ハビーは キャロットケーキが大好き。両親から 糖分の摂取量を規制されていた少年の頃は、誰にも文句を言われない大人になったら、必ず一人で 丸ごと キャロットケーキを食ってやる、と心に誓っていた。
お酒も飲める21歳になったら 正真正銘の大人規格に入る。友達と無帽な飲酒行為をして 吐きまくった後に残る使命は、Safewayのキャロットケーキを自分一人で楽しむことだった。
後に その栄光の体験を聞いた時、吐きそうになったのは私だった。日本の軽い「甘さ控えめ」ケーキならともかく、どっしりと重い、その重量の90%は砂糖からなるのではと思わせる強烈な甘さのケーキを、一人で丸ごと食べるなんて、自殺行為としか思えない。
It was sooooo awesome!と悦にいっているハビーだが、二度と同じ行為をとっていないことは確かだ。表向きは自慢げに語っているけど、実は本人も 結構きたのではないかと、私は思っている。「大好きだ」と言いながら、実際わざわざ買って食べているとろを見たことはないし。
そんなハビーの またひとつ大人になる誕生日がやってきた。
こんなに何年も一緒にいると、特別なお祝いにもネタがつきてきて、何をどうしていいものか、考えのるも辛くなってくる。
そんな なんにも用意をしていない誕生日の前日に はっと、思いついたBrilliantなアイデアは、手作りのキャロットケーキを作ることだった。なんせ、キャロットケーキは 彼の大好物だし、随分食べてないし、きっと喜ぶに違いない。また少年の時の願いを かなえてあげようじゃないか。手作りなら ヘルシーに作る事だってできるし。
さっそく グーグルでレシピを検索。キャロット3カップに、小麦粉2カップに、砂糖2カップ、と読んでいく。なんだ、簡単じゃない、家にあるもので、出来ちゃうじゃない。Baking powderとBaking soda以外は。ウン十年と、ケーキを焼いたことがない私は、この2品を買いに閉店寸前の近所のCo-opに走った。
ニンジンて、大根よりも固いのね、と思いながら 原始的に大根おろしで3カップ分おろした。便利なフードプロセッサーは 決してパントリーの奥に閉まってはいけない。取り出す面倒くささを考えると、自分の筋肉を使い、汗を流すことを選んでしまう。
オーブンは375度に設定。卵4個を溶いたボールに、レシピに書いている分量に添って、材料をほおりこんでいく。カップで表示されているのはまだいい。計量カップで計ればいい。「ティースプーン」で表示されているのは どうしたものか。がざがざと 引き出しに入っているナイフやフォークやスプーンをかき回し、2種類の小さいスプーンを取り出す。「テーブルスプーン」ていう表示もあるけど、たぶん それはスープとかをすすったりするスプーンだと思うからこれだな。で、ティースプーンは ちょっとお上品な感じだから少し小さめのこれだな、と イメージで判断。「ティースプーン」2杯の、バニラエッセンス、シナモン、ベーキングソーダ、ベーキングパウダーを、救い上げた分だけ、ほおりこんでいく。
快調だった私の手が止まったのは、砂糖2カップを計っている時。砂糖が土砂崩れのようになだれこんでいるのに、容易としてカップがフルにならない。ちょっと怖くなり、8分目でよしとした。
容器に流し込み、オーブンに寝かした後は、無くてはならないクリームチーズのフロスティング作り。さてさて、とレシピに戻ると、またギョッとした。室温で柔らかくしたバター一本とクリームチーズ1ケースに、砂糖4カップ。うちの砂糖がケーキ一個で無くなってしまうではないか。
ヘルシーなキャロットケーキ、もてなされる方は「知らぬが仏」である。でも、ダイエット中の人は あえてレシピを知る必要があるかも。
しかし、あの大量の砂糖効果なのか、売りに出してもいいくらい、完璧で すばらしくおいしいキャロットケーキが出来上がった。恐るべしアメリカンケーキ。
バースデーボーイの ハビーには、特別に大きな切り身をのせ、たっぷりとフロスティングしてあげた。その大きさに一瞬目をむいたが、「キャロットケーキは僕の大好物なんだ!」と言って、少年のように大喜び。全部平らげた。
ダーリン、あなたも今日で正真正銘オヤジの仲間入り。思う存分キャロットケーキを楽しんで。また そのうち、糖分の摂取量規制が 始まるから。
Kiki
Posted on 夕焼け新聞 2011年10月号
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