Wednesday, August 17, 2011
おいしい話 No. 25「ステーキ屋さん」
ステーキって、どうしてあんなに高いんでしょう。ただちょっと厚みのある 1枚の肉を焼いただけなのに。
そりゃあ その肉が牛の体のどの部分から切り取られたか、その牛がどの地方で、どのように育てられたか、ということによって値段が変わってくるっていう、市場の価格状況があるのはわかるけど、和牛の完璧な霜降り肉でもないのに、基本的な味付けは塩コショウに赤ワイン ジュッ、っていう料理に対して、そんなに大層に 料金乗せなくても、と思ってしまう。
まあ ステーキは焼き方が命、なんていうのはわかるけど、実際 焼きにかかっている時間は少ない。ミディアムレアとかレアがいいなんていう注文には、労働時間はカットされる。
10歩ゆずって、たとえそんなシンプル料理にだって、一流の 腕のいいシェフが必要だとしよう。火加減だのひっくり返すタイミングだの、ウンチクを言い出すと限がないからね。特に老舗のステーキ店なんか 中途半端なシェフをおいておくと その名が立たない、なんてこともあるわけだし。
が、しかし、そんな給料取りの、コストの高い腕利きシェフを雇っておいて、サイドもついてこない、焼いたステーキをデン!と色気のない皿にの真ん中において出すような料理をよし、とするのはどんなものなのか。これが”America’s Favorite”と豪語していいものだろうか。
ステーキ屋に行って常に嘆き声をこぼさずにいられないのは、アートの心をまったく無視したプレゼンテーションの乏しさのせいである。先日行ったMorton’s Stake Houseでその悲しい確認をまたしてしまった。ステーキ屋ってどこに行っても同じだ、と無念な感に落ちいってしまった。
この1枚の肉に49ドル!? 神戸牛でも松阪肉でもないよね? 彩りに添えられるブロッコリーとかほうれん草のソテーとか、角を丸めたニンジンのグラッセル、ホクホクに仕上げた粉ふき芋はどこ? ほらちょっと気の利いたレストランでステーキ頼むと付いてくるじゃない? え、ブロッコリーが欲しいなら サイドで別にオーダーしろって?
メニューを見ると、サイドディッシュとしてブロッコリー8ドル、マッシュドポテト7ドル、アスパラガス9ドル。大きさだげが自慢かのように横たわるステーキを見下ろしながら、これって、もし サイドディッシュをオーダーしないと、本当に肉だけを食べている状態だよね、と ちょっと野性的な気分になってきた。
このサイドディッシュ達がまた 怒りを引き起こす。まるで ただスティームしただけのブロッコリーや 茹でただけのようなアスパラガス(しかも あの長さのまま)、大量生産されたであろうマッシュドポテトがそれぞれ、これまた 色気のない皿にてんこ盛りになって運ばれてくる。それらのサイド達は もう洗練された料理と 何マイルもかけは離れている。
食は目から、なんていうけど、日本人からすると、逆に目玉が飛び出る、っていう感じかしら。愛でる目がいらないって感じ? こういうのって 逆にそそられない。Feedされてるって言った方が早いかも。やっぱり ここで文化の違いが表れている、ということなのだろうか。開拓時代の料理が そのまま高級な店内で気取って出されており、アメリカ人の大好物、そして その人気は不滅だ、ということなのだろうか。
この店の50ドルのクーポンを貰って行っておいて この文句の言いようはないだろうけど、まあ普通ならちょっと足すだけで おいしい料理が楽しめるだろうと思って行ったハビーと私。メニュー開いた時にその浅はかさが明らかとなった。「え、ステーキ一枚で もうクーポンが飛ぶわけ?」とメニューに顔を隠しながら目をキョロキョロさせた。
これが不思議なことに、店内が満員なのである。商売繁盛なのである。老若男女みんなステーキが大好きなのである。この値段がちっとも気にならないのである。
大きな切り身で出てきたステーキはあっという間に飽きてしまった。シェフの技や、美の心、繊細で細かい料理への施しはどこにもみられなかった。結局 プラス120ドルの出費に、胸もいっぱい、気持ちもいっぱい、で 残り物を詰めたプラスティックバッグを抱え、店を出た。
この120ドルの、いや170ドルの価値はどこに値するのだろうか。気の利いたプレゼンテーションでないことは確かです。
Kiki
Morton’s the Stakehouse
213 SW Clay St Portland, OR 97201
(503) 248-2100
Posted on 夕焼け新聞 2009年4月号
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