うちの地元の方言で「しぶちん」という言葉がある。財布の紐が固く、そう簡単にその紐をとかない倹約家を呼ぶ。お金に糸目をつけず、気前がいい人、の正反対。率直に言えばケチンボ。
正真正銘しぶちんの私は、一年以上も、スマートフォンに換えるべきか、悩み続けてきた。トレンドに敏感で新しいモノ好きな人々が、新商品や新モデルが発表されると、発売と同時に、躊躇なく購入するのを横目で見て、よくまあ そんなにすぐ飛びつけるもんだ、と思っていた。
確かに、わざわざコンピューターを立ち上げなくても、スマートフォンからSkypeを通して、日本の家族に簡単に電話がかけられる、というのは魅力的で、そこが 私の悩みどころなんだけど。でも、毎月の電話代が データ料金も入れて$70-80というのは、いくらなんでも高すぎないか。
そりゃ、今の私の携帯電話は、安っぽくておもちゃみたいだけど、ちゃんと電話もテキストメッセージもできる。プリペイドだから、倹約して使えば一ヶ月に$20もかからないんだから。と、世の風潮に流されないポーズをとったりもしていた。
しかし、先日、知り合いがユーズドのアイフォンをタダでくれる、自分の携帯電話ならプロバイダーと契約をしなくてもいい、そして会社の社員割引が利く、という条件が揃い、ついにスマートフォンを使用することになった。
人間が開発する技術って、すごいね。二昔前の、でっかい箱のような「携帯電話」を肩に担いでいた時代からは、手のひらサイズで、タッチスクリーンの携帯電話が登場するとは思ってもみなかった。私の想像の域を遥かに超えたテクノロジーの進化に、改めて感嘆している。特にそう強く思ったのが、Viberの存在を知り、そのアプリをダウンロードしてから。
Skypeが登場してから、国際電話はずっとSkypeを利用していた。随分安い料金で電話がかけられる。もちろん、かける相手がSkypeのアカウントを持っていれば、タダで話ができるけれども、問題は、お互いが「オンライン」状態でいなかればならない。そのタイミングを計るのが容易でない。ましてや、家にいてPCを開けなければならないとなると、尚更だ。
そこにくるとViberは、相手もViberをダウンロードしていれば、「オンライン」であるとか「オフライン」であるとか、関係ない。タダで、いつでも、どこでも、普通の携帯電話と同じように、電話をかけたり、テキストメッセージを送ることができる。
先日、大阪の友人に Viberからテストコールをかけてみた。
私「もしもし? 今どこ?」
友人「今ねえ、営業中。車で客先回ってるとこよ。あ、せっかくやから遠方の客から先に回るわ。その間アタシの運転中、しゃべれるやろ。」
それから20分、Viber上でおしゃべり。普通の電話とまったく変わりないクオリティー。お互い、「すごいね、これ」を連発。「何がどうワークしてるのか さっぱりわからんけど、とにかくすごい。」と興奮した。
大阪の友達が、ポートランド市内で 営業周りをしているような距離の短さを感じ、感動。またこれが全部タダ、ときているから よけいにすごい。気兼ねなく、電話をかける頻度も高められる。プリペイドコーリングカードの時代は 終わった。
さっそく地元のしぶちんどもにEmailを送った。「あんたたち、スマートフォン? だったら即、Viberをダウンロードして頂戴! ナニ、まだスマートフォンじゃない? 早く買いなさい!」
20年前には想像もつかなかった技術の進化。どんどん、日本とアメリカの距離感や、時差の感覚が無くなっていく。家族や友人が同じ町にいるような感覚がして、胸がキュウンとする。今は東京にいる ESL時代の友達が、「私の留学中にあったら どんなによかったかぁ。」と、Viberでテキストメッセージを送ってきた。横浜に住む元ルームメートも、「なんか、海を越えて離れてるって思えなーい!」と電話の向こうではしゃぐ。
時には、貧乏性の気を えいっ、やっ、と 振り払い、清水の舞台から飛び降りた気持ちになって、財布の紐も緩めてみるもんだね。(スマートフォンの月々の電話代のことを言っています。)「損」をした気持ちでなく、それに替わる、お金に変えられない、沢山の「得点」が得られることが あるもんだ、と悟った私です。
Kiki
Smart Phone application:
Viber
Posted on 夕焼け新聞 2012年3月号
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