Sunday, March 6, 2016

おいしい話 No. 105 「さよなら、Spike」

Spikeが天国に行った。
もうすぐ18歳になるおばあちゃんだったけど、ずーっと赤ちゃんみたいな顔をした猫だった。
タフで強くて、こっけいで、愛らしかったSpike
猫好きではない私は、ハビーが実家からうちに引き取りたい、と言った時は 非常に躊躇した。でも、いざやって来て一緒に住みだすと、いつの間にか、写真を撮りまくり、人の迷惑も考えずに「可愛いだろう」と送りまくる親バカになっていた。
我が子が可愛いいと思えるのは 人間も動物も同じなんだと知った。

もう老猫で、最近の動向はおかしかった。確実に最後が近づいてきている感じだった。
ご飯も偏食になり、食欲も無くなり、寝る場所も転々と変え、異様にCuddlyになり、変な座り方して遠くを見つめてたり。

昨日は得におかしかった。
外に出たがり、一旦外に出るとなかなか帰ってこない。いつもなら小心者ぐらいすぐに家に舞い戻って来ていたのに。
そんな、なかなか帰って来ないというパターンが朝、昼、と続いた。
夜もまた出たがった。
出してやると 12時近くになっても戻ってこない。
子供の頃飼っていた犬が病気をして、その後突然いなくなった時、両親が、動物は死ぬ時には、飼い主にその姿を見せないんだよ。一人で死ぬ為にどこかへそっといなくなってしまうんだよ、と言った。その話を思い出して怖くなった。
このままSpikeは帰ってこないんじゃないかと。

でもSpikeは戻ってきた。
戻ってくるなり、床にコロンと寝転がり、じっと動かない。
私は心配で、居間のカウチに毛布を持ってきて、そこで寝る事にした。もしSpikeに異変が起きたらすぐわかるようにと。

夜中の3時頃、苦しそうな声を上げるSpikeに目が覚めた。
もうぐったりしている。目ももうろうとしている。
急いで救急動物病院に電話したら すぐに連れて来なさいという。
パジャマの上からセーターを被り、Spikeをキャリーバッグに入れ 外に飛び出す。
車をUnlockしようとRemoteのカギを押すと、アラームが鳴り出す。Shit!!
携帯のナビゲーションをスタートして車を走らせる。
その間、私はずっとSpikeに声をかけていた。
Hang on Spike!  Hang on!
時々かすれた声でSpikeが答える。Meow...   よし、まだ間に合う。Hang on Spike!  Meow..
途中携帯のバッテリーが切れて ナビが消える!! Shit Shit Shit!
Thank God、携帯のカバーにはチャージャーがついている。それをオンにして再起動を待つ。
その間、コンタクトレンズを入れる時間を惜しみ、メガネのまま飛び出した私は ストリートのサインがよく見えない。
ナビが再起動するまで、自分で進んで行こうとするんだけど、とにかくサインが読めないから 違う門を曲がったりして、もうオタオタ。
やっとナビがまた起動し始め、病院に到着。駐車禁止の標示の前に逆方向で車を停め、病院の入り口に走り、ドアを叩く。ガラス張りだったから さっき電話で応対してくれた女性が受付カウンターから私を見つけ、入口のドアまで駆けつけてくれた。
そのままドクターの手で治療室へ。
私は小さい個室の待合室に案内された。

なんでこういう時、Hubbyは撮影の仕事でいないわけ?
なんで私一人で Dealしているわけ?

ドクターが部屋に入ってきて 状況を教えてくれた。
Spikeの心臓は止まったけど、CPRを与えたら息を戻した。CPRを継続すれば Spikeは少しの間長生きできるかもしれないが、それも時間の問題。もう年だし、薬を与えて 静かに痛みもなく死なせてあげる、というオプションもある、と説明してくれた。
私は それを承諾した。
この日が来る事はわかっていた。おばあちゃんのSpike
今まで頑張ったよ。

私が独りで待っている待合室に赤いブランケットで包んだSpikeを連れて来てくれた。
最後のお別れの時間を与えてくれた。
私はSpikeを抱きしめ ただただ泣きじゃくった。
ブランケットの中で眠るSpikeは やっぱり赤ちゃんみたいに 可愛く 愛おしい顔をしていた。
Thank you, Spike
I love you, Spike
You did very well
You lived a really happy life
私は泣きじゃくりながら ずっとSpikeに話しかけた。
二人きりで、小さな部屋で。

涙が止まらなかった。
病院の人は優しく、私が気が済むまで泣かせてくれた。ずっとドアの外で待っていてくれた。

朝早くHubbyが仕事から帰ってきた。家に入るなり泣き崩れた。
ずっと二人で一日中泣き続けた。
Hubby18歳の時から飼い出したSpikeSpikeは文字通り彼のBabyだった。

キッチンには Spikeが口をつけなかったCat Foodが ボールに残っている。
大好きだったTreatも マットに転がっている。

Spikeがこの世から消えた。
私達の生活からいなくなった。
彼女の人生を終えて、天国に行った。

昨日私が 本を声を出して読んでいると 私の傍に来て横になり、私の声を、本のストーリーをじっと聞いていたSpike
彼女も自然のサイクルの中に戻ったんだね。
土にNourishしてもらい、そして土に返る。
この変わる事のない自然のサイクルを、Spikeの死によって また 実感したよ。

ありがとう Spike
さよなら Spike




Posted on 夕焼け新聞 2016年2月号

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