もともとワイン好きではあるけれど、ここ数年その度合いが高まっている。過去3年ほどは毎年数回オレゴンのワイナリー巡りに出かけ、様々な種類のワインを試飲するのを楽しんでいる。街ではワインバーを覗いたり、ワイン専門店のテイスティングイベントに出かけたり、レストランに行けば 未開のワインを試してみたり、と ワインの活動が活発になっている。
「ワインの事をもっと知りたい!」
「ちょっとエラそうな顔しながら ワインの事を語れるようになりたい!」
そんな気持ちが日に日に増していっている。
旅の友は、同じくワインに熱を上げている女友達。二人でワインのある場所に出動しては、内輪で辛口な批評をし、その気になっている。
Meg
Ryanの「French Kiss」という映画の中で、相手訳の男性がMeg Ryanにワインのアロマの説明をするシーンがある。チョコレートやら、セイジやら、ベリーやら、ロースマリーなんて名前が出て来る。若い頃その映画を観た私は、トンチンカンだった。 ワインって、ブドウから作るんだよね?製造の工程の中で、ハーブとかチョコレートか入れちゃうわけ? そういうアロマや味を出す為に??? 知らなかったわー。
私のワインの知識はそういう次元から始まった。
今では、一般に普及しているスタンダードなブドウの種類も覚えたし、なんとなく個々の特徴もわかるようになってきた。もちろん、ピーチやら、ストロベリーやら、ブラックペッパーなんていうのは、アロマの描写の表現用語であって、実際に入っているわけではない事も知った。ホッ。
ある日この女友達が、「Robertのクラスを受けに行こうよ!」と言って来た。Robertとは、うちの近所にあるワインバーのオーナーで、ワインのプロ。Court
of Master SommelierのAdvanced Sommelierの資格を保持し、現在頂点である、Master
Sommelierの資格を取ろうとしている。試験の合格率は1%にも満たず、世界でもこの資格を持っているのは200数人だとか。
そんなエベレストの登山は全く望んではいないが、ビギナー向けの一番ベーシックな資格があれば、取ってみたいかも、と思った。
毎週月曜日の夜、Robertのワインバーで、Court
of Master Sommelierの資格を取ろうとチャレンジしているワインEnthusiastが集まり、勉強会を兼ねたワインテイスティングが行われている。そこに乗り込もう、という提案だった。
そうねえ、知識の豊富なRobertから色々話を聞きながら、ワインを飲むのもいいかもね。というノリで、私と友達は彼のワインバーに出かけて行った。
夜9時、一人、また一人、といかにも常連の参加者が店に入って来る。それぞれ紙袋に包んだワインボトルを手にしている。え、ワイン、持ち込み? すっかり提供されるものと思い込み、手ぶらで来た私たちは顔を見合わせた。
全員が揃った所で、皆二階に促される。そこには隠れ部屋のような個室があり、大きな丸いテーブルが置かれている。そのテーブルを囲むように皆が席に着く。なんだかシークレットソサエティーに足を踏み込んだような雰囲気で、私と友達は少々不安な心持ちになり、離れまいと、隣同志に座った。
参加者達は、持ってきたそれぞれのワインをテーブルに置き、Robertが手際よく皆にワイングラスを回す。紙袋は取られる事なく、ワインが注がれていく。ブラインドテイスティングなのだ!
「じゃあ、僕から行くよ。」ホストのRobertが自分のグラスを持ち上げる。ライトの方に翳し、ワインの色を見る。そこから「Sight」に関する彼の描写が始まる。透明度、明るさ、濃度、色合い、ステイン、粘性、ガスの存在などを挙げて行く。次に、「Nose」。鼻をグラスに突っ込んで匂いを嗅ぐ。グラスをグルグル回してエアーを入れた後また鼻を突っ込む。様々なフルーツの名前や、ハーブの名前が次から次へと出て来る。スモークした木やら、腐ったピーチやら、猫のおしっこまで出て来る。ちょっと待ってよー、Cat
peeってぇ。なんて思ってちょっと口を出そうとすると、Hushされた。終わるまで待ってと。Robertは続ける。「Palate」。ワインを口に含み、甘み、渋み、酸味、アルコール度、ボディーにテクスチャーと、味覚の描写が始まる。また一口含み、果物のキャラクターや、バランス、レングス、フィニッシュなどが続く。聞いていなかった友達が質問を投げた。またHush。「さっきも言ったように、質問は終わるまで待って。」は~い、、、。小さくなる私達。
これを3分ぐらいやった後、最後に彼の「Conclusion」が述べられる。国、地域、ヴィンヤード、ブドウの種類、ワイナリーの名前、そして年代、
どうやらこれを一人一人がやるらしい。常連の参加者もそれぞれRobertのように順を追って、長々と描写をしていく。私と友達は再度顔を見合わせる。マズイ、、、。
何に一番驚いたかって、彼らのワインを描写するボキャブラリーの豊富さ。甘い、渋い、ドライ、酸味がある、ぐらいしかボキャの無い私は なんとか振り絞って色々言ってみたが、3本目ぐらいから もうネタ切れ。いきなり「Conclusion」に入り、当てずっぽうで「Pinot
Gris、2014年!」なんて言う始末。
ソムリエの資格を取ろうと勉強する彼らは、本当に真剣だった。ますますビギナーレベルで充分です、と思う私達。彼らに読むといいと勧められた教材は「Wine
Bible」。これを手に、ソムリエではなく、Level 1「Introductory」(合格率90%)習得へ向けて頑張りたいと思う。
Posted on夕焼け新聞 2017年6月号
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