Saturday, November 28, 2015

おいしい話 No. 102 「ダイヤモンド探し」


何人の人が、自分の大好きな美容師さんを持っているだろう。センスがあって、腕が良くて、自分の「こうしたい」という説明をしっかりわかってくれ、そのイメージにより近く仕上げてくれる美容師さん。私は それって結婚相手を見つけるより難しいと思っている。
そう言う私でも、日本では10年同じ美容師さんと添い遂げた。アメリカに渡ってからも、里帰りするれば彼女の所に出向き、カットをしてもらっていた。この美容師さんとは、初回にいきなりケミストリーが反応し合い、私の夢の中のお姫様を語るような微妙な説明も、まるでその絵がはっきり見えてるかのように、「あ、こういうことね」と即座に理解してくれ、いつも思い通りのスタイルに仕上げてくれた。それは10年通い続けた中で、1度も壊される事のない強い信頼となっていた。

でもココでの美容師運はゼロ。アメリカ生活ウン十年、そういう「必ずこの人に」という美容師さんが、未だ見つかっていない。 
一度とっても素敵なカットをしてくれた女性がいた。しかし すっとぼけの私は、その女性の名詞を貰うのを忘れ、同じ美容院に戻った時にはその人を指名できず、薬中のような女性をあてがわれ、怒り爆発で帰ってきた。
とは言っても、私はそんなピッキーでもない。友達に言うとびっくりされるけど、どこにでも行く。$15くらいのスーパーカット系から、パールディストリクトにあるこじゃれた店まで、どこにでも、評判とか関係なく飛び込みで行く。確かにスーパーカット系は、多くを望んではいけないことを学んだが、カットに$6070を払い、ハイライトに$160170を払ったら、ちょっとはなんとかなって欲しいと思うわけよ。しかし 毎回、軽い「怒り」が波立ち、美容室を出てからの2、3日はそれが静まらないのである。

「あんたはいいわよ、天然カーリーヘアだから、どんな失敗カットでも 誤魔化しきくじゃない。」
この問題に関して同じく不満をこぼす友人にこう言われた。
What!? I am offended!
そりゃ確かに髪を洗えばセットも崩れ、せっかくスタイリングしてくれた憧れのストレートヘアも流れ、もとのクルクルヘアに戻り、ヘアデザインがなんだって?という事になる。でも、他人には理解不能でも、自分の中にはこだわりがあるわけよ。そいうものでしょ 女って。

ある時思った。まともな金額を払って美容師探しをするのは いよいよ馬鹿らしい。Grouponがあるじゃないか。同じサーチをするなら、コスト削減でいくべし。それで、気に入った美容師に出会えば、そこから普通に通えばいいじゃない。Brilliant!と思った。
Grouponのサイトで、ヘアカットとフルハイライトのDealを探す。シャンプー、コンディショナー、スタイリング込みで$69$79、安い! 美容院の名前を見るが、もちろん知らない。でもいい。購入の決め手は、ロケーション、フルセットの値段、そして掲載されているモデルの写真。ワインを生産地と値段とラベルで決めるのと同じよ。これで 2度と来るものかぁと思う美容師だったとしても、「所詮GrouponDealだしっ」と自分を慰められる。

という事でここ23年、ずーっとGrouponで美容院を転々としているが、最近気が付いたのは、腕が良くて人気の美容師はGrouponを利用していないという事。何故なら彼らはその必要性がないから。Grouponは客寄せをしなければいけない人達が利用している。でも、石の山からダイヤモンドが見つかる場合もあるわけだから、希望は捨てない。諦めない。いつか 必ず、この人凄い!ていう人が見つかるはず!

そして今日、半年ぶりに美容院に座る私。Grouponの自己紹介では、LAなどで働いた数十年の経験があり、かなりベテランで自信がある感じだった。電話で予約をした時のあのぶっきらぼうな喋り方も、その表れだと思った。
登場したのは、結構年配のオジサン、、、。いや、ベテランとなるとこの年齢くらいするでしょ。「I am doing this for 40 years. I know what I am doing.」と、私の注文を軽く聞き流しながらそう言う。「I really hope so…..
ハイライトのアルミホイルを頭中に付け、おかまを被せられて数十分。周りを観察すると、ここで働く美容師達は皆「ベテラン」ばかりという事に気付いた。そしてサービスを受けている客達も、シニア層。あれ、また やっちゃった アタシ?
オジサンのカットをする手が震えている。私はただひたすら沈黙になる。
ハイライトの色の具合も、レイヤーの入れ方も、私の最初の説明覚えてるオジサン?
来た来た来た、薄らと 怒りが煮立ち始めた。
いかん、いかん。GrouponDealを思い出せ。$69$69$69

私のダイヤモンドはどこに埋まっているのだろう。正貨を払っても「あなたじゃなきゃ駄目なの!」という美容師は、一体どこにいるのだろう。



Kiki



Posted on 夕焼け新聞 2015年11月号

おいしい話 No. 101「マヨネーズ」



生活改善、健康食生活大作戦に入る時に、キッチンの棚から パントリーから 冷蔵庫からと一斉掃除をし、添加物、保存料、MSG、その他わけのわからん化学調味料が入っている食材を排除した。いやー、気持ちいいー、すっきりー、なんて言ってたけど、実は一品だけ、どうしても捨てられない物があった。キューピーのマヨネーズ。
マヨネーズはキューピーじゃなきゃだめ! こっちで売っている軽くて薄い味のマヨネーズはマヨネーズじゃないっ!と 言い切り、ハビーにも 間違っても他のブランドを買って来ないようにと、強く言いつけていた。キューピーに勝るおいしさを持つ市販のマヨネーズはどこにもない、と信じていた。キューピー最高。日本の商品最高!
「ハニー、でもこれ MSG入ってるよ。」
ハビーが水を差す。ガーン。
やっぱし 入っていたか、、、。ていうか、キッチンから排除した食品のほとんどは、日本で製造された物だった。
日本の食品は工夫が沢山で、バラエティーが豊富で、美味しい。でもその「美味しい」という感覚に達するために、様々な化学調味料の配合で調整されていたりする。あの崇拝していたフワフワモチモチ食パンも、どうやってその食感が出来上がっているのか、もう一度しっかりリサーチをした方が身の為かもしれない。

ハビーに指摘されても、キューピーのマヨネーズは捨てる事が出来なかった。ブロッコリーを茹でた時や、卵サンドを作る時や、お好み焼きをしたい時、どうしたらいいのよ! 得にアタシとハビーが大好きなポテトサラダ。キューピーのマヨネーズがなかったら 作れないじゃないの! とにかく、念の為に、という事で このチューブは袋に入ったまま冷蔵庫にそっとしておく事にした。

さて、秋に入った最近のCSAは 取り立てのじゃがいもが多くなってきた。マッシュドポテトにしたり、ポテトのキーシュにしたり、丸ごとグリルしたり、色んな料理方で旬の味を楽しんでいる。ポテトサラダ以外。
捨てられもしなかったが、使いもしていなかったマヨネーズ。今週のCSAには リンゴにキュウリにレッドオニオンが入っている。私のポテトサラダの材料が肩を並べている。ポテトサラダ食べたい。でも マヨネーズ、、、。

一人でうだうだと煮え切らない私にハビーが一言。
「自分で作れば?」

はっ。自分で作る、、、! そうだ、マヨネーズって手作りできるんだ!
すぐさま頭に浮かんだのは 小学校の時の家庭科の時間。何班かに分かれて、毎週いろんな料理を作っていたが、マヨネーズも作ったよ そういえば! 小学生の私が作れたんだから 今の私が作れないはずはない。
早速ネットで作り方を検索する。卵の黄身、油、レモン汁、塩、コショウ、そして隠し味のマスタード。めっちゃシンプルな材料。コツは分離しないよう、油を少しづつ入れながら撹拌する事。最初、泡だて器で シャカシャカと混ぜていたけど、わりと疲れるのね、これ。ハンドミキサーにスイッチ。泡だて器一本でよく作ったよなあ、と小学生だった当時の自分に感心。パワーを最強に合わせ、ウィーンと混ぜていく。卵の黄身一個に対して、油が150CC。結構油使うのね。マヨネーズの真相を初めて見た感じ。あんまり沢山摂取するべきではない物と、実際自分で作りながら 認識した。これが手作りの利点という事かもね。何をどれだけ使っているか、自分でちゃんと把握できる所が。

ハンドミキサー様々、数分後、美しく滑らかなマヨネーズが出来上がった。しかも、美味しい!ちょっと手作りのマヨネーズに感動。全然大層な事じゃなかったわ。茹でたブロッコリーに付けてパクリ。マジ美味しい。手作りに勝るものはない。手作りのマヨネーズ最高!
早速、ポテトサラダに取り掛かる。新鮮な野菜に フレッシュなマヨネーズ。なんか気分が良いわ。

はあ、これで、正式にキューピーのマヨネーズとお別れする事ができる。今までしがみついていたこの思い。もう心残り無く、手放せる。
冷蔵庫を開け、マヨネーズの袋を取り出す。さようなら、ベイビー。
その時、その背後に身を隠す お好み焼きソースを発見。あっ!マヨネーズだけでなく、これも無意識に残しておいたか!

次のチャレンジは手作りのお好み焼きソースか。安心食生活も、一筋縄ではいきません。



Kiki



Posted on 夕焼け新聞 2015年10月号