬼婆になるってこと?」


そこで すかさず彼女が一言、「納豆だよ。」


納豆。確かに納豆は体にイイというけれど。

「納豆にあるイソ何とかっていう栄養が、女性ホルモンのエスト何とかっていうのと同じ働きをするんだって。私、毎日食べてるよ、今。」

またインターネットに戻る。

更年期障害を改善する食品 納豆

納豆の原料である大豆の主成分と言えば『イソフラボン』です。

イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)に似た働きをしてくれるので、加齢によって減ってくるホルモンを補充することができます。」


おお!これか。

しかもアンチエイジングの効果も有り!皮膚を若く保つ働きをし、老化防止にも役立つ。抗酸化作用もあるから シワやシミの原因となる活性化酸素の働きも抑える! 毎日食べてる彼女の気持ち、わかります。更年期の枠に入っている私たちには、魔法のような食べ物じゃない!

早速近所の「Anzen」に飛んで行く。大量買いだぁ、と冷蔵庫を開けると、ひとつのメーカーの納豆がすっからかんになっていた。これも更年期障害に悩む乙女の仕業だと瞬時に解釈。同志がここポートランドにも五萬といるんだよね。

ポートランド。よく考えたら、ここはアメリカ。なのに日本の納豆が手に入る。臭くて、発酵している一見とんでもない食べ物が輸入許可されて日本から運ばれてきている。日本人もしかりだけど、渦中の女達には もう無くてはならないホルモン安定剤。アメリカに住みながら 納豆が買える幸せを改めて感じた日曜の午後だった。この安堵感が、まずは 更年期障害のひとつである鬱状態を軽減することになるだろう。

 

Kiki

 


参考資料:

http://kounenki3.web.fc2.com/

http://jyoseikonenki.sblo.jp/article/42487667.html

 

 
Posted on 夕焼け新聞 2013年12月号
 

おいしい話 No. 79 「トンカツの夜」



「明日の夜、うち出るから。」

女友達から電話が入った。

いよいよ来たか、この日が。胸がどきどき鳴り始めた。

「わかった。待ってるから。」

電話を切るなり ハビーに叫ぶ。「It is time for you to put away your crap in your studio!

旦那との間に問題が起こっている事を ずっと聞かされていたこの彼女、ハナ、別れたいと言い続けていた。いろんな事が噛み合わなくなり、ズレていくばかりの夫婦関係、修復の方に向かうどころか、どんどん状況は悪化していくだけだったようだ。

ガラクタをなんとか押し入れに突っ込んでいるハビーの横で 掃除機をかけながら、私はデジャブ―を感じていた。なんか 懐かしいこの感覚。夜逃げを手助けするのは初めてではないのよね。

10年ほど前、とっても仲良くしていた女友達から電話を受けた。「出る事に決めたから。」

オシドリカップルと思っていた友達とその彼氏。他人からは見えないところで彼女は悩み事を抱えていた。同棲生活5年、すでに二人でいろんなものを築いていたはずなのだけど、「もうこれ以上は無理」と、彼氏がいない間に出るという決心をした。彼女は身の回りのものだけを、詰めれるだけ詰め、スーツケース二個を引きずり、赤ワインのボトルを脇に挟み、私のアパートにやってきた。当時4畳半サイズのStudioに住んでいた私。彼女を待ちながら、ベッドの横の空いたスペースに座布団やらクッションやらを敷き詰め、小さな寝床を作っておいた。

トシを取ってくると、家族のように親密になる友達を作るのはちょっと大変、特に こんな外国人ばかりいるアメリカなんかにいたら尚更無理だろ、と思っていた。でも不思議な事に、一生付き合うことになるだろう女友達ができた。しかも 揃いも揃って 皆、問題話に尽きない、一癖も二癖もある女達ばかり。動物的で、原始的で、彼女達は 女の「ナマ」の部分をストレートに見せる。

なぜか、日本に居る時は そういう女の部分を見る事はなかったなあ。若かったからか、幸福だったからか。

マイノリティーとして生きるアメリカの地で、日本人の女がいかにサバイブしていくか、その意思と、野心と、理想、ここで出会った女達は、それを内に秘めない。

ハビーの仕事場に なんとか暮らせる空間ができ始めた。マットレスを敷きながら、シーツを掛けながら、私の思いがまたノスタルジックになって行く。「旦那がね、明日の夜、5時から10時まで居ないの。その間に、急いで荷物まとめて出るから、」電話でのハナの声。その感じ、すごーく身に覚えがある。

夜逃げを手助けした事があるばかりでなく、私も、夜逃げを助けてもらったことのある口だから。

十数年前、私も問題アリアリのRelationshipから逃げ出した。4年間同棲していた相手が12日の旅行に出てる間に、友達に車を出してもらい、早急に荷物を運び出し、当座友達の家に転がり込んだ。アタシたちの喧嘩の声を毎日聞いていた二階の女の子も運び出しを手伝ってくれた。

次の日の夜、ハナが玄関に現れた。小さなスーツケースと服をギューギューに詰めたTrader Joesの紙袋3個。彼女が栓の空いたワインのボトルをテーブルの上に置く。「気付けの一杯をやらないと、荷物をまとめられなかった。」

「ハナ、今日はトンカツだからね。」

久しぶりにお味噌汁のダシをとり、お米を炊飯器に仕掛ける。豚肉に塩コショウをかけ、卵を溶く。底の深いフライパンに油を注ぐ。

「アタシ、家でトンカツとかした事なかったな、すごい油使うと思って。でも それくらいでいいんだ。」ハナがキッチンに立つ私の横に並び、ワインの入ったグラスを差し出す。「何か手伝う事ない?」

「キャベツの千切り。」

手際良く、シャキシャキとキャベツを千切りにするハナを横目に見て思う。Relationshipて、いい時はいいけど、ダメになってきたらホント厄介なものよね。でも女達は、どんな問題が起こっても、「はいそうですか、じゃ、さいなら~」と簡単に去る事はしない。まずは戦う。とことん戦う。ぶつかって、跳ね飛ばされて、またぶつかって。涙も鼻水も流し切って、ヨレヨレになるまで 自分の幸せをそのRelationshipの中で見出そうとする。そして、相手との間を繋ぎとめる最後の線が切れた時、女は姿を消す。男がいない間に。

そうして 新開地を見つけ、志も強く前に進むが、また懲りずに「独りは嫌っ、パートナーが欲しいっ!」と叫ぶようになる。そんな厄介な女達と一生変わらず付き合いきれるのは、その厄介さを充分にわかっている女友達だけなんだろうね。



Kiki
 
Posted on 夕焼け新聞 2013年11月号