うちの通りを挟んだ向かいには、Construction workerのお兄ちゃんが住んでいる。仕事のかたわら、よく自分の家の修理やRemodelなど、上半身裸のジーンズ一本で たくましく働いているのが、うちの窓から時々窺える。
2ヶ月ほど前、彼の家の前を通りかかった時、
今 Mississippi DistrictにJapanese Restaurantの建設を担っているけど、その店の名前が「ウチュウ」というんだ、どういう意味だ、と聞かれた。
英語で「ウチュウ」という発音を聞いても ナンだ?と全くピンとこなかったけど、ポカンとしている私の横で、ハビーが「SpaceとかUniverseとか、そういう意味だよ」と口を出してきた。
ああ、「Japanese Restaurant」「宇宙」ね! Of course!
その意味を聞いたお兄ちゃんは、私に 君のダンナの言ってることは本当か、と確認をする目を向けた。
店主の思う「ウチュウ」が「宇宙」なら そうだ、と頷くと、「ケッ」と鼻であしらうように 空かし笑いをした。もっとすごい意味があるんだと 期待していたのか。「宇宙」に勝る 偉大な意味を持った言葉が他にあるだろうか?? 私は、出た、また アメリカ人の 突拍子もない名付け技、と密かに思うばかりだったが。
そして2週間前、ハビーが Jacobが持ってきた、と一枚のFryerを冷蔵庫に貼り付けていた。「Uchu Sushi & Fried Chicken」。どうやら建設は完了し、Grand Openingを迎えたようだ。
海の中を泳ぐ鮫や マグロや 小魚たち。蟹やら、フライドチキンやら、ばらばらになった魚の身や頭までも、あちらこちらに浮いている。宇宙の無重力状態のイメージを掛け合わせたようなデザインのFryerは、ちょっと変なコミカルさがあった。
このFryerと店の名前から、きっと店事態もヘンテコリンな 未来空間を演出した内装になっているに違いない、と想像。チカチカのネオンに 天井からぶら下がるUFOのオブジェに、銀色の宇宙服を来たウエイター達。第二のPearl District、なんて言われ始めた 今ヒップなMississippi Districtに この宇宙展開。さてはて、どう生き抜くのだろう。
さっそく、このFryerに付いていた割引券を使おうと、Mississippi Studioでのコンサートが引けた夜10時に、Uchuに行ってみた。
内装は Up-and-coming-townに相応した、モダンで洗練されたデザインで、落ち着いた光を放す照明以外は 何も天井からぶら下がっていない。がさごそとかさばる宇宙服スタイルで シェイカーを振っているバーテンダーや、テーブルを回るウエイター達もいなかった。店内を見渡し、私の描いていた絵が間違っていた事にホッとすると共に、Jacobの腕とせンスの良さに関心した。
アメリカ人は飲んだ後は 脂っこいモノが食べたくなるらしい。その人気の代表格はフライドチキン。私は飲んだ後に脂っこいものなど食べたくない。飲んだくれて 夜中の2時に行き着けの屋台で、ラーメンと餃子を食べていたのは 昔の話。今は あっさりとした 細巻きがいい。Rainbow rollとか Dragon rollなど 具沢山の太った巻き寿司でなく、マグロやきゅうり、おしんこだけのほっそりした巻きが、食べてはいけない時間帯に「これなら大丈夫」と思わせてくれる。
脂っこいフライドチキンと ヘルシーな細巻きが食べられるUchuは、私とハビーが もめることなく、ハッピーに食事ができる場所になりそうだ。一番嬉しいのは、この店が 夜中の2時までオープンし、寿司も閉店までサーブするという営業体制であること。ポートランドには画期的で、なかなか誰もリーチしない領域だったはず。そりゃあ お気に入りのJapanese Restaurantは あちこちにあるけれど、夜中まで 寿司を出しているところは見た事がない。もちろん Uchuの寿司の品目は少なく、限られているけれど、夜中に食べられて、しかもその時には そうとう酔っ払っている状態、と想定すると、安くて 軽く小腹を満たしてくれるモノで充分なのだ。
実際、月にどれだけ 夜中にごそごそと 食を求めて徘徊するかはわからないけれど、そこにUchuというオプションがあることは、私の大きな心の支えとなる。私とハビーの食に対する欲求は、まさにウチュウ的規模と言ってもいいだろう。
Kiki
Uchu Sushi
3940 North Mississippi Avenue
Portland, OR 97227
(503) 281-8248
Posted on 夕焼け新聞 2011年7月号
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