Saturday, January 6, 2018

おいしい話 No. 127 「We Got Tipsy in Portland」


Portlandに住んでいて、Portlandを巡るツアーに行った事がある人はそんなにいないだろう。ましてや職場がダウンタウンで、普段から街中をウロウロしているなら、尚更ダウンタウンのツアーなどには行こうとは思わないだろう。
先日Portland Walking Toursでガイドをしている知り合いから、翌日のツアーにキャンセルが出たから興味があったらおいでと誘われた。「It’s free!」
知り尽くしていると思っている界隈でも、その魔法の言葉を聞いたら 考えないわけにはいかない。
この会社は 基本「Walking tour」で、ダウンタウンを歩いて回るツアーを行っている。Portlandiaの銅像から 世界で一番小さい公園を巡るツアーやら、アンダーグラウンドツアー、レストランを回るフードテイスティングのツアーなど様々。今回彼が誘ってくれたのは、「We Got Tipsy in Portland Tour」と言って、何軒かのバーをテイスティングしながら回るツアー。Thanksgiving後の飲んで食べ疲れた翌日にまた飲み歩きかい!と思ったが、魔法の言葉はパワフルすぎた。

午後1時半の出発に合わせ、この会社のオフィスがあるPioneer Courthouse Squareに集合。他の参加者はWisconsinから来た6人のグループとNew Yorkから来たギャル2人。スタートはBroadwayにある「Oregon Wines on Broadway」から。この店は私がPortlandに移って来た時からある。現オーナーが大学を卒業して間もなく、職探しをしている時に見つけたWine bar。働き始めて半年経った時、当時のオーナーが店を閉めると言い出した。まだワインの事などわからなかった彼女だが、両親の助けを借りて買い取った。それからもう17年が経ち、彼女も立派なワインエキスパートに成長したようだ。テイスティングはもちろんOregon産のPinot NoirPinot Gris

少しスナックを、と言う事で、Alder10thにあるフードカートに立ち寄った。「Altengartz」という本格的ジャーマンスタイルのBratwurstのホットドック屋さん。自家製のソーセージは期待をはるかに上回る美味しさで、ちょっとびっくり。Wisconsinから来たグループも「Approved」と笑顔で判を押していた。

次に向かったのが、Oregonで最も歴史が古く規模が大きいとされる蒸留酒の会社「Rose City Distilling」のテイスティングルーム。ここではGin, Vodka, Whiskey, Rumのサンプルを用意してくれていた。私が気に入ったのは、オレゴン産のLemongrass, Juniper, そしてBlood orangeの皮を使ったGinGinはそんなに好きではないのに「これはいける」と思った。それから、BourbonSherryの「Double Barrel」で寝かされたWhiskey。まろやかでエレガントな味わいが非常によかった。

パーホッピングは始まったばかり。ワイン、ハードリカーと来たら次はビール。Chrystal Ballroomの下にある「Ringlers Pub」でCrystal BreweryRuby, Terminator Stout, Hammerhead3種類のビールを頂く。Rubyは薄いピンク色をしており、グレープフルーツのようなシトラス系の味がするが、実はオレゴン産のMarionberryだとか。もう何度も飲んでるビールなのに、その事実を今回初めて知った。Stoutはローストしたコーヒーの味わいがあるダークビールで Hammerheadはホップの苦味が聞いたIPA。毎日2時からBreweryのツアーがあってChrystal Ballroomの建物の歴史も学べるとか。数々の有名なアーティストがここで演奏をして来たようだが、Jimi HendrixLittle Richardというバンドで演奏中、あまりに自分本位なギターのプレーをしすぎて、ショーの途中でクビになったという逸話があるらしい。

Ringlers Pub」を出たかと思いきや、また数秒歩いた先にある「Ringlers Annex Bar」に入る。狭い階段を降り、プラステックのカーテンを開けて足を踏み入れると、そこは暗い地下のバー。ストリートの丁度真下に存在し、隠れ家のような秘密な雰囲気が漂う。そこでこのツアーの為に特別に作ってくれたWhiskeyのカクテルを頂き、NYのギャル達が食べたいと訴えていたトリュフのオイルで風味を付けたフレンチフライをオーダーしてもらった。徐々にツアーの皆のおしゃべりの声が大きくなってきた。

ここからPearl Districtに向かう。そこには今盛り上がっているサイダーのお店、「Cider Bite」がある。OR産だけでなく、WAや、NY, CA産なども含め32種類ものサイダーが揃っており、フライトなどで複数の種類をテイストする事ができる。私達はお店の人が選んだ4種類のサイダーを味見した。個人的には普段は好まないが、どれも美味しく飲めた。Gluten freeの人やサイダー好きにはたまらないバーだろう。

この辺りで、本当に「We got tipsy」になって来た参加者達。真っ赤な顔で ニコニコ上機嫌である。「Tipsy」が丁度いいあんばいで、「Drunk」や「Wasted」になる前に、スケジュール通りこのテイスティングツアーはここで終了。
こうやって違う州から来た人達と一緒に、Portlandの街を違う角度から体験するのも楽しいもんだと思った。Portland Walking Tour。いつかりょっこり参加してみれば?

                                                                                           

Portland Walking Tours

503-774-4522




Posted on 夕焼け新聞 2017年12月号





おいしい話 No. 126 「Immersion Blender」


キッチン用品で 画期的な器具はいろいろあるけれど、Immersion Blenderはそのトップの位置に着くと思う。
Food Processorも素晴らしいが、問題は、一度鍋で煮たものをFood Processorで砕く作業の場合、それが少々冷めるまで待たなくてはならず、少しつづ分けて移す際に、汁やらかけらがこぼれてキッチンカウンターが汚れ、最後に流しが大きな洗い物で埋まる、という面倒な事になる。それを考えると、Food Processorを使う料理は ちょっと悩んでしまう。

ある日Food Networkの番組を見ていたら、簡単な野菜スープの作り方を紹介していた。鍋にニンニクとオリーブオイルを入れ軽く炒めた後、玉ねぎ、イエロースクワッシュ、人参を入れて更に炒める。野菜のスープストックを入れて、カレーパウダーと塩で味付けをして、野菜が柔らかくなるまで煮る。そして、この時番組のシェフが手にしたのが、Immersion Blender。それを粗熱が取れるのを待つ事もなく鍋に突っ込む。ウィーンという音と共に中の具材がどんどん砕けブレンドされていく。そして、Viola!クリーミーなスープがあっと言う間ににできあがった。Immersion Blenderは ブレンダーの部分を取り外し、ささっと洗うだけ。汚れ物は一個の鍋だけ。
「これだぁー!」

すごい発明器具を見せられた私は もう落ち着かない。
早速Googleで検索。Top 5 Best Immersion Blender of 2017の中で一番最初に挙げられていたのが、CuisinartSmart Stickというやつ。Reviewではシンプルで扱いやすくお値段もお手頃だけど、きちんとした仕事しまっせ、とあった。
お手頃の値段ていくらよ。Amazonに行ってみる。Cuisinart CSB-75BC Smart Stick 200 Watt 2 Speed Hand Blenderの商品名で$27.99$28.72$29.71$34.95と値段が違う。何この微妙な違いは?? よーく見ると、色で価格分けされている。一番高いのは「White Pearl」の$95.48。同じ商品だよね?? 意味がわからない、とブツブツ言いながら、一番安い白$27.99を注文。仕事が同じなら何色でもよろし!

届いた現物はコンパクトで収納しやすい大きさだった。付いて来た取り扱い説明書にはレシピも色々紹介されてる。スープはもちろん、スムージーにドレッシング、ディップやスプレッド系も作れるとある。が、まず最初に作りたいのは あの番組で紹介されていた野菜スープ。もうどんな味なのか知りたくてしょうがない。Food Networkのサイトに行き、レシピを再確認。すぐさま材料を買って調理にとりかかった。
しかし、新品のImmersion Blender、、、。初心者が初めてお手本なしで電動ノコギリを使うような感じ。ちょっと コワい、、、。

そこでImmersion Blender使用歴数年の友達に来てもらった。
彼女のブレンダーも私と同じブランドだと知ってホッとする。全てを任せられる、と思った。
さすがベテラン。躊躇なくブレンダーを鍋に突っ込む。ウィーンという音と共に鍋の内側をゆっくりかき回すように動かす。具材の中にブレンダーの先を入れてからスイッチをオン、出す前にオフ、としないと出し入れの際にそこら中に飛び散るからね。それから、鍋の底に吸い込まるような力が働くから、それに逆らうようにしっかり持つ事。そうでないと 気が付いたら底の方ばかりを撹拌している状態になるよ、とコツを教わった。ナルホド。ホント来てもらってよかったわぁ。
1.2分で具材が全てスムーズに分解された。すごい!テレビで見たのと同じ状態になった!
「ベビーフードみたいだよね。」
友達のその一言でハッとする。ホントだ。Immersion Blender、ホームメイドのベビーフードに最適じゃん! 簡単にちゃちゃっと栄養のある食事ができちゃう。茹でたほうれん草とか人参を これでつぶしちゃえばいいんでしょ。赤ちゃんがいるわけでもないのに このマシーンの用途の広さに興奮してきた。
あと風邪を引いた時なんかも、こうやってなんでもスープ状にしちゃえば 口通りもいいし、消化器官にも優しい。
最近、皮に栄養があるから なるだけ皮を剥かいないで食べましょうと言う声を聞く。トマトソースもトマトの湯剥きなんて面倒臭い事しなくても、こうやってImmersion Blenderを使えば何のこたあない。カボチャのスープだって皮付きでOKよ。

いったい誰がこのマシーンを発明したのか。私のように、洗い物をしたくない主婦に間違いない。とにかく鍋一つで全てが片付くというのは 画期的よ。
ガタイが良くてどっしりと座る私のFood Processor。しばらく戸棚の中で休憩してもらう事になりそうだわ。





Posted on 夕焼け新聞 2017年11月号

おいしい話 No. 125 「旬のデザート」


あっと言う間に、すっかり秋になっちゃったポートランド。味覚の季節になりました。味覚の秋と言っても、アメリカにいると旬のサンマやタケノコが身近な所で手に入るわけでもなく、栗拾いに行って栗ご飯を炊くわけでもなく。ファーマーズマーケットで一瞬現れる松茸を買ってきて、炊き込みご飯とお吸い物を作るだけ。しかも 一回きり。なんかバラエティーがない。芋も、スクワッシュも、カボチャも、秋だからと言って特別エキサイトするシロモノでもなく。
つまんないとぼやいている私に、友達が手作りのパイをご馳走してくれた。
ご近所さんの庭になる梨を沢山貰ったから、梨のパイを焼いてみた、と。
ああ、梨!
そう言えば、梨も秋の果物ではないか。そのパイは、大振りに切った梨とシナモンの風味が上手く絡み合い、素晴らしい秋のハーモニーを奏でていた。
美味しい! 
旬の果物を使ったパイとは、甘い物をそもそも食べない私にとって論外の話だった。
これほどまでに秋を感じる食べ物があるだろうか!といきなり感動。

しかし、パイ作りからはほど遠い所にいると思っていた彼女が、こんなに美味しいパイを作ったなんて信じられない。私にとって家でパンやデザートを作るという事は立ち入り禁止エリアに無理矢理入ろうとする行為と同じだと思っていた。高いフェンスを一生懸命時間と労力をかけてよじ登った後、電動線で大火傷を負って無様な姿で転落する。だからそこは私のテリトリーではないとずっと思っていた。
特にパイ生地。材料はシンプルな癖に、そう簡単には成功できない。それが私のパイ生地に対する印象。パイ生地から自分で作らなけらばならないと思うと、もうそこで挑戦の意欲が無くなる。
「パイ生地はねー、Grand Centralで買ってくるのよー。それでね、中身だけ作って入れて焼くだけ―。だから、実はものすごく簡単なのよー。」
どうしても彼女がせっせとパイ生地を練っている姿を想像できなかったが、納得。難関門のパイ生地作りをスキップしていたわけね。プロが作ったパイ生地を買う事ができるなら、そんな手っ取り早くて楽な事はない。一気にやる気が出て来た。

早速近所のGrand Centralに出向き、例のパイ生地を買ってきた。すでに丸いアルミのパイ皿に生地が敷かれ、淵もキレイに山が作られていた。前出の友達から おすそ分けで貰ってきた梨とリンゴを袋から取り出す。自然に成った果物のいびつな形が、妙にチャーミングで良い。匂いを嗅ぎながら「秋だわぁー」とひたる。教えてもらったレシピで準備を進める。さあまた、私の新たな挑戦が始まるぞ。

せっかく貰ってきたのだから、梨もリンゴも両方入れちゃえ、と全部の皮を剥き、スライスする。白い砂糖の代わりにココナッツシュガー、普通の小麦粉の代わりにスペルト小麦を使い、岩塩、シナモン、レモンゼストと混ぜてミックスを作る。レシピにはこのミックスをパイに並べた梨の上にかける、と書いてあったが、スライスした梨とリンゴのボールに一先ず入れて混ぜる。それをパイ生地に並べ、バターのかけらをを点々と並べ、レモン汁をかけてオーブンに入れて約50分ほど焼く。

暫くすると、シナモンの甘い香りが部屋中に立ち込め始める。窓の外にはグレイな秋の風景、温かい部屋の中は ベイク中のパイの香り。これだけで、なんて、Cozyで幸せな気持ちになれることでしょう。夏が終わってしまった事は悲しいけれど、秋は秋でいいものよね、という気持ちになれる。

オーブンから出したパイは溶けたミックスと果汁が交わり、クツクツと煮立っている。うまそー。これを23時間寝かせて冷ます。私の人生初パイができた!(パイ生地作りはまたそのうちという事で、、、。)
昔の人は果物を焼こうなんてよく思い付いたものね。でも秋が旬の果物がわんさか成るのをどうするかで浮かんだアイデアなんだろう。そしてシナモンとの抜群な相性を生み出し、今では定番のデザートになっている。
包丁をいれて切り出した梨&リンゴのパイは、店で売っているかのような見栄え。そして サクッとした歯ごたえがまだ残る果物と完璧なクラストと甘いソースが上手くからまって、初めてとは思えない出来上がり。なんて簡単なの!

今度はこれにレーズンとクルミを混ぜて焼いたらどうだろう。それからちょびっとラム酒なんか垂らしてみて。そう思うとまたGrand Centralに走りたくなる。いや、癖になるわコレ。デザート部門に新しいレパートリーが出来た。そんな喜びを噛みしめる秋の夜長である。






Posted on 夕焼け新聞 2017年10月号