「バーベキュー」となると なぜ日常台所に立つことのない夫達が、裏庭に現れ、火をおこし始めるのだろう。普通のSunday
BBQでも、Holiday BBQでも、キャンプでのBBQでも、普段消えている男たちが わさわさと動き始める。これはアメリカンカルチャーなのか。どこから 発生して、こんなに どこの家庭でも見られる現象となったのか。なぜ、いつも食事の準備をする妻達が 外でも腕を振るわないのだろうか。
たまに天気のいい休日は、妻達にゆっくりしてもらいたい、という労いの気持ちなのか。ゴウゴウと燃え立てる火を操るのは、女には危険過ぎるという保護の気持ちか、BBQ台の前に立ち、腕の袖を捲くり上げ、熱と奮闘しながら 肉の塊を焼く姿が、Masculineに見えるからなのか。
BBQに拘る夫達は、普段料理はしなくとも、自分があみ出した自前のBBQソースや、肉を漬け込むマリネソースがあったりする。このソースの旨味を生かした焼き方をするのは、自分しかいない。
アメリカンカルチャーとおぼしきや、似たような光景が、日本の鍋の宴でも 見られるような。鍋奉行と呼ばれる鍋通が、拘りのダシから具から 鍋を作り上げていく。横入れは禁物。「出来た」というゴーサインが出るまで、神妙に待つしかない。この鍋奉行、かなり高い確率で 男が多い。
ハビーの実家も、週末のBBQは パパが動く。裏庭に設置された 銀色に輝くガス仕様のBBQ台のカバーが取られると、そこから 彼の小さな世界が 開かれる。ハンバーガーの時もあるし、ステーキの時もある。チキンのモモ肉や、サーモンの時もある。脂が落ちる度に ガガーっと激しく火が立ち上がる。煙がもくもくと昇り、視界を一瞬消す。蓋を下ろして蒸し焼きにする。ころあいよく蓋を開けると、熱気の盛りあがりと共に 香ばしい匂いが庭中に広がる。豪快さを感じるけれど、実は とっても シンプルに思われる、BBQ料理って。 男が率先する根本の理由はナンなのだろう。
火の調節とか、焼き時間とか、妻にはわからぬ微妙な加減度があるのか?
先日ハビーの家族がうちに遊びに来た。
丁度 留守番を頼まれた知人宅にBBQセットがあるから、今日のDinnerは その家の庭でBBQをしよう、ということになった。
簡単に New Seasonsで すでにマリネされているShish Kabobsを数本と、チキンの胸肉を購入。下準備はグリル用の野菜を切るだけ。火さえ点けば、あとは 焼くだけでいい。
知人宅に着いて、台所で買い物袋を広げている間に、パパの姿が消えた、と思ったら、バタン!と裏庭に続く網戸の閉まる音がした。ヒョイっとキッチンの窓に目をやると、すでにBBQセットの前に立ち、チェックをしているパパがいた。蓋を開けたり締めたり、ガスのボンベの場所を確認したり、カチャカチャと点火ダイアルを回したり。そこに今度はハビーが 参加する。BBQセットの裏側に回ったり、下から覗いたり。どこの家庭のBBQセットも似たり寄ったりだと思うが、人んちのとなると勝手が違うのか。火が点かないなんていわないでよ。
「We got it」 数分後、点火成功に満足気な男たちがキッチンに戻ってきた。渡したビールの味わいもそこそこに、パパが手際良く 買ってきた肉たちをトレイに載せ、また外に出て行った。切った野菜のトレイを外に持って行くと、もうジューという 肉の脂が飛び散る音と共に、グリルが始まっていた。
ふと 思った。
なぜ、パパが焼いているのか。
なぜ、彼がBBQ担当になっているのか。お願いしたわけでも、役割分担したわけでも、オファーされたわけでもないのに。その率先した、責任感のような、あたりまえのような、暗黙の了解のような彼の行動は いったい何なのだろう。
今まで何度も家族でBBQをして、そんな疑問を持ったことはなかったのに、なぜ あえて今日、そう不思議に感じてしまったのか。他人の家の 他人のBBQセットでも 自然に動く、同じ反応のパパを見たからだろうか。
「うちのダンナのBBQポークリブは最高なのよ。」 普段夫に気を留める事のない女友達が、BBQパーティになると 夫の料理の腕ぶりを褒める。妻からめったに褒められることのない夫が、唯一褒められるところ、しかも妻の友人が臨席する中で。BBQセットの前で、がぜんはりきる友人の夫を思い出した。
バーベキューと 男の出番。アメリカンカルチャーか、男らしさの投影の場か。
この絵、実に不可解だ。
Kiki
Posted on 夕焼け新聞 2012年 10月号
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