何人の人が、自分の大好きな美容師さんを持っているだろう。センスがあって、腕が良くて、自分の「こうしたい」という説明をしっかりわかってくれ、そのイメージにより近く仕上げてくれる美容師さん。私は それって結婚相手を見つけるより難しいと思っている。
そう言う私でも、日本では10年同じ美容師さんと添い遂げた。アメリカに渡ってからも、里帰りするれば彼女の所に出向き、カットをしてもらっていた。この美容師さんとは、初回にいきなりケミストリーが反応し合い、私の夢の中のお姫様を語るような微妙な説明も、まるでその絵がはっきり見えてるかのように、「あ、こういうことね」と即座に理解してくれ、いつも思い通りのスタイルに仕上げてくれた。それは10年通い続けた中で、1度も壊される事のない強い信頼となっていた。
でもココでの美容師運はゼロ。アメリカ生活ウン十年、そういう「必ずこの人に」という美容師さんが、未だ見つかっていない。
一度とっても素敵なカットをしてくれた女性がいた。しかし すっとぼけの私は、その女性の名詞を貰うのを忘れ、同じ美容院に戻った時にはその人を指名できず、薬中のような女性をあてがわれ、怒り爆発で帰ってきた。
とは言っても、私はそんなピッキーでもない。友達に言うとびっくりされるけど、どこにでも行く。$15くらいのスーパーカット系から、パールディストリクトにあるこじゃれた店まで、どこにでも、評判とか関係なく飛び込みで行く。確かにスーパーカット系は、多くを望んではいけないことを学んだが、カットに$60-70を払い、ハイライトに$160-170を払ったら、ちょっとはなんとかなって欲しいと思うわけよ。しかし 毎回、軽い「怒り」が波立ち、美容室を出てからの2、3日はそれが静まらないのである。
「あんたはいいわよ、天然カーリーヘアだから、どんな失敗カットでも 誤魔化しきくじゃない。」
この問題に関して同じく不満をこぼす友人にこう言われた。
「What!? I am offended!」
そりゃ確かに髪を洗えばセットも崩れ、せっかくスタイリングしてくれた憧れのストレートヘアも流れ、もとのクルクルヘアに戻り、ヘアデザインがなんだって?という事になる。でも、他人には理解不能でも、自分の中にはこだわりがあるわけよ。そいうものでしょ 女って。
ある時思った。まともな金額を払って美容師探しをするのは いよいよ馬鹿らしい。Grouponがあるじゃないか。同じサーチをするなら、コスト削減でいくべし。それで、気に入った美容師に出会えば、そこから普通に通えばいいじゃない。Brilliant!と思った。
Grouponのサイトで、ヘアカットとフルハイライトのDealを探す。シャンプー、コンディショナー、スタイリング込みで$69、$79、安い! 美容院の名前を見るが、もちろん知らない。でもいい。購入の決め手は、ロケーション、フルセットの値段、そして掲載されているモデルの写真。ワインを生産地と値段とラベルで決めるのと同じよ。これで 2度と来るものかぁと思う美容師だったとしても、「所詮GrouponのDealだしっ」と自分を慰められる。
という事でここ2、3年、ずーっとGrouponで美容院を転々としているが、最近気が付いたのは、腕が良くて人気の美容師はGrouponを利用していないという事。何故なら彼らはその必要性がないから。Grouponは客寄せをしなければいけない人達が利用している。でも、石の山からダイヤモンドが見つかる場合もあるわけだから、希望は捨てない。諦めない。いつか 必ず、この人凄い!ていう人が見つかるはず!
そして今日、半年ぶりに美容院に座る私。Grouponの自己紹介では、LAなどで働いた数十年の経験があり、かなりベテランで自信がある感じだった。電話で予約をした時のあのぶっきらぼうな喋り方も、その表れだと思った。
登場したのは、結構年配のオジサン、、、。いや、ベテランとなるとこの年齢くらいするでしょ。「I am doing this
for 40 years. I know what I am
doing.」と、私の注文を軽く聞き流しながらそう言う。「I really hope so…..」
ハイライトのアルミホイルを頭中に付け、おかまを被せられて数十分。周りを観察すると、ここで働く美容師達は皆「ベテラン」ばかりという事に気付いた。そしてサービスを受けている客達も、シニア層。あれ、また やっちゃった アタシ?
オジサンのカットをする手が震えている。私はただひたすら沈黙になる。
ハイライトの色の具合も、レイヤーの入れ方も、私の最初の説明覚えてるオジサン?
来た来た来た、薄らと 怒りが煮立ち始めた。
いかん、いかん。GrouponのDealを思い出せ。$69、$69、$69。
私のダイヤモンドはどこに埋まっているのだろう。正貨を払っても「あなたじゃなきゃ駄目なの!」という美容師は、一体どこにいるのだろう。
Kiki
Posted on 夕焼け新聞 2015年11月号
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