私は昔から引っ込み思案で、人見知りをする人間だと思っていた。子供の頃から母親に「あんたは甘えの人見知り」、とよく言われていた。だから、そうなんだと信じていた。でも、ふと思った。シャイな人間が一人でアメリカに移住するか? 一人で趣味のクラスにサインアップするか? 一人でバーやレストランに行くか?
この間も、友達の知り合いの人に誘われて
お料理教室に行って来た。間に入っている友達は行かなかったのに。そのお料理教室で、参加者全員が順番に自己紹介をした。アメリカで見知らぬ人が集うと必ずあるパターン。大の苦手。なのに声を張り上げて結構プライベートな事までベラベラ喋っている自分がいた。
オーガニックのプラントベースの料理はとても美味しかった。ズッキーニ スパゲティーにカシューナッツのクリームソース、ウオルナッツのブラウニー、そしてジンジャービアー。カリフォルニアから数か月前にオレゴンに引っ越してきたという、ヒッピー系のカップルが、このヘルシーな料理教室を主宰していた。レシピは後日サインアップした人に送られてくるという事だったが、待ちきれなかった私は次の日に、もう催促のメールを出していた。「早く送ってくれ。」
人見知りであっても、好奇心が勝つのか。シャイであっても、図々しさがそれ上回るのか。
このカップル、JasonとMargeauxが「In
Plant We Trust」という名で、ケータリングのビジネスをしているのだが、彼らが、あるミュージシャンとコラボで、ヒーリングのセッションとディナーのイベントを行うという事を知った。その名も「Healing
Sounds: An Evening of Sound Bath, Meditation, and High Vibrational Food」。
432hz
Sounds Bath のJoshuaがクリスタルボウルとギターの演奏をして、1時間の「Sound
Bath」と瞑想の時間を過ごしたあと、プラントベースのペルー料理を頂く、という趣向。
こういうスピリチュアル系にすぐ反応する私は、行ってみたい、と思った。数年前にクリスタルボウルのサウンドとヨガ、というクラスを受けて非常に感動した事を思い出した。またあの体験をしたい。しかもディナー付き。
興味は大有りなんだけど、まるで70年代のニューエイジ時代に舞い込むようなイベント、一人で行くのは少々心細いなあ、と思った。しかし、こういうのに行きたいと思う友人がいるのか、とも考えた。2、3人にあたってみたが、皆返事はノー。シャイな私の心は怯んだが、結局はまた好奇心が勝った。
場所はCarioca
Bowlsというアサイボウルなどをメインに提供するレストラン。ダイニングエリアとは別に小さな部屋があり、そこに人々が集まった。人々と言っても私を入れて10人ほど。アジア人は私だけ。
皆ヨガマットや、ブランケットに座ったり、横たわったりして自由なスタイルで演奏を聴いている。私はJoshuaの真ん前に陣取って座った。彼が創造するギターとクリスタルの音色は、部屋全体に充満し、身体の中に浸透してくる。まさに「音に浸かっている」という感じだ。音の振動が身体の細胞の振動と同調し、肉体が砂のように分散し、宇宙に広がっていくようなイメージが頭の中に浮かんだ。一人で来ているなどすっかり忘れていた。
セッションの後は、お待ちかねのディナー。パイナップルと昔からの形態をそのまま保持したペルーのパープルコーンを浸けて作った紫色のジュース、マッシュルームのセビーチェ、そしてペルースタイルのキヌワのスープにパープルコーンのトルティーヤ。
ホストのJasonとMargeauxが、せっかくいいお天気なんで外で頂きましょう、と皆を表のパテオに促す。そこで初めて我に返る。しまった、友達がいない。急に一人で来ている事が恥ずかしくなった。だけど、この料理を食べずして帰るわけには行かない。
最初はポツンと一人で座っていたテーブルに、2組のカップルがジョインし、自己紹介が始まり、先ほどのセッションの話や、料理の話、ポートランドでの生活の話など、難なく会話が弾み始めた。隣のテーブルから、パテオのガーデンから摘み取った花が回って来た。「食べれる花よ」。少しづつかじって皆に回して行く。ああ、どこまでヒッピーなんだこの人達。最後には明日が誕生日だと言う私に、全員がお祝いの歌を歌ってくれた。
私は本当に人見知りのシャイな野郎なのか。それともただそうだと思い込んで来ただけなのか。私の中で、引っ込み思案なところと行動すべし!という部分が、常に共存している。ただ最近確信するのは、シャイな気持ちを打ち勝ち、行動に出ると、良い事がある、という事。間違いなく自分の世界や視野や人間関係が広がっていくし、楽しい。これからも、シャイの芽が顔を出しても、「好奇心」に舵を取らせて行くようにしたい。
Posted on 夕焼け新聞 2017年7月号
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