先日 ハビーのママが誕生日を迎えた。ポートランドより車で3時間ほど離れた小さな町に住むママが、今年はポートランドの息子の家で、知り合いカップルを招待し、パーティーを開きたいと言ってきた。
良妻で売っている私は心よく承知し、3週間前からそのパーティーの準備に入った。
まずはパーティー当日に仕事が入らないようにと 前もってスケジュールの調整から始める。できればパーティー前日も午後から仕事が入らないようにしたい。以前ママが興味を示していた本をインターネットで探し、当日までに間に合うように注文。プレゼントが本だけ、というのもナンだなー、と補足の品も考える。何かこれだ!と目に留まるものがないかとデパートやモールを歩き回り、最終的に Macy’sのジュエリー売り場で 様々なデザインを手に 1時間迷いまくって イヤリングとネックレスのセットを買う。ハビーの尻をたたいて しばらくしていなかった家の大掃除にとりかかり、空っぽの冷蔵庫を埋めるための買い物にでかけ、ゲストルームのベッドを作り、切れた電球を取替え、花瓶に花を生け、プレゼントの包装をし、と ハビーの両親と弟が到着する直前まで バタバタ。
まるで 正月を迎えるような万全なる準備の施しようだったが、ただ一つ、パーティー前日になっても心が決まらない準備項目があった。それは バースディーケーキをどうするか。お決まりのバタークリームのケーキをSafewayで買ってくるべきか、Baskin-Robbinsでアイスクリームケーキを選ぶべきか。どうもピンとこない。ここに住む多くの日本人の方もそうだと思うが、私は未だに あのドギツイ色のバタークリームケーキを心から楽しめない。私はやっぱり 日本風の生クリームと新鮮なフルーツの乗っかったケーキがいい。ここでそういうケーキが購入できるのは 中国系のベーカリーだろうか。そういえばFubonのモール内に一軒あったなあ。
パーティーに集まる人は皆バタークリームケーキで育ったアメリカ人で、私だけが生クリームに拘る日本人だということも忘れ、自分の好みに選択肢が偏っていった。
Fubonのベーカリーに買いに行くのもいいけど、それもちょっと芸がないなあ。ここは ひとつ 更に良妻ぶりをアピールすべく、手作りといくか?
手作り、と鼻息荒く言っているが、私はケーキを作るための道具を、でっかいオーブンと電動式泡立て器以外、何一つ持っていない。しかも あの繊細なスポンジを本番でパーフェクトに焼き上げることができるとは、いくら楽天家の私でも 思っていない。
やはり 2年前のハビーのバースディーパーティーに使った時と同じトリックを使うしかない。当時 持ち合わせの型で焼いたゆがんだ手作りケーキが、集まったハビーの友人達から大好評だったから 味の保証は間違いない。今回はグレードアップということで、ちゃんとした円形の型を購入して見栄えも完璧にすれば、ママどころかゲストも かなり驚かせることができるだろう。
Betty Crocker Supermoistのような市販のケーキミックスは、簡単で完璧なスポンジを焼くためには なくてはならない存在。Heavy whipping creamをパワー全開で泡立てて 理想の生クリームの固さに。 二層にするため、冷ましたスポンジに横からナイフを入れる。勘だけでナイフを動かすため 明らかに二層が均等に、そしてテーブルと並行に分けられていかないが そこは最終的には隠れるので深く落ち込まない。生クリームとスライスしたイチゴ、キーウイ、ピーチを敷き詰めて、トップのスポンジの層を上に乗せる。残りの生クリームでケーキ全体を覆い、Peddi Whipのような缶のホイップクリームで表面をデコレーション。センス良く 彩りよく果物を配置した後は、Betty Crockerのデコレーション用ジェルで仕上げのメッセージ書き。“HAPPY BIRTHDAY MOM”
これがなんと素晴らしく豪華な見栄えなのである。私がママのためにわざわざ用意した“手作り”の作品だと知れば 感嘆の声はただただ高まるばかり。予想通り、ママや招かれたゲストの間で Wow!やOh My God!の歓声が飛び交った。そしてまた 味も悪くないもんだから 食べてる間も お褒めの言葉が止むことがない。お代わりの一切れに手を伸ばす人も出てくる。手抜きと言えども侮れない手作りケーキのパワー。
義理の母の誕生日会とデキた嫁の日は成功を持って終わった。ママからもひたすら感謝され、私の気分も上々。愛情がこもっていれば 何をとっても、それを取り囲む人々をハッピーにするもんだ。
というわけで、その日は 会場となった私とハビーの小さな家から、甘い香りと共に、たくさんの愛が溢れ出ていた。めでたし!
Kiki
Posted on 夕焼け新聞 2007年10月
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