“Hot Spring”、と聞くと“温泉”、と解釈したくなる。
“温泉”と聞くと、日本の旅館のお風呂場を思い浮かべる。
“露天風呂”と聞くと、日本の旅館の露天風呂を思い浮かべる。
「BagbyのHot Springに行こう。山の中だからちょっとハイキングして登らなきゃいけないけどね。露天風呂もあるみたいだよ。」
というハビーの誘いを聞いた時、オレゴンの山奥にある“温泉場”をどう想像していいか わからなかった。
ちょっと古民家みたいな旅館風建物のしゃれた温泉場ではないだろうし、着替えをする小屋などなく、石で作られた天然風呂が殺風景な林の中にあるのかしら。そこに見知らぬ者同士が水着で入る。まさか混浴のヌード、なんてことはないよね。
居酒屋の次に日本を恋しく思うのが 温泉。 ザブン!と入り、ザバ~とお湯が 湯船からまけ出る音を聞きながら、ハア~ いい湯だね、アハハンと、肩までゆっくり浸かる。至福の時だ。
まあ 天然のお湯であることは間違いないようだから、それに浸かるのも悪くないだろう。日本の温泉みたいにお肌がすべすべになるかもしれないし。
Bagby
Hot Springは Estacadaという市にあり、Clackamas
Riverに沿って延びるHwy224を車で上っていく。ある地点で曲がり、今度はCollawash Riverを沿って走る。目的地は“Nohorn
Campground”の近くにある“Bagby Trailhead”という登山口。駐車場の先のハイキングトレールの入り口にテントを張ったおじさんがいて、Bagby温泉入浴料を回収している。一人5ドル。手首に巻かれる黄色いテープが支払い証明書。
ここから入浴場まで約30-45分ほどのトレールが始まる。きちんと舗装されているので過酷な登山というのとは違う。この舗装されている感じ、案外温泉場も綺麗な設備になっているのかも。
という期待感は、温泉場に着いた時に、風にさらわれた帽子のように 飛んでいった。美しいCollawash
Riverをまたぐ橋を渡ると、その川岸には立つのはボロボロの掘建て小屋だった。
ちょっと引き気味の私。
ハビーの言っていた、「知らない人でも一緒に入れるような風呂が外にあってぇ、」というのは、木の板でできた丸桶で、それが3台、掘建て小屋の裏側にある、Lower
Deckと呼ばれる場所にあった。一つの桶にはすでに先着組みが寛いでいた。あとの二つの桶は 空っぽ。お湯が入っていない。 温泉で桶にお湯が入っていないって、どういうこと?入れないじゃないの!
他の風呂場を探しにUpper Deckへと、掘建て小屋の階段を上がると、賑やかな声が 閉じられた戸の向こうから聞こえてくる。どうやら ここがハビーの言っていた「戸をちゃんと閉められる個室」らしい。5つの個室は満室。下のあの風呂桶に他人と入るのは ちょっと、、、と行き場のないハビーと私。
すると、ひとつの個室から入浴の終わったカップルが出てきた。すぐさまその部屋を陣取る。そこにはカヌーように内側を削った半分の丸太が横たわっていた。しかもまた お湯が入っていない、、、。
つまりは 一回使用したお湯は、終わった際に流して、次の利用者が改めてお湯を張る、ということらしい。まあこの施設の状態だったら、衛生上もっともな話しだ。その辺に転がっている木の栓を、風呂の底に開けられた排水口に詰める。木で造られた湯道は、何本かの枝切れで栓詰めしてある。それを抜くと、ドドーッとお湯が丸太風呂に落ち始めた。
日本の温泉ではないので 加減のいいお湯が注がれるわけではない。
天然湯、この熱湯を自分で丁度いい温度にしなければならいのだ。無造作に置いてあるプラスティックのバケツには 意味があったのだ。外にある水道の水をバケツで風呂場まで運び、桶に足していくのだ。これをタクマシイうちのハビーが5回往復した。こんな楽でない温泉旅行は初めて。
やっとほどよい温度と溜め具合になり、丸太風呂に入る。いくら大木とはいえ、肩まで浸かれる深さではない。ウチの風呂のタブと同じく、ごろ~んと横倒しならないと肩にお湯が触れない。入浴態勢が家と同じなんて、「温泉」感が出ないではないか。オレゴンの山奥のHot
Spring、で充分だ。
でもね、天然のお湯は天然のお湯。それを楽しめるのは贅沢なこと。ハビーのバックパックから 用意周到に持ってきたビールを取り出し、喉を潤す。お湯に浸かりながら 冷たいビール、最高。これよ、ここでは日本の温泉ではできない、こんな事ができるのよ!
(注意:Bagby Hot Springsでは アルコール禁止となっています。)
Kiki
Bagby
Hot Springs
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