Alberta Street Oyster Bar & Grillは私にとって正体不明のレストランだった。同じAlberta streetに住んでいながら、この親しみある通りを 頻繁に車で走り抜けていながら、このレストランの看板を目にしたことがなかった。友達や食通たちがこのレストランの名前を持ち出せば、「あら、やっぱりあるのね」と確認していたが、やはりどこか私にとっては幻の存在だった。
去年の夏、Alberta street恒例の「Last Thursday Art Walk」に繰り出した時、込み合った群集の中に混じり 一緒にぞろぞろと歩いていると、なにやら涼しげに そして上品に 白いテーブルクロスをかけたテーブルに座って食事をしている人々が見える窓に差し掛かった。ポートランドに多く生息するピッピー系、ベジタリアン系といった風貌の若者達が蒸し暑い夕暮れ時に群れをなして歩いているのとは打って変わって、この窓ガラスを隔てた向こう側は、キャンドルライトと共に別の世界が描かれていた。
こんなロマンティックでハイソなレストランがこの通りにあったのか!と急いで看板を見上げた時、あの幻の名前をとうとう自分で目撃することになった。「Alberta Street Oyster Bar & Grill、ここにあったのね!」
と言ってみたものの、あのArt Walkの活気と、群集と、そして何軒かのギャラリーで 賞味させてもらったタダワインのせいで、そのロケーションの記憶が ぼやけていき、そのうち消え去ってしまった。
それから後も、何度もAlberta streetを通行しているが、このレストランを目にすることはなかった。そして、いつのまにか、自分が見かけないという理由だけで、あのレストランは閉業となってしまったと勝手に結論をだしていた。
すると2月の半ば過ぎ、ある知り合い関係からレストランのニューズレターがEメールで送られてきた。それは なんとAlberta Street Oyster Bar & Grillが新しいオーナーを迎えて新たに営業をスタートした、という情報だった。「あら、本当に閉店してたのかしら」と思いながらそのレターに目を通した。腕利きの若いシェフの紹介から、新作メニューのハイライト、そして 当レストランについてなどが書かれていたが、一番私の興味を引いたのが、“No Corkage”というサービスだった。毎週木曜日はお客がワインの持ち込みをしてもそれに対してチャージが付かない、ということ。通りを挟んで向かいにあるCorkというワイン専門店がある。そこに当レストランのメニューを備えてあるから、それを見ながら、ワインエキスパートに相談して ワインを選び、そのまま購入したボトルを持って食事にいらしゃい、というのが彼らの提案だ。レストランでワインをボトルで注文することを考えると、これはものすごく経済的で、プレッシャーのないサービスだ、と関心した。
さっそく、ハビーのママにこのニューズレターを転送した。ハビーのママは、グルメで新しいレストランに行くことが大好き。そして、寛大なことに、私たち貧乏夫婦も いつもお供として連れて行ってくれるのだ。そんな下心があったわけではない、と強くは否定できないが、一応情報としてね、と送ってみた。すると、さすが食好きのママ、すばやく興味を示し、是非行ってみましょう、ということになった。イエス!
当日、このレストランがつい最近まで何回か行ったことのあるLoloとBernie’s Southern Bistroに挟まれていることに気が付いた。なぜに今まで気が付かなかった?向かいのワイン専門店だって何回か来たことあるのに、なぜ Alberta Street Oyster Bar & Grillだけが幻のまま所在不明だったのだろう?自分の注意の薄さに驚いてしまった。
さっそく シェフおまかせ5コースを頂くということで Corkにワインを選びに行った。どんな料理でも基本的に合うというRoseburg産、Tempranillo(赤)を薦めてもらい、レストランに持ち込んだ。サーバーの女性が、当店で注文したワインと変わらぬ扱いで、丁寧にコルクを抜いてくれ、グラスに注いでくれた。
フレンチとNW料理のフュージョンといった料理は5品ともシェフの創作能力の広さを伺わせた。十数年ぶりに食べたフォアグラはやっぱりうまかった。ハリバットのチークも貴重だったし、昔口に合わなかったエスカルゴも、今回はママの分まで手を出すほど美味しかった。そして なんと言っても、このレストランを幻と終わらせないどころか、いつまでも忘れることができないものにさせたのが最後のコースで登場した「Sweetbreads」。デザートではない。とっても柔らかいチキンの揚げ物のようなものだったが、初めての味と食感。不思議な感じはしたものの、美味しかったのでもちろん綺麗に平らげた私。そこに 待ってましたとばかりにママが一言、「さっきの 子牛の脳みそよ。」
いくら日本人はいろんな、アメリカ人にとっても「ゲテモノ」を好んで食べるとはいえ、さすがに「子牛の脳みそ」は来た。これもフレンチならでは?密かにショックを受けた私は暫く立ち直れなかった。
後に、Googleで、「Sweetbreads」は子牛の脾臓であることを知った私は、ちょっと救われた気がした。どこがどう違うのかと追求されると困るが、罪悪感が減ったのは確か。してやられたが、ママは本当に脳みそだと信じているのだろうか、、。とにかく、Alberta Street Oyster Bar & Grillはしっかりその存在感を私の中で打ち付けたのは間違いない。
Kiki
Alberta StreetOyster Bar & Grill
Phone: (503) 284.9600
Fax: (503) 283.3200
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