Saturday, October 1, 2016

おいしい話 No. 110  「結婚式、フリースタイル」

Hubbyの高校時代の友人から、結婚式の招待状が来た。ポストカードで。
Amanda + Karl are getting married!” 
二人が見つめ合っているショットの写真の裏を返すと、そういうメッセージが書かれていた。
Saturday June 18th Mt. Tabor @1pm”
RSVP by May 10th theknot.com/us/Amanda-Karl”
このカジュアルさ、Hubbyの友人らしい、、、。得に高校時代の友人は、皆どこか一風変わっているから、まあ、「らしい」と思ったわけだけど、実際の彼らの結婚式も、常識外れの、フリースタイルだった。

Mt. Taborに行った事のなかった私は 普通の公園だと思っていた。天気の良い午後に緑の公園で結婚式っていうのもいいんじゃないの、と。でもこの「Mt.」と言う所が少し引っかかっていた。山登り、みたいな事にはならないよね?

Mt. Taborの入り口から舗装された道を上がって行く。なんとなく山っぽい、、、。
ところで、Mt. Taborのどこなん?とハビーに聞く。「知らない」。「ハァ?」
「僕が持っているインフォメーションはあの招待状のハガキに書かれていたインフォメーションだけだよ。」
Saturday June 18th Mt. Tabor @1pm”
ええええー? ホントにあれだけなの?!
手前に電話して詳細を聞くとかしてなかったわけ?「してない。」「出た、、、。」
Mt. Taborの規模がどれだけなのかわからないけど、Mt. Taborでイベント、と言えば誰でもココとわかる場所があるのだろうか、、、。

車で上って行く途中にガジボのように屋根のある大きな休憩場所が目に入った。そこには白いクロスのかかったテーブルがずらりと並べられ、屋根の周りはヒラヒラとカラフルなテープでデコレーションされていた。
それを横目で見ながら、更に上って行く。途中で車を駐車して そこから徒歩で登って(!)行く。
AmandaKarlの結婚式、というサインも無し、風船や、矢印の道案内も無し。当てども無く、ただ上に向かって歩いて行く。これで本当に合ってるわけ?という顔をしながら登っていたのは、私達だけではなかった。ちょっと綺麗な格好をした人達や ギフトを抱えた人達が、同じように困惑した顔をしてぞろぞろと歩いていた。彼らもまた、私達を見て「確認」しているようだった。
最終的に「Mt.」のてっぺんに辿り着いた。そこは、大きな木々の間に 平らな地面が広がっている場所だった。何となく人が集まっている。皆が再会した知人や、そこで知り合った人達と雑談をしている。1時はとっくに過ぎているが、新郎新婦どころか、ウエディングプランナーやオーガナイザー風な人達も見当たらない。「ここで良いんだよね?」と、また知らない人達と確認しあう。誰も定かではない。
1時間経った。何も無し。雑談ももうネタ切れ。雨が降り始めた。私の堪忍袋が切れそうなタイミングで、一人の男性が皆にアナウンスをした。新郎新婦は遅れているので、一旦屋根のあるレセプション会場に行きましょう。レセプション会場は、あの飾りつけしてあった休憩所だった。
坂道を下り、レセプション会場に行くと、先に着いた人達が備えてあったワインを勝手に空けて飲み始めていた。私も知ったこっちゃねえとワインをグラスに注ぐ。アルコールが入ると皆また談話に花が咲き始めた。新郎新婦抜きのレセプション。しかもまだ式もしてないのに。「This is a backwards wedding!」と誰かが叫んだ。ホントに。

それから1時間後、同じ男性がアナウンスをした。もうすぐ新郎新婦が登場するので、あの元いた場所に戻って下さい。えー、やっぱりまた上がっちゃうの? 今度は、皆ワイングラスを片手に登り始めた。
不思議だったのが、この待たされている間、誰一人として文句を言う人がいなかった事。ごねる人も、ぶーたれる人も、帰ってしまう人もいなかった。なんて寛容なポートランド人!

全員があの山のてっぺんに戻ると、誰かがバイオリンを引きはじめた。白い花を胸に刺したKarlが大きな木の前で立っている。小さい女の子が花びらを撒きながら現れた。次に子犬を連れた男性。ブライドメイド、グルームズメンがその後に続く。最後に花を髪に飾った新婦がブーケを持って現れた。Karlのお兄さんが神父の役を受け、結婚を執り行った。全くもって手作りのシンプルな結婚式だったけれど、とても美しく、素敵な式だった。長らく待たされていた事も帳消しになった。終わり良ければ全て良し。集まった皆が笑顔で祝福している。

こんな結婚式始めて。常識や型から外れていても、2時間の遅刻をしても、弁明する事も無く、これが私達のスタイル、と堂々とやってのける彼ら。そしてそれを受け入れる周りの人達。全くもって自由なスタイル。長いアメリカ生活、様々な珍体験をして来たけど、これもまた、いろんな意味で、心に残る結婚式でした。




Posted on 夕焼け新聞 2016年7月号



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