近代文明の進化はすごい、という話を先月もしたけど、今度は日本の映画やドラマ、バラエティー番組が、インターネット上で見ることができる昨今に、感動している。
アメリカに来た当初は、誰かが家族の人に ビデオカセットテープに貯め撮りしてもらった日本の番組が、留学生の間で回覧されていた。自分の手元に来た時は 2,3年の古さだった、てことは当たり前だったけど、感謝の気持ちで、日本に思いを馳せながら、じっくり観させてもらった。
その後は 時代がDVDに変わり、そのコンパクトさで、一回に10枚から20枚回ってくるなんてことになった。とは言っても、やはり日本の家族や友人に録画してもらい、送ってもらったモノなので、番組も2、3ヶ月前から1,2年の古さ、という感じだった。
でも、今やインターネットで何でも観れる時代。誰かに録画してもらう必要もなく、自分の番が回ってくるのを数週間待つ必要もなく、日本で放送されたその翌日から1週間以内で、まだ温かい番組を観ることができるのだ。
お笑い好きの私はもっぱらの バラエティー派。暇な時、ぐーたらしたい時に、いつものサイトに行き、お気に入りの漫才師の番組を探してみる。若いゲストはほとんど 誰だかわからないけれど、80年代90年代に活躍した人がゲストで出るとなると、「お、ちょっと観てみようか」となる。
ラップトップPCをコーヒーテーブルに置き、カウチに横になり、ポテトチップスをボリボリかじりながら、「あー、年取ったなあ、この元アイドル!」とかやっているのである。
無表情な家政婦の話や、若い女の子が、警視庁捜査一課で班長として 自分より年上の部下を従えて事件を捜査していく話などは、現実身がなくてまったく 感情移入しないし、共感もしない。浜ちゃんとまっちゃんのボケ&ツッコミの方が、ずっと私に「笑い」の時間を与えてくれる。
そんな私が、この数週間、あるドラマにハマッていた。
「最後から二番目の恋」
小泉今日子が主演で、中井貴一、飯島直子、森口博子など、馴染みがあり、安心する顔ぶれが揃っている。中年男女の恋愛物語で、役者の実年齢がそれぞれの役の年齢、ていう設定が興味を引いた。ということは、昭和のアイドル時代に一世風靡したキョンキョンが45歳で、青年役を爽やかに演じていた中井貴一は50歳なんだ! もうこの時点で、しっかり共感できる。
ナニがハマッたかって、このキョンキョンが実にいい。
堂々と45歳の女を演じているのだ。「40過ぎで独身で、このまま一生独りなのかしら」という、ある時期に入ったシングルなら 誰でもぶつかるこの恐怖感と孤独感を、とてもリアルに、でも、視聴者をズドーンと落ち込ませない、明るく軽い演出が施されている。独身女性には 本当に本気で、暗くなり勝ちなテーマだけど、「45歳」とか「おばさん」とか「昭和の匂いがする」とかいうセリフを、ためらいなく吐き出し、地をもさらけ出しているかのようなキョンキョンを観ていると、逆に気持ちがいい。ドラマには珍しく「笑い」が発生するのだ。共感している私にだけ 発生しているのかもしれないが。
「恋愛ドラマ」だけど、ドロドロした人間の負の部分が全く無く、非常に明るい。「別れる」「くっつく」「あの人が騙した」「浮気した」が見所ではなく、「色々だけど、今を大事に生きていくっきゃないよね」と、軽くポジティブに最後まで構成されている。
ということで、ハマッてしまった。
昔のトレンディードラマ流行の時代以来。
毎週毎週、放送日が待ちどおしくて たまらない状態になってしまったのよ。
ほぼ同時進行で 同じ週の番組がみられるインターネット動画サイト。日本の木曜日の夜に放送されて、次の日、つまりアメリカの木曜日の夕方には、最新のエピソードがダウンロードできる。
毎週、金曜日に 同じくハマッている友達からテキストが来る。
「ねえ、昨日観たー?」「今回もまたよかったねー」「はああ、来週がもう待ち遠しいよお。」
VHSやDVDを借りていた頃から考えると、信じられない会話だ。
先週、ついに最終回を迎えてしまった。
友達と一緒に溜息をつく。「これから何を生きがいに 生活していけばいいの。」
一緒に青春を駆け抜けた昭和のアイドルが、一緒に年齢を重ねていく姿に安心したのか。そのカラカラとした、前向きな姿に勇気付けられたのか。このドラマを追っかけている数週間は楽しかったなあ。
はっ、ちょっと待って。本当にテレビを見ているように追っかけてたから、テレビを見ている気持ちにすっかりなってしまったけど、このサイトに戻れば、いつでも、何度でも、「再放送」できるんじゃない!
そういえば、こんなに大好きだと豪語しておきながら、最終回に なぜ「最後から二番目の恋」なのか、をキャッチできてきなかったわ。インターネット、近代文明様サマです!
Kiki
「最後から二番目の恋」
Posted on 夕焼け新聞 2012年4月号
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