Monday, September 18, 2017

おいしい話 No. 124「カリフラワー ビザ クラスト」


野菜の食べ方も進化したものだ。
世の中がヘルスコンシャスになっている昨今は、その料理方法も豊富。
皆色々アイデアが浮かぶものよね。
特に最近の注目は、カリフラワー。茹でたり焼いたり炒めたりだけではなく、ピュレーにしてスープにしたり、マッシュしてマッシュドポテトの代替にしたり、細かく刻んでライスの代替にしたり! 
先日、Food Networkで ある料理番組を見ていたら、カリフラワーを使ったビザ クラストの作り方を紹介していた。ピザ クラストまでカリフラワーで作るなんて。Who comes up with it!!? 
早速グーグルしてみた。そしたら沢山のサイトでカリフラワーのピザ クラストの作り方が紹介されていた。面白い事に、どのサイトも調味料や分量に差異があるとしても、基本的に同じやり方なのだ。カリフラワーをブレンダーでライス状にし、それを茹で、最後に布巾を使って水分を絞り取り、調味料を加えてクラスト状に形を作りオーブンで焼く、という手順。
興味をそそられた私は、早速一つのサイトのレシピを手本に、作ってみる事にした。

まずカリフラワーをブレンダーで細かくし、たっぷりのお湯で茹でる。ザルに上げたカリフラワーは本当に炊いたお米のようだった。(これで納豆ご飯にしようとは思わないが。)これを布巾で包んで絞る。コツは固―く絞り、水気を限りなく切る、と書いてある。ここで自慢の腕の筋肉が使われるわけだが、どんなに頑張っても完全に水分を切る事ができない。もういい加減腕が疲れたところでボールに移し、調味料を入れて混ぜる。モッツァレラチーズとパルメザンチーズ、オレガノ、塩、ガーリックパウダーに卵。これらがしっかり混ざった後、クッキングシートを敷いたピザパンに、ピザ クラストのように薄い円形に形を作り、400度(F)のオーブンで約20分ほど焼く。その後好きなトッピングを乗せ、再び10分ほど焼くと、Ta-dah! ピザの出来上がり。

これがなかなかイケるのである。三角に切ったクラストが壊れる事なくちゃんと持ち上がる! そしてシンプルで控えめなカリフラワーがトッピングのフレーバーを超える事もなく、いい味を出している。すごい!
唯一つ気になったのが、クラストが思ったほどハードでなかった事。やっぱりまだ水気が多かったのかなあ。あんなに必死で絞ったのに、、、。
そこで私は考えた。
カリフラワーを細かくする前に先に茹で、それからブレンダーにかけた方が、ライス状にして茹でるよりも水分が少なくて済むのではないか。
頭イイ! このやり方を載せているレシピはどこのウェブサイトに行っても見当たらない。ここは実験をして 証明してやろうじゃないの。
次の日に またカリフラワーを買ってきた。まずは沸騰するお湯に小分けしたカリフラワーをを入れ、数分茹でる。ザルにとり、水気を切り、今度はライス状にするためにブレンダーに入れる。ブレンダーで回る茹でたカリフラワーは、ライス状にはならず、マッシュドポテトのような状態になっていった。 あれ!??  不安に思いながらも同じ調味料を入れ、ピザの形を作り、同じ温度と時間で焼いた。完成したクラストは、1枚で持ち上げる事ができず、ボロボロと崩れた。
私は考えた。茹でたカリフラワーをブレンダーにかける前に、一旦布巾で絞るべきだったんだ、と。だから水が多くて、マッシュドポテト状になってしまったんだ!
その翌日 またカリフラワーを買って来た。今回は小分けにしたカリフラワーを茹で、布巾で絞った。必至になって絞った。布巾を広げると、ブレンダーにかけるまでもなく、すでにカリフラワーはボロボロに崩れていた。これをブレンダーにかけるとまたマッシュドポテトになると恐れた私は、包丁で細かく刻み「ライス状」にする事にした。Ah-ha! いちいちアイデアが浮かぶあたしはスゴイ。同じく、調味料を入れ、形を作り、オーブンで焼く。
出来上がったクラストはしっかり繋がっていたけれど、食感が荒く、カリフラワーの味が表に出ている。そして、固さに向上はなかった。

自分のアイデアがどんなにクレバーか証明してやろうと思っていたが、実験の結果、オリジナルのレシピのステップを忠実に守る事がベストである、という結論に至った。どうりでそれ以外のやり方のレシピが見つからないはずだ。やっぱし、料理研究家達が、すでに実験済みなのだと思われる。

この数日毎日ピザつくめ。いやー食べ過ぎだよ ピザばかり。そう落ち込みそうになった時、ハッとする。全部野菜じゃーん! そこでギルティ―が少し軽減された。
カリフラワー ピザ クラスト、素晴らしい!



 Posted on 夕焼け新聞 2017年9月号

おいしい話 No. 123 「ご褒美の旅」


人間たまには、自分の事を「よくやった!」「よく頑張った!」と労ってあげなければならない。たまには、ちょいと財布の紐をゆるめて、自分にご馳走を振舞ったり、買い物や旅行に連れ出したり。節目節目で、自分にご褒美をあげる事を忘れてはいけない。だって、自分がやらなくて誰がやってくれるというの。

先日私もある節目を期に、自分にご褒美を進呈した。34日のナパ、ソノマ ワイナリー巡りの旅。「You deserve this!」と自分に言いながら。

ワインにハマっている最近の私は、カリフォルニアのワインを知らずして USA産ワインの知ったかぶりはできぬ、と思っていた。ワシントンもオレゴンも数々のワイナリーに行って取り敢えず「知っているつもり」でいる。でも カリフォルニアのワイナリーにはまだ行った事がない。それ故 カリフォルニアのワインを知っているとは言えないのである。というロジックが この旅行の理由。

同じくワインにハマっている女友達に声を掛けると、二つ返事でノリノリのOK。早速フライトとホテルをブッキング。そして言わずと知れて行くべきナパ、ソノマ。何にも知らない初心者の私達は、初回はツアーに任せる事にした。

1日目は San Francisco Shuttle ToursOpen Top Napa Sprinter Tourでナパへ。
9時にサンフランシスコのフェリービルディングに集合。ガイドのKyraが最初に訪れるワイナリーがDomain Chandonであると言うのを聞いた時は、友達と湧き上がった。ゴールデンゲートブリッジを渡った所にある展望所で、10分ほどトイレ休憩と写真撮影。まさに霧のサンフランシスコ。橋が半分見えない。しかも強烈に寒い。
しかし、ナパに入るや否や、青空が広がり、ツアーバスのトップが全開になり、気持ちのいい風に吹かれるオープンカーのドライブとなった。
Domain Chandonで 期待のテイスティング。いやお兄さんが注ぐ注ぐ。普通のテイスティングのケチった注ぎ方ではなかった。カリフォルニア流か? 朝からコートヤードにあるテーブルで美味しいスパークリングワインを頂くなんて、ああこれがバケーションという事なのよねー、と顔がゆるゆる。
ナパは小さいワインカントリーのイメージがあったけど、やっぱりカリフォルニア。走っても走っても、ハイウエイの両サイドに 広大なヴィンヤードが果てしなく続いていく。USA産のワインの90%以上がカリフォルニアで作られているというの、納得できる。
次に訪れたのは V. Sattui Winery。ここのテイスティングは 50種類ほどあるワインのリストから自分達が試したいのを5種類選べるという。でも私達、サーブしてくれる女性と気が合い、話しているうちにアレも、コレもと次々にワインを注いでくれ、少なくとも10種類は飲んだと思う。ここのワイナリーには新鮮な料理やチーズを売っているデリがあり、渡されたチケットでランチを買い、外のガーデンでピクニックをした。
この後、Heitz CellarsSt. Clair Brown Brewery & Wineryに。St. Clairはクラフトビールもあり、ワインと一緒にテイスティングした。
サンフランシスコへの帰りは ゴールデンゲートブリッジを渡らずフェリーで。アルカトラス島を横目に、ベイブリッジとダウンタウンのパノラマに向かう光景は素晴らしかった。

翌日はGreen Dream ToursActivity Sonoma Valley Tourでソノマへ。ホテルにピックアップに来てくれたのは、いかにもカリフォルニアンな軽いノリのお兄ちゃん、Dylan。カナダから来たもう一組のカップルと共に出発。ソノマは、Robledo Family WineryLarson Family Winery、そして Nicholson Ranch3件を回った。それぞれがプライベートワインテイスティングのセッティングをして私達を迎えてくれた。
今回の旅で、カリフォルニアのPinot Noirを期待していたけれど、以外に、Chardonnayを見直す事になった。Larsonでのランチピクニックの時に、カナダのカップルと皆が気に入ったChardonnayを一本買ってシェアをした。
その後、ソノマの可愛い街を1時間ほど散策。ウィンドショッピングをしたりアイスクリームを食べたり。
最後のNicholson Ranchでは ワイングラスを片手にヴィンヤードを歩き、担当の人がワイナリーの歴史やカリフォルニアワインの話をしてくれた。この日もまた最高の天気で、気持ちが良かった。Dylanがホテルまで送ってくれた最に、こっそりLarsonで買っていたChardonnayのボトルを私達にギフトにとくれた。How sweet

オンラインで当てずっぽうに選んだツアーだったけど、両日共、期待を大幅に上回る大満足の楽しいツアーだった。これでカリフォルニアワインも語れるようになったし、気分はリフレッシュされたし、今回の自分へのご褒美は高得点をあげたい。


San Francisco Shuttle Tours

Green Dream Tours



Posted on 夕焼け新聞 2017年8月号

おいしい話 No. 122 「好奇心を優先に」


私は昔から引っ込み思案で、人見知りをする人間だと思っていた。子供の頃から母親に「あんたは甘えの人見知り」、とよく言われていた。だから、そうなんだと信じていた。でも、ふと思った。シャイな人間が一人でアメリカに移住するか? 一人で趣味のクラスにサインアップするか? 一人でバーやレストランに行くか?
この間も、友達の知り合いの人に誘われて お料理教室に行って来た。間に入っている友達は行かなかったのに。そのお料理教室で、参加者全員が順番に自己紹介をした。アメリカで見知らぬ人が集うと必ずあるパターン。大の苦手。なのに声を張り上げて結構プライベートな事までベラベラ喋っている自分がいた。
オーガニックのプラントベースの料理はとても美味しかった。ズッキーニ スパゲティーにカシューナッツのクリームソース、ウオルナッツのブラウニー、そしてジンジャービアー。カリフォルニアから数か月前にオレゴンに引っ越してきたという、ヒッピー系のカップルが、このヘルシーな料理教室を主宰していた。レシピは後日サインアップした人に送られてくるという事だったが、待ちきれなかった私は次の日に、もう催促のメールを出していた。「早く送ってくれ。」
人見知りであっても、好奇心が勝つのか。シャイであっても、図々しさがそれ上回るのか。
このカップル、JasonMargeauxが「In Plant We Trust」という名で、ケータリングのビジネスをしているのだが、彼らが、あるミュージシャンとコラボで、ヒーリングのセッションとディナーのイベントを行うという事を知った。その名も「Healing Sounds: An Evening of Sound Bath, Meditation, and High Vibrational Food」。
432hz Sounds Bath Joshuaがクリスタルボウルとギターの演奏をして、1時間の「Sound Bath」と瞑想の時間を過ごしたあと、プラントベースのペルー料理を頂く、という趣向。
こういうスピリチュアル系にすぐ反応する私は、行ってみたい、と思った。数年前にクリスタルボウルのサウンドとヨガ、というクラスを受けて非常に感動した事を思い出した。またあの体験をしたい。しかもディナー付き。
興味は大有りなんだけど、まるで70年代のニューエイジ時代に舞い込むようなイベント、一人で行くのは少々心細いなあ、と思った。しかし、こういうのに行きたいと思う友人がいるのか、とも考えた。23人にあたってみたが、皆返事はノー。シャイな私の心は怯んだが、結局はまた好奇心が勝った。
場所はCarioca Bowlsというアサイボウルなどをメインに提供するレストラン。ダイニングエリアとは別に小さな部屋があり、そこに人々が集まった。人々と言っても私を入れて10人ほど。アジア人は私だけ。
皆ヨガマットや、ブランケットに座ったり、横たわったりして自由なスタイルで演奏を聴いている。私はJoshuaの真ん前に陣取って座った。彼が創造するギターとクリスタルの音色は、部屋全体に充満し、身体の中に浸透してくる。まさに「音に浸かっている」という感じだ。音の振動が身体の細胞の振動と同調し、肉体が砂のように分散し、宇宙に広がっていくようなイメージが頭の中に浮かんだ。一人で来ているなどすっかり忘れていた。
セッションの後は、お待ちかねのディナー。パイナップルと昔からの形態をそのまま保持したペルーのパープルコーンを浸けて作った紫色のジュース、マッシュルームのセビーチェ、そしてペルースタイルのキヌワのスープにパープルコーンのトルティーヤ。
ホストのJasonMargeauxが、せっかくいいお天気なんで外で頂きましょう、と皆を表のパテオに促す。そこで初めて我に返る。しまった、友達がいない。急に一人で来ている事が恥ずかしくなった。だけど、この料理を食べずして帰るわけには行かない。
最初はポツンと一人で座っていたテーブルに、2組のカップルがジョインし、自己紹介が始まり、先ほどのセッションの話や、料理の話、ポートランドでの生活の話など、難なく会話が弾み始めた。隣のテーブルから、パテオのガーデンから摘み取った花が回って来た。「食べれる花よ」。少しづつかじって皆に回して行く。ああ、どこまでヒッピーなんだこの人達。最後には明日が誕生日だと言う私に、全員がお祝いの歌を歌ってくれた。
私は本当に人見知りのシャイな野郎なのか。それともただそうだと思い込んで来ただけなのか。私の中で、引っ込み思案なところと行動すべし!という部分が、常に共存している。ただ最近確信するのは、シャイな気持ちを打ち勝ち、行動に出ると、良い事がある、という事。間違いなく自分の世界や視野や人間関係が広がっていくし、楽しい。これからも、シャイの芽が顔を出しても、「好奇心」に舵を取らせて行くようにしたい。




Posted on 夕焼け新聞 2017年7月号

おいしい話 No. 121 「ソムリエへの道」


もともとワイン好きではあるけれど、ここ数年その度合いが高まっている。過去3年ほどは毎年数回オレゴンのワイナリー巡りに出かけ、様々な種類のワインを試飲するのを楽しんでいる。街ではワインバーを覗いたり、ワイン専門店のテイスティングイベントに出かけたり、レストランに行けば 未開のワインを試してみたり、と ワインの活動が活発になっている。
「ワインの事をもっと知りたい!」
「ちょっとエラそうな顔しながら ワインの事を語れるようになりたい!」
そんな気持ちが日に日に増していっている。
旅の友は、同じくワインに熱を上げている女友達。二人でワインのある場所に出動しては、内輪で辛口な批評をし、その気になっている。

Meg Ryanの「French Kiss」という映画の中で、相手訳の男性がMeg Ryanにワインのアロマの説明をするシーンがある。チョコレートやら、セイジやら、ベリーやら、ロースマリーなんて名前が出て来る。若い頃その映画を観た私は、トンチンカンだった。 ワインって、ブドウから作るんだよね?製造の工程の中で、ハーブとかチョコレートか入れちゃうわけ? そういうアロマや味を出す為に??? 知らなかったわー。

私のワインの知識はそういう次元から始まった。
今では、一般に普及しているスタンダードなブドウの種類も覚えたし、なんとなく個々の特徴もわかるようになってきた。もちろん、ピーチやら、ストロベリーやら、ブラックペッパーなんていうのは、アロマの描写の表現用語であって、実際に入っているわけではない事も知った。ホッ。

ある日この女友達が、「Robertのクラスを受けに行こうよ!」と言って来た。Robertとは、うちの近所にあるワインバーのオーナーで、ワインのプロ。Court of Master SommelierAdvanced Sommelierの資格を保持し、現在頂点である、Master Sommelierの資格を取ろうとしている。試験の合格率は1%にも満たず、世界でもこの資格を持っているのは200数人だとか。
そんなエベレストの登山は全く望んではいないが、ビギナー向けの一番ベーシックな資格があれば、取ってみたいかも、と思った。
毎週月曜日の夜、Robertのワインバーで、Court of Master Sommelierの資格を取ろうとチャレンジしているワインEnthusiastが集まり、勉強会を兼ねたワインテイスティングが行われている。そこに乗り込もう、という提案だった。

そうねえ、知識の豊富なRobertから色々話を聞きながら、ワインを飲むのもいいかもね。というノリで、私と友達は彼のワインバーに出かけて行った。
9時、一人、また一人、といかにも常連の参加者が店に入って来る。それぞれ紙袋に包んだワインボトルを手にしている。え、ワイン、持ち込み? すっかり提供されるものと思い込み、手ぶらで来た私たちは顔を見合わせた。
全員が揃った所で、皆二階に促される。そこには隠れ部屋のような個室があり、大きな丸いテーブルが置かれている。そのテーブルを囲むように皆が席に着く。なんだかシークレットソサエティーに足を踏み込んだような雰囲気で、私と友達は少々不安な心持ちになり、離れまいと、隣同志に座った。
参加者達は、持ってきたそれぞれのワインをテーブルに置き、Robertが手際よく皆にワイングラスを回す。紙袋は取られる事なく、ワインが注がれていく。ブラインドテイスティングなのだ! 
「じゃあ、僕から行くよ。」ホストのRobertが自分のグラスを持ち上げる。ライトの方に翳し、ワインの色を見る。そこから「Sight」に関する彼の描写が始まる。透明度、明るさ、濃度、色合い、ステイン、粘性、ガスの存在などを挙げて行く。次に、「Nose」。鼻をグラスに突っ込んで匂いを嗅ぐ。グラスをグルグル回してエアーを入れた後また鼻を突っ込む。様々なフルーツの名前や、ハーブの名前が次から次へと出て来る。スモークした木やら、腐ったピーチやら、猫のおしっこまで出て来る。ちょっと待ってよー、Cat peeってぇ。なんて思ってちょっと口を出そうとすると、Hushされた。終わるまで待ってと。Robertは続ける。「Palate」。ワインを口に含み、甘み、渋み、酸味、アルコール度、ボディーにテクスチャーと、味覚の描写が始まる。また一口含み、果物のキャラクターや、バランス、レングス、フィニッシュなどが続く。聞いていなかった友達が質問を投げた。またHush。「さっきも言ったように、質問は終わるまで待って。」は~い、、、。小さくなる私達。
これを3分ぐらいやった後、最後に彼の「Conclusion」が述べられる。国、地域、ヴィンヤード、ブドウの種類、ワイナリーの名前、そして年代、
どうやらこれを一人一人がやるらしい。常連の参加者もそれぞれRobertのように順を追って、長々と描写をしていく。私と友達は再度顔を見合わせる。マズイ、、、。

何に一番驚いたかって、彼らのワインを描写するボキャブラリーの豊富さ。甘い、渋い、ドライ、酸味がある、ぐらいしかボキャの無い私は なんとか振り絞って色々言ってみたが、3本目ぐらいから もうネタ切れ。いきなり「Conclusion」に入り、当てずっぽうで「Pinot Gris2014年!」なんて言う始末。

ソムリエの資格を取ろうと勉強する彼らは、本当に真剣だった。ますますビギナーレベルで充分です、と思う私達。彼らに読むといいと勧められた教材は「Wine Bible」。これを手に、ソムリエではなく、Level 1Introductory」(合格率90%)習得へ向けて頑張りたいと思う。



Posted on夕焼け新聞 2017年6月号

おいしい話 No. 120 「スパイスガール」


日本では料理に使うスパイスと言えば、コショウ、ニンニク、ショウガ、赤唐辛子の範囲で留まっている。ワサビやカラシはクックするというよりも、食べる時に付け合わせる物。サンショウを使う地域もあるが、うちの家庭は馴染みがなかった。
Food Networkの番組を見ていると、料理の材料に様々なスパイスが使われている事を知る。バーベキュー用の肉にまぶすスパイスや、手造りのソーセージに、煮込みスープや 色々なタイプのソースなど、聞いた事もないスパイスが入る。うちの家庭料理では見ることもなかった異国のスパイス達。 私にとってそれは未知の存在で、習った事のない数式を見せられているようだった。
例えば、バーベキュー用の肉にすりこむDry rubは、クミン、パプリカ、ガーリックパウダー、オニオンパウダー、チリペッパー、カイアンペッパー。これにブラウンシュガーやソルトが加えられる。ソーセージにはパプリカ、ガーリックパウダー、フェンネルシード、ブラックペッパー、ソルト、レッドペッパー。サーモンのBlackendにはパプリカ、カイアンペッパー、オニオンパウダー、ホワイト&ブラックペッパー、タイム、バシル、オレガノ、ソルトなど。なぜその組み合わせ? そしてその調合の割合に?
中国には「チャイニーズ ファイブ スパイス」というのがあるらしい。シナモン、クローブ、フェンネルシード、スターアニス、そしてセチュアン ペッパーコーン。たぶん日本の料理の「さしすせそ」のような、中華料理の基本の調味料なのだろう。 
中国4千年の時間をかけて、構築された組み合わせか。
ウィッキベディアによると、紀元前2000年頃には既に東南アジアや中東でスパイスのトレードが行われていたようだ。主に味付けや染色に、そして また食べ物の、得に肉類の保存剤としても使われていた。なぜならスパイスには抗菌性の要素が含まれているから。それ故に 時には薬としても使われていた。そういえば、風邪にはハニーレモンのホットドリンクにジンジャー、ターメリック、カイアンペッパーを入れるといいと言うもんね。

うーん、スパイスにどんどん興味が湧いてくる。
特にスパイスが身体にいいと聞くと、もっとスパイスの事を学び、一つ一つの特徴を知りたくなる。そしてそれらを日常の料理に難なく使えたらどんなにいいだろう。
スパイスを知りたい!スパイスガールになりたい! と思った。

さて、スパイスの事を知ろうという第一歩の所で、口がアングリする発見があった。それは「カレーパウダー」はスパイスの一つ、ではない、という事実。
カレーパウダーも 一個のスパイスで、このカレーパウダーというスパイスを入れるからカレー味になるのだと思っていた私。まさか多種のスパイスの組み合わせだったとは。(こんな驚きをしているのは、私だけ???)


であれば、スパイスガールになる最初のステップとして、自分でカレーパウダーを作ってやろうじゃないの、と思った。
スーパーの棚に並ぶカレーパウダーを手に取り、材料をチェックする。本当に色んなスパイスの名前が並んでるわ。コリアンダー、ターメリック、ジンジャー、フェンネルシード、クミン、ブラックペッパー、ソルト、ガーリック、チリ、フェヌグリークシード。インターネットのレシピを見てみると、これにマスタード、シナモン、クローブ、カーダモンなどが入ったりもする。
メイソンジャーに 一つ一つのスパイスを計量スプーンで量りながら入れる。ちょっと指で舐めてみたが、どれとしてカレーの味はしない。全部入れた後に蓋をしてよく振ると、カレーパウダーの黄色い色になった。そして蓋を開けて匂いを嗅ぐと、ちゃんとカレーの匂いがするではないか! 不思議だわぁ。

その日からカレー料理が続く。カレー味の野菜炒め、カレー味の麦ごはんチャーハン、ココナッツミルクを使ったイエローカレー、そして 大麦と野菜のカレースープ。カレーのスパイスが野菜の甘みをうまい具合に引き出すから、野菜が美味しく、モリモリ沢山食べられる。野菜の栄養と、スパイスの健康効果が一石二鳥で得られるカレーパウダー。素晴らしいスパイスの調合品だわ!

4日目にトイレに行くと、黄色い絵の具を水で溶いたようなおしっこが出た。あれ、ちょっとやり過ぎたかしら。いくら身体にいいからって、立て続けは良くないかったかも。
さて、次はどうするスパイスガール? 貰ったサーモンがあるから、Blackend用のRubでも調合するか。
プロのステージに立つまでに、長い実験の道は続きそうだ。



Posted on夕焼け新聞 2017年5月号