Monday, April 27, 2015

おいしい話 No. 95「大事なエレメント」

ヴァレンタインデーに お友達から写真付きメッセージが送られて来た。彼氏に貰ったというスカーフは藍染の綺麗な和風スカーフだった。ちゃっかりウエブサイト付きで、お値段も公開。さすが、ジェントルマンで有名な彼氏、奮発してるなー、と感心。
まあ それはいいとして、このメッセージを受け取った時、あれ、私このブランドのオーナー、会った事ある、と思った。そういえば1年以上前、ポートランドで開催されたLocal shopTradeshowで、当ブランド、Kirikoがブースを構え、多くの客の関心を引き寄せていた。その時に一緒に行った別の友人が、オーナーと知り合いで、少し挨拶をしたのを思い出した。
オーナーの顔はあんまり覚えていないけれど、凄く勢いがあって、現代のハイカラ兄さん、という印象があった。Tradeshowのブースの構え方も、とても個性的だった記憶がある。古い和風のチェストやテーブル、皮のトランクなどを、一つの部屋のように配置し、絣などの生地で作られたスカーフやネクタイをセンス良くディスプレイしていた。
そうだあ、彼は日本人で、ここポートランドで起業したんだあ、とさっきまでiPhoneで観ていたお笑い番組から思考がそれる。アメリカで起業する人はミリオンといるけれど、外国人がそれをするってどうなの。はたまた日本人が独りでビジネスを始めるって、どうなのよ。マイクロソフトはガレージからその歴史が始まったけど、アメリカンドリームはもう神話ではないのか。Kirikoはゼロ地点から、大手の会社から発注の来る現在のブランドに至るまで、どんな道を歩んできたのか。

前に、日本で出勤前の講習会というのが流行っているっていうのを読んだ事がある。早朝にビジネスで成功している人達の講習会やレクチャーなどに積極的に参加し、自分の仕事やビジネスに対する鋭気を養ったり、気持ちを向上させたり、新しいアイデアのヒントを得たりするのだそうだ。
正に私にはこれが必要!と思った。最近のアタシはモチベーションが低下気味。成功している人の話を聞いて、気持ちをBoost upしなければ!(但し、早朝は無理。)

早速、そのオーナーの知り合いである友達に連絡。仲に入ってもらって、面会の約束を取り付ける。グータラのくせに、思い立った時の行動の速さは自分でも感心。3日後には Kirikoのアトリエにお邪魔させてもらった。

場所はチャイナタウンにあるCompound Galleryという、ストリートスタイルのファッションを集めたリテールショップの地下。階段を下りて行くと、まずは、あのTradeshowのように、アンティークの家具が心地よく配置され、Kirikoの商品が美しく飾られたショールームとなっている。そのショールームを抜けた部屋の真ん中は、接客用長椅子に、色んな生地が山盛りになったテーブルと、その向こうには、スタッフのワークステーションが並び、そして奥にはまた別のワークステーションがある。ちっちゃいアトリエ的な所を想像していたけど、結構広かった。
オーナーのKatsuさんは、やっぱりハイカラだった。元気に私を迎えてくれ、スタッフの皆にも紹介してくれた。椅子に腰かけ、私の四方八方からやってくる質問に、一つ一つきちんと答えてくれた。その間、彼はずっと手作業をしていた。“Boroというコレクション。いわゆる、襤褸布の端切れを継ぎ接ぎにした一枚の生地を膝に広げ、飛び出た織糸や縫糸を 一本一本ハサミで切り除いていた。日本が鎖国を行っていた時代に、国内での綿の価値が上がり、人々はどんな小さな端切れも大事に貯え、その継ぎ接ぎの布を次の世代へと残して行った。Kirikoのウェブサイトで知った歴史とストーリー。襤褸布が、Kirikoのブランドでは、とても貴重で、尊い物として取り上げられ、継ぎ接ぎの生地が、ただのリサイクル品ではなく、お洒落で、新しい物として扱われている。
Katsuさんが、仕上がったその生地を首に巻く。「どう、格好いいでしょう?」それはスカーフだった。

成功の秘訣をそこに見た気がした。それは、発信する側の「自信」。古い端切れをパッチにした一枚の布が、価値のある物である事を 自信を持って表現する事、生まれ変わったその新しい生地をずっと大事に使おうよ、とポジティブなテーマを提案する事。それによって、ブランドがクリエイトした価値観が相手にも伝わり、「格好いい」と思うようになる。欲しいと思うようになる。自分もそれを付けてお洒落な人に成りたいと思う。そういうブランディング。

百聞は一見に如かずとは ホントね。どんなに有り難いレクチャーを聞くよりも、現場で働く人の姿を見るのが一番だわ。私も なんか、「よっしゃっ!」て思った。自信のあるフリは上手いが、この「フリ」を 心の真ん中で揺るがない、本物の自信となるよう、錬磨していくぞ!




Kiki

Kiriko

Compound Gallery
107 NW 5th Ave
Portland, OR 97209



Posted on 夕焼け新聞 2015年3月号

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