Saturday, September 28, 2013

おいしい話 No. 74 「Blooming Lotus」


Portland Irvington Districtに またもやVeganのレストランができた。

Vegetarianなどとクレームしようものなら、「好き嫌い言わずに何でも食べなさい!」と張り倒されかねない昭和の家庭の環境の中で、そもそもVegetarianとかいう言葉は存在しなかった。ましてはVeganなんて、「エイリアン」と さして変わらぬ未知の存在だ。

といっても私の家庭は普段から野菜中心の、しかも近所の農家から取り寄せた無農薬野菜を普通に食べていた。それはチョイスではなく、それだけがAvailableだったから。ハンバーグだの、鳥の足だの、焼肉だの、肉が特別だった時代に育った私。必然的に大の肉好き。逆に、肉が食卓に並ばないことにいつも文句を言っていたもんだ。

初めてVegetarianの存在に出会ったのは、アメリカに来てから。「なんでまた、、、」と思った。アメリカ人のVegetarianの大半は、社会問題の理由から その道を選んでいるように見えた。鶏や牛や豚の飼育の仕方が 正しくない、と熱く語り、一個人として それに反する姿勢を これらの肉食を取らないことで表明する、という。こんな人達は 日本にいないだろうな、と思った。ダイエットのため、という人は沢山いても。

間違ってVegetarianとかVeganの店に入り、「(本物の)肉がない、、」と知った時、怒りのような感情が湧いてきていた私だけど、トシのせいか、これらに寛容になり、受け入れられるようになった今日この頃。Blooming Lotusの混雑ぶりを外から伺うと、やっぱ一回は試してみないと、という気になった。

Blooming Lotusは、世界の味をフュージョンで取り入れた オーガニックで新鮮なVegan料理、と謳っている。こういう料理が今のトレンドで、おしゃれでモダンな雰囲気のレストランで展開されているから、時代も変わったものだ。

メニューには「Cooked and live food options」がある。たとえば「Live Pizza」とか、「Live Falafel Wrap」とか「 Live Kale and Seaweed Salad」。Liveと言われると魚が笊の中で飛び跳ねている絵が浮かんでくるけど、決してこれらの料理が字のごとく「生きている」わけではなく、Veganの世界では、火が通されていない、つまり「生」、という意味のようだ。ま、初回の困惑は避けれらないと思うけど。

Veganもそうとう厄介な族と思うけど、メニューに「Gluten Free」や「Soy Free」のオプションを見るとクラクラしてくる。一体最終的にお腹に辿り着くものはなんなの、てね。

注文したのは「Crispy Artichoke Fritters」、「Live Sampler」、そして本日のスペシャルの中から「Lasagna」。これらの料理は今のトレンドのようだけど、それだけで終わらない、すごく説得力のある確かな味だった。Veganのシェフって、普通のレストランのシェフより 非常に高いレベルのスキルが必要とされるのでは、と思う。限られたアイテムを使って、より創造的に、満足を与える料理を作らなければなないんだもの。Blooming Lotusには高度な技術とセンスを持ったシェフがいるものと思われる。本当に「新鮮」を食べている感じがした。

昔はVegetarianVeganの族に矛盾を覚えていた。肉は食わないといいながら、大豆などの豆で作った、肉に見立てた代物を好んで食う。ベーコンだとか、ハンバーガーパテとか、ハムとか。実際の肉は食わないが 肉に対する愛着は捨てられない。実際の肉にあるその味は楽しみたい。

「清くないっ!」「矛盾してるっ!」「フェイクだーっ」と机を叩いていた。

さて VeganのレストランにFull Barがあるのはどうだろう。酒は関係ない?食は限りなく厳選するけど、ウイスキーや ヴォッカはアリ? Healthyを謳いながら、ハードリカーも提供するって。また矛盾している、という思いがムクっ、と立ち上がろうとした。でも 待てよ、アタシみたいな客には なくてはならないアイテムでしょ。客を厳しくVeganに限定し、お茶や青汁のようなドリンクだけを提供していては商売にならない。お酒の売り上げがマネーになるのが実情。つまりアタシやハビーみたいな客を どんどん受け入れるよう、門戸も大きく開いておかなければならないわけ。

というわけで、ちょうどその日に仕入れたという 少しブドウの皮を残して破砕、醗酵したピンク色のPinot Grisを頂いた。これがまた「Live Sampler」のtahini cilantro pate, almond cheese, kale and seaweed salad, and live falafel, などの料理と抜群に合って美味しかった。

お腹はいっぱいだけど、いつもの「食い過ぎたー」感はなく、なんだか健康的ーぃという気持ちになる。お酒も手伝って もっと心が軽くなる。

あんなに肉好きだった私がVegetarianにならないまでも 確実にそのチョイスが変わってきている。もちろん今だ 焼肉とHanger steakには目がないが、社会問題でも、環境問題でもなく、昔と比べて、体自身が自然に肉を求めなくなった。そんなおトシゴロを感じる方たち、「Veganの店」という偏見なく、新鮮な料理を食べられるところ、という意味で Blooming Lotusを訪れてみて。

 

Kiki

 

Blooming Lotus

1713 NE 15th Ave
Portland, OR 97212

503.228.0048

http://blpdx.com/


Posted on 夕焼け新聞 2013年6月号

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