文化系で、スポーツの世界から180度離れたところにいる、完全なる「Nerd」だと思っていたハビーが 最近スポーツに興味を持ち始めた。といっても スポーツをする方ではなくて、観戦する方。まあ スポーツ狂も ある種のNerdではあるわけで、そのスポーツ狂の、特にBlazers die hardの友人に感化され、ハビーも次第に そのハシクレのような行動を取り始めるようになった。
最初は この友人が買ったBlazersのシーズンチケットを 彼が行けない日に貰い、Rose Quarterで観戦したことがきっかけで、そのうち自らインターネットでスコアをチェックしたり、ダイジェスト版をYoutubeで見たり、気がついたらチームの選手全員の名前を覚えるまでになっていた。
Nerdもどうかだけど、Typicalなアメリカのスポーツ狂でないことは救いだ、と思っていたのに、、、。ハビーの異変に脅威を感じるようになり始めた私。
選手の誰それがケガをした、誰それが調子が悪くて得点が取れない、誰それが考えられないほどのすばらしいパーフォーマンスをした、という事をいちいち私に報告してくる。名前を言われたって誰だかわかりゃしないのに、フンフンと上の空で聞いている事にもおかまいなく、彼のスポーツ解説は続く。そして そのうち、今まで どちらかと言えば毛嫌いしていたスポーツバーにまで足を踏み入れるように。クリスマスにパパからもらった初Blazersスエットシャツを誇らしげに着て、ゲームにでかけるハビー。実際のアリーナでのゲームだけでなく、近所の場末のスポーツバーに行く時にも、そのシャツにわざわざ着替える。ハビーが一番避けたいタイプの男になっていった。
ところが恐ろしいことに、どんなに上の空で聞いていようがおかまいなしに、Blazersの選手達やゲームの進行状況を伝えてくるハビーのお陰で、「誰それ」としか聞こえてこなかった選手の名前が、Brandon Royだったり、Andre Millerだったり、LaMarcus Aldridgeだったりと、わかるようになり、次第に その顔が一致するようになってきた。
私もファンになってきていると判断したハビー、BlazersがPlayoffに進出する事が決まった興奮も含め、そのスポーツトークに拍車がかかる。
「Playoffで最初に戦う相手はDallasだ。これはもうBig Screenで見るしかないぞ!」近所のちーちゃいテレビのモニターでは臨場感を味わえないという。インターネットで調べて出てきたのが、チキンウイングスで有名な「Buffalo Wild Wings」。
チキンウイングスの魅力とハビーのしつこさに負けた私は、Buffalo Wild Wingsに付き合うことにした。待ち合わせをしたDowntown店に入ると、いつものBlazersシャツで準備万端のハビーがしっかり確保したテーブルから手を振る。店内は同じくチームシャツを着て狂ったファン達で満員状態。どの席に座っても、どの角度からでも、モニターを見逃すことがないよう何台もの大型フラットスクリーンTVが店内の壁じゅうに掲げられている。恐るべし、「スポーツバー」である。
頭を横に振りながら ラミネートされたメニューに目をやる。チキンウイングスは「Traditional wing」と「Boneless wing」があり、フレーバーはMildからSpicyまで14種類。いくら辛いモノ好きの私でも「Keep away from eyes, pets, and children」と書かれた当店で一番辛い “Blazin”は避け、”Hot”, “Again Zing”, “Spicy Garlic”の3種類にしよう、なんて考えている時に、「わー!」という大歓声が店内中に沸き起こった。驚いて顔を上げると、老若男女が、大きなビールのグラスを片手に、スクリーンに向かって、ソースで茶色くなったもう片手を振り上げている。得点を入れた、ボールを奪われた、ファウルをした、3ポイントを入れた、ダンクシュートを入れた、などという度に店内のオーディエンスの熱気が上がる。
「すごい! My boy、Andreがまた点を入れた!」と叫ぶハビー。
ビールと店内の熱気に酔ってきた私も、気がついたら 思わず声援を上げていた。私も「My boy is good too!」と張り合う。スペインからやって来たカーリーヘアの ちょっとかわいいRudy Fernandezが、今日から正式に 私の「My boy」となった。
Kiki
Buffalo Wild Wings
www.buffalowildwings.com
Posted on 夕焼け新聞 2011年5月号
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