Monday, April 27, 2015

おいしい話 No. 94「パッションのある仕事」

私は一生同じ仕事をしている人を 尊敬する。25年パン屋を経営しているとか、30年陶芸家をしているとか、大学卒業以来同じ商社に勤め、来年定年退職を迎えるとか、そういう話を聞く度に、すごいなあ~と思う。たとえそれが自分の大好きな職種だとしても、同じ仕事をやり続けるって、相当な精神力と忍耐力が必要なはず。そして やっぱりパッションかな。好きな仕事だったら、そういう山も壁も乗り越えられるんだろうな。逆に、好きな仕事でなければ、何度も立ち塞がるこれらの山や壁を乗り越えて、30年、40年と同じ職場で働き続けるエネルギーは 生まれないんじゃないかと思う。
と言う一方で、うちの近くの郵便局で働く、あるおっちゃんを思う。このおっちゃんは 私が知っている限りでも、同じ窓口に10年立っている。ここの窓口で10年はすごい、と彼を見る度に思う。彼の言動、行動を観察すると、接客はあくまでもマイペース。どーんなに長い行列ができていても、彼のまったりとした作業のリズムは変わらない。口調もワントーンで、そんなに愛想も良くない。必要以上にお客様を立てたり、気を遣うような対応もなく、規格外の事柄に対する臨機応変さもない。でも、「自分の仕事」はやっている。決して「大好き!」な仕事をしているようには見えない。定年まで、あと数年なんだろう。勝手に想像する。その時まで頑張る、と思って日々のルーティンをこなしているのかもしれない。家に帰れば、娘や孫達がいて、愛する家族には、ここでは見られない笑顔を見せるのだろう。守る物や責任があるから、ひとつの仕事を全うできるエネルギーが沸いて来るという事か。
先日、テレビでサッカーのカズがインタビュー受けているのを観た。監督になるオファーとか来るけれど、自分はプレイできるチームがあるなら どこにでも行ってずっとサッカーをやっていたい、「元サッカー選手」というタイトルは要らない、と言ってた。すごいパッション。現在でも現役と同じメニューのトレーニングを欠かさず行っているとか。ひとつの事で一流になるって、才能プラス、燃えるパッションをベースに、人を上回る努力は不可欠なようだ。

さて、私は何なのだろう。私の情熱や守る物は? 
やりたい事、只今模索中、って まだ言っててもオッケー?
自己管理が緩く、努力も程々で、持続性のないアタシ、こんな人間がなれるものは何?

営業でバンに乗り、お得先を駆け回っていた時は、高層ビルのオフィスワークが違う世界に見えた。オフィスのデスクワークの仕事に就いたら、接客するセールスがやり甲斐があるように見えた。セールスになったら、ギャラリーで決まった顧客だけを相手にする商売がカッコよく見えた。決まった顧客だけを相手にしていると、外に出て 見知らぬ人々にインタビューをするライターが面白いと思った。レストランなどインタビューに回っていると、そこで見かけるバーテンダーの仕事が、クリエイティブで楽しそうに見えた。

ひたすら色んな事に興味がある。
バーテンダー学校に行き、資格を取り、バーテンダーになって、今仕事が面白い!ていう話を、当時すでに15年美容師をやっていた女友達にしたら、「何をやってんのかわからない」と叱られた。まだ何も一本筋の通った仕事を見つけてないではないか、という指摘。
それを言われると めっちゃ事実なので反論はできない。ただ私は、興味がある事を実際に体験してみたかった。それに対する行動力と積極性は人一倍あり、必ずその職に就いてきた。そして「体験」してきた。確かにそれらの興味が、体験した事によって よっしゃー、一生の仕事にしたるぅ!というパッションには変わらなかったけれど、電信柱みたいな人生ではなく、そんな色とりどりの幅のある人生もアリじゃないの?と ちいちゃーい威勢を張り上げたくなる。

カズみたいにパッションがある人でも 郵便局のおっちゃんみたいに(一見)パッションレスでも、一つの事を何十年もやり続ける事は 並大抵の努力ではない。と尊敬しながらも、正直、圧倒されて、腰が引き気味になっている所があるかも。

でもね、諦めているわけではないのよ。アタシのサーチは続いている。待機中のパッションが、むくっと立ち上がるような、これだ!という物に出会えば、自己管理もきっちり、努力も惜しまず、持続性も保たれるはず! イイ男に出会うみたいなもんよ。見つけたら死ぬまで添い遂げるわよっ。

よく人は 好きな仕事をしている最中に死ねるなら本望!って言うけど、私もそういう人達の一人に成りたい。
私のお葬式で読まれるジョブタイトルは一体何なんだろう。ちょっとワクワク。

Kiki




Posted on 夕焼け新聞 2015年2月号

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