Wednesday, February 8, 2012

おいしい話 No. 49「人の心」

3月11日に発生し、東北地方を中心にした東日本に、多大なる被害を与えた大震災。震度9の地震は 想像を絶する大津波を引き起こした。

普段テレビを見ることもない私のところに、友人から泣き叫ばんばかりの声で電話があった。すぐさまテレビをつけると、ローカルのネットワークが地震直後の現場の状況を、上空からの映像と共に報道していた。そこはもう津波が襲った後の仙台空港だった。

おもちゃのように街中を流れる車や船。屋根まで水に使った家並み。頭が混乱したまま、テレビの前に立ちすくんだ。
「日本に何が起こっているんだ。」

翌日、その次の日と、日を追う毎に増え続ける死者と行方不明者の数。命からがら逃げ延びても、家族を亡くしたり、離れ離れになってしまい、行方がわからなくなってしまったと語る避難場所の人々。
もうそこには 絶望という言葉しかなく、失意のどん底で、生きる意欲などわかない状況であろうと想像し、胸がえぐられるように痛んだ。

遠いアメリカにいる私達に 何ができるのだろう。

震災から一週間後の3月18日、“Vigil for Earthquake and Tsunami Victims in Japan”と名打った東北太平洋沖地震犠牲者のための追悼集会が、ダウンタウンのパイオニアスクエアで行われた。"Candlelight Vigil For Japan PDX" という、PSU/PCC/UOの生徒わずか数人で立ち上げたグループが、自分達だけで この追悼式をすべて計画し、実現へと運んだ。情報は主にメールを通して、Networkを走り、広がっていった。

当日、広場には、ポートランドに住む日本人だけでなく、日本人と友人や家族となったアメリカ人や他国籍の人々も、キャンドルや日の丸の旗を手に大勢集まった。私がこの追悼式開催の情報メールを転送した友人達も みんなキャンドルを持って集まった。
数人の参加者が、「がんばれ日本」のサインを掲げていた。様々な状況や境遇の中で、「がんばれ」という言葉を掛け合う、それが日本人なんだ、それが私達の文化なんだ、と 心で改めて受け止め、再認識した。

Portland市長のSam Adams氏や、在ポートランド日本国総領事の岡部孝道氏が、亡くなった方々の冥福を祈り、日本を励ますスピーチを行った。その最中に、激しい雨が降り出しても キャンドルが濡れて消えないように、手で覆いながら、人々はそこから去ることはなかった。黙祷を捧げた一分間は、静まり返った広場に ただ傘やテントに雨が落ちる音が響いた。集まった皆の「想い」が一つになった瞬間だった。

ポートランドの太鼓グループである「Takohachi」が素晴らしい演奏を行い、集まった人々の心に力を与えた。
太鼓に打ち付けられる大きな一振り一振りの音が、一人一人の心に浸透し、皆の願いを救い上げ、空に舞い上がり、一つのエネルギーとなり、光のように日本の向かって走った。
目に見えるものでもなし、科学的に証明されているわけでもないけれど、人の想いは、同じ願いを持った人々が集まれば集まるほど、パワフルで、ポジティブなエネルギーを放つと信じたい。

Mercy Corpsのボランティアの人達が寄付を募る。彼らが掲げた赤いバケツを目指し、20ドル札を握りしめ、人混みを縫う。私ができることは わずかな寄付金と、想いのエネルギーを届ける事。そして、それはこのパイオニアスクエアに集まった誰もが同じだった。

震災が起こったその直後から、一瞬として時を待たず、日本各地から、世界各国から、援助金や支援物資、救助隊員が送られてきていることが報道された。
そして、この戦後最大の災害の中、被害地の人々がどんなに協力しあって 救済所で暮らしているか、譲り合いや、相手を労わることを忘れない、秩序と道徳を敬う日本人の心は失われていない、ということも沢山の記事に書かれた。

人の心はすごい。
皆が平和でシアワセな生活ができる術を 一人一人が心に持っている。
戦争や他の争いで傷つけあってきた人類だけど、無防備に惨事に遭い、苦しんでいる人達には手を差し伸べずにはいられない心が起き上がる。

そして、どんなに絶望のどん底に立たされても、すべてが崩れ落ちた瓦礫の荒地に置き去りにされても、人々は立ち上がり、再建へと労を注ぐ。日本にはそれを何度も繰り返してきた歴史がある。日本人の心の強さは、健在なはず。今回も必ず、この崩壊から新しいものを造り出し、また笑える日を迎えるべく、前進し続けると信じている。

Kiki





Mercy Corps Headquarter
45 SW Ankeny St.
Portland, OR 07204
http://www.mercycorps.org/


Candlelight Vigil for Japan PDX
Email: vigil4japanpdx@gmail.com
Cell Phone: (503)764-8383

Shokookai of Portland
Japanese Business Association of Portland
(503) 644-9579


Posted on 夕焼け新聞 2011年4月号

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