Saturday, January 6, 2018

おいしい話 No. 127 「We Got Tipsy in Portland」


Portlandに住んでいて、Portlandを巡るツアーに行った事がある人はそんなにいないだろう。ましてや職場がダウンタウンで、普段から街中をウロウロしているなら、尚更ダウンタウンのツアーなどには行こうとは思わないだろう。
先日Portland Walking Toursでガイドをしている知り合いから、翌日のツアーにキャンセルが出たから興味があったらおいでと誘われた。「It’s free!」
知り尽くしていると思っている界隈でも、その魔法の言葉を聞いたら 考えないわけにはいかない。
この会社は 基本「Walking tour」で、ダウンタウンを歩いて回るツアーを行っている。Portlandiaの銅像から 世界で一番小さい公園を巡るツアーやら、アンダーグラウンドツアー、レストランを回るフードテイスティングのツアーなど様々。今回彼が誘ってくれたのは、「We Got Tipsy in Portland Tour」と言って、何軒かのバーをテイスティングしながら回るツアー。Thanksgiving後の飲んで食べ疲れた翌日にまた飲み歩きかい!と思ったが、魔法の言葉はパワフルすぎた。

午後1時半の出発に合わせ、この会社のオフィスがあるPioneer Courthouse Squareに集合。他の参加者はWisconsinから来た6人のグループとNew Yorkから来たギャル2人。スタートはBroadwayにある「Oregon Wines on Broadway」から。この店は私がPortlandに移って来た時からある。現オーナーが大学を卒業して間もなく、職探しをしている時に見つけたWine bar。働き始めて半年経った時、当時のオーナーが店を閉めると言い出した。まだワインの事などわからなかった彼女だが、両親の助けを借りて買い取った。それからもう17年が経ち、彼女も立派なワインエキスパートに成長したようだ。テイスティングはもちろんOregon産のPinot NoirPinot Gris

少しスナックを、と言う事で、Alder10thにあるフードカートに立ち寄った。「Altengartz」という本格的ジャーマンスタイルのBratwurstのホットドック屋さん。自家製のソーセージは期待をはるかに上回る美味しさで、ちょっとびっくり。Wisconsinから来たグループも「Approved」と笑顔で判を押していた。

次に向かったのが、Oregonで最も歴史が古く規模が大きいとされる蒸留酒の会社「Rose City Distilling」のテイスティングルーム。ここではGin, Vodka, Whiskey, Rumのサンプルを用意してくれていた。私が気に入ったのは、オレゴン産のLemongrass, Juniper, そしてBlood orangeの皮を使ったGinGinはそんなに好きではないのに「これはいける」と思った。それから、BourbonSherryの「Double Barrel」で寝かされたWhiskey。まろやかでエレガントな味わいが非常によかった。

パーホッピングは始まったばかり。ワイン、ハードリカーと来たら次はビール。Chrystal Ballroomの下にある「Ringlers Pub」でCrystal BreweryRuby, Terminator Stout, Hammerhead3種類のビールを頂く。Rubyは薄いピンク色をしており、グレープフルーツのようなシトラス系の味がするが、実はオレゴン産のMarionberryだとか。もう何度も飲んでるビールなのに、その事実を今回初めて知った。Stoutはローストしたコーヒーの味わいがあるダークビールで Hammerheadはホップの苦味が聞いたIPA。毎日2時からBreweryのツアーがあってChrystal Ballroomの建物の歴史も学べるとか。数々の有名なアーティストがここで演奏をして来たようだが、Jimi HendrixLittle Richardというバンドで演奏中、あまりに自分本位なギターのプレーをしすぎて、ショーの途中でクビになったという逸話があるらしい。

Ringlers Pub」を出たかと思いきや、また数秒歩いた先にある「Ringlers Annex Bar」に入る。狭い階段を降り、プラステックのカーテンを開けて足を踏み入れると、そこは暗い地下のバー。ストリートの丁度真下に存在し、隠れ家のような秘密な雰囲気が漂う。そこでこのツアーの為に特別に作ってくれたWhiskeyのカクテルを頂き、NYのギャル達が食べたいと訴えていたトリュフのオイルで風味を付けたフレンチフライをオーダーしてもらった。徐々にツアーの皆のおしゃべりの声が大きくなってきた。

ここからPearl Districtに向かう。そこには今盛り上がっているサイダーのお店、「Cider Bite」がある。OR産だけでなく、WAや、NY, CA産なども含め32種類ものサイダーが揃っており、フライトなどで複数の種類をテイストする事ができる。私達はお店の人が選んだ4種類のサイダーを味見した。個人的には普段は好まないが、どれも美味しく飲めた。Gluten freeの人やサイダー好きにはたまらないバーだろう。

この辺りで、本当に「We got tipsy」になって来た参加者達。真っ赤な顔で ニコニコ上機嫌である。「Tipsy」が丁度いいあんばいで、「Drunk」や「Wasted」になる前に、スケジュール通りこのテイスティングツアーはここで終了。
こうやって違う州から来た人達と一緒に、Portlandの街を違う角度から体験するのも楽しいもんだと思った。Portland Walking Tour。いつかりょっこり参加してみれば?

                                                                                           

Portland Walking Tours

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Posted on 夕焼け新聞 2017年12月号





おいしい話 No. 126 「Immersion Blender」


キッチン用品で 画期的な器具はいろいろあるけれど、Immersion Blenderはそのトップの位置に着くと思う。
Food Processorも素晴らしいが、問題は、一度鍋で煮たものをFood Processorで砕く作業の場合、それが少々冷めるまで待たなくてはならず、少しつづ分けて移す際に、汁やらかけらがこぼれてキッチンカウンターが汚れ、最後に流しが大きな洗い物で埋まる、という面倒な事になる。それを考えると、Food Processorを使う料理は ちょっと悩んでしまう。

ある日Food Networkの番組を見ていたら、簡単な野菜スープの作り方を紹介していた。鍋にニンニクとオリーブオイルを入れ軽く炒めた後、玉ねぎ、イエロースクワッシュ、人参を入れて更に炒める。野菜のスープストックを入れて、カレーパウダーと塩で味付けをして、野菜が柔らかくなるまで煮る。そして、この時番組のシェフが手にしたのが、Immersion Blender。それを粗熱が取れるのを待つ事もなく鍋に突っ込む。ウィーンという音と共に中の具材がどんどん砕けブレンドされていく。そして、Viola!クリーミーなスープがあっと言う間ににできあがった。Immersion Blenderは ブレンダーの部分を取り外し、ささっと洗うだけ。汚れ物は一個の鍋だけ。
「これだぁー!」

すごい発明器具を見せられた私は もう落ち着かない。
早速Googleで検索。Top 5 Best Immersion Blender of 2017の中で一番最初に挙げられていたのが、CuisinartSmart Stickというやつ。Reviewではシンプルで扱いやすくお値段もお手頃だけど、きちんとした仕事しまっせ、とあった。
お手頃の値段ていくらよ。Amazonに行ってみる。Cuisinart CSB-75BC Smart Stick 200 Watt 2 Speed Hand Blenderの商品名で$27.99$28.72$29.71$34.95と値段が違う。何この微妙な違いは?? よーく見ると、色で価格分けされている。一番高いのは「White Pearl」の$95.48。同じ商品だよね?? 意味がわからない、とブツブツ言いながら、一番安い白$27.99を注文。仕事が同じなら何色でもよろし!

届いた現物はコンパクトで収納しやすい大きさだった。付いて来た取り扱い説明書にはレシピも色々紹介されてる。スープはもちろん、スムージーにドレッシング、ディップやスプレッド系も作れるとある。が、まず最初に作りたいのは あの番組で紹介されていた野菜スープ。もうどんな味なのか知りたくてしょうがない。Food Networkのサイトに行き、レシピを再確認。すぐさま材料を買って調理にとりかかった。
しかし、新品のImmersion Blender、、、。初心者が初めてお手本なしで電動ノコギリを使うような感じ。ちょっと コワい、、、。

そこでImmersion Blender使用歴数年の友達に来てもらった。
彼女のブレンダーも私と同じブランドだと知ってホッとする。全てを任せられる、と思った。
さすがベテラン。躊躇なくブレンダーを鍋に突っ込む。ウィーンという音と共に鍋の内側をゆっくりかき回すように動かす。具材の中にブレンダーの先を入れてからスイッチをオン、出す前にオフ、としないと出し入れの際にそこら中に飛び散るからね。それから、鍋の底に吸い込まるような力が働くから、それに逆らうようにしっかり持つ事。そうでないと 気が付いたら底の方ばかりを撹拌している状態になるよ、とコツを教わった。ナルホド。ホント来てもらってよかったわぁ。
1.2分で具材が全てスムーズに分解された。すごい!テレビで見たのと同じ状態になった!
「ベビーフードみたいだよね。」
友達のその一言でハッとする。ホントだ。Immersion Blender、ホームメイドのベビーフードに最適じゃん! 簡単にちゃちゃっと栄養のある食事ができちゃう。茹でたほうれん草とか人参を これでつぶしちゃえばいいんでしょ。赤ちゃんがいるわけでもないのに このマシーンの用途の広さに興奮してきた。
あと風邪を引いた時なんかも、こうやってなんでもスープ状にしちゃえば 口通りもいいし、消化器官にも優しい。
最近、皮に栄養があるから なるだけ皮を剥かいないで食べましょうと言う声を聞く。トマトソースもトマトの湯剥きなんて面倒臭い事しなくても、こうやってImmersion Blenderを使えば何のこたあない。カボチャのスープだって皮付きでOKよ。

いったい誰がこのマシーンを発明したのか。私のように、洗い物をしたくない主婦に間違いない。とにかく鍋一つで全てが片付くというのは 画期的よ。
ガタイが良くてどっしりと座る私のFood Processor。しばらく戸棚の中で休憩してもらう事になりそうだわ。





Posted on 夕焼け新聞 2017年11月号

おいしい話 No. 125 「旬のデザート」


あっと言う間に、すっかり秋になっちゃったポートランド。味覚の季節になりました。味覚の秋と言っても、アメリカにいると旬のサンマやタケノコが身近な所で手に入るわけでもなく、栗拾いに行って栗ご飯を炊くわけでもなく。ファーマーズマーケットで一瞬現れる松茸を買ってきて、炊き込みご飯とお吸い物を作るだけ。しかも 一回きり。なんかバラエティーがない。芋も、スクワッシュも、カボチャも、秋だからと言って特別エキサイトするシロモノでもなく。
つまんないとぼやいている私に、友達が手作りのパイをご馳走してくれた。
ご近所さんの庭になる梨を沢山貰ったから、梨のパイを焼いてみた、と。
ああ、梨!
そう言えば、梨も秋の果物ではないか。そのパイは、大振りに切った梨とシナモンの風味が上手く絡み合い、素晴らしい秋のハーモニーを奏でていた。
美味しい! 
旬の果物を使ったパイとは、甘い物をそもそも食べない私にとって論外の話だった。
これほどまでに秋を感じる食べ物があるだろうか!といきなり感動。

しかし、パイ作りからはほど遠い所にいると思っていた彼女が、こんなに美味しいパイを作ったなんて信じられない。私にとって家でパンやデザートを作るという事は立ち入り禁止エリアに無理矢理入ろうとする行為と同じだと思っていた。高いフェンスを一生懸命時間と労力をかけてよじ登った後、電動線で大火傷を負って無様な姿で転落する。だからそこは私のテリトリーではないとずっと思っていた。
特にパイ生地。材料はシンプルな癖に、そう簡単には成功できない。それが私のパイ生地に対する印象。パイ生地から自分で作らなけらばならないと思うと、もうそこで挑戦の意欲が無くなる。
「パイ生地はねー、Grand Centralで買ってくるのよー。それでね、中身だけ作って入れて焼くだけ―。だから、実はものすごく簡単なのよー。」
どうしても彼女がせっせとパイ生地を練っている姿を想像できなかったが、納得。難関門のパイ生地作りをスキップしていたわけね。プロが作ったパイ生地を買う事ができるなら、そんな手っ取り早くて楽な事はない。一気にやる気が出て来た。

早速近所のGrand Centralに出向き、例のパイ生地を買ってきた。すでに丸いアルミのパイ皿に生地が敷かれ、淵もキレイに山が作られていた。前出の友達から おすそ分けで貰ってきた梨とリンゴを袋から取り出す。自然に成った果物のいびつな形が、妙にチャーミングで良い。匂いを嗅ぎながら「秋だわぁー」とひたる。教えてもらったレシピで準備を進める。さあまた、私の新たな挑戦が始まるぞ。

せっかく貰ってきたのだから、梨もリンゴも両方入れちゃえ、と全部の皮を剥き、スライスする。白い砂糖の代わりにココナッツシュガー、普通の小麦粉の代わりにスペルト小麦を使い、岩塩、シナモン、レモンゼストと混ぜてミックスを作る。レシピにはこのミックスをパイに並べた梨の上にかける、と書いてあったが、スライスした梨とリンゴのボールに一先ず入れて混ぜる。それをパイ生地に並べ、バターのかけらをを点々と並べ、レモン汁をかけてオーブンに入れて約50分ほど焼く。

暫くすると、シナモンの甘い香りが部屋中に立ち込め始める。窓の外にはグレイな秋の風景、温かい部屋の中は ベイク中のパイの香り。これだけで、なんて、Cozyで幸せな気持ちになれることでしょう。夏が終わってしまった事は悲しいけれど、秋は秋でいいものよね、という気持ちになれる。

オーブンから出したパイは溶けたミックスと果汁が交わり、クツクツと煮立っている。うまそー。これを23時間寝かせて冷ます。私の人生初パイができた!(パイ生地作りはまたそのうちという事で、、、。)
昔の人は果物を焼こうなんてよく思い付いたものね。でも秋が旬の果物がわんさか成るのをどうするかで浮かんだアイデアなんだろう。そしてシナモンとの抜群な相性を生み出し、今では定番のデザートになっている。
包丁をいれて切り出した梨&リンゴのパイは、店で売っているかのような見栄え。そして サクッとした歯ごたえがまだ残る果物と完璧なクラストと甘いソースが上手くからまって、初めてとは思えない出来上がり。なんて簡単なの!

今度はこれにレーズンとクルミを混ぜて焼いたらどうだろう。それからちょびっとラム酒なんか垂らしてみて。そう思うとまたGrand Centralに走りたくなる。いや、癖になるわコレ。デザート部門に新しいレパートリーが出来た。そんな喜びを噛みしめる秋の夜長である。






Posted on 夕焼け新聞 2017年10月号

Monday, September 18, 2017

おいしい話 No. 124「カリフラワー ビザ クラスト」


野菜の食べ方も進化したものだ。
世の中がヘルスコンシャスになっている昨今は、その料理方法も豊富。
皆色々アイデアが浮かぶものよね。
特に最近の注目は、カリフラワー。茹でたり焼いたり炒めたりだけではなく、ピュレーにしてスープにしたり、マッシュしてマッシュドポテトの代替にしたり、細かく刻んでライスの代替にしたり! 
先日、Food Networkで ある料理番組を見ていたら、カリフラワーを使ったビザ クラストの作り方を紹介していた。ピザ クラストまでカリフラワーで作るなんて。Who comes up with it!!? 
早速グーグルしてみた。そしたら沢山のサイトでカリフラワーのピザ クラストの作り方が紹介されていた。面白い事に、どのサイトも調味料や分量に差異があるとしても、基本的に同じやり方なのだ。カリフラワーをブレンダーでライス状にし、それを茹で、最後に布巾を使って水分を絞り取り、調味料を加えてクラスト状に形を作りオーブンで焼く、という手順。
興味をそそられた私は、早速一つのサイトのレシピを手本に、作ってみる事にした。

まずカリフラワーをブレンダーで細かくし、たっぷりのお湯で茹でる。ザルに上げたカリフラワーは本当に炊いたお米のようだった。(これで納豆ご飯にしようとは思わないが。)これを布巾で包んで絞る。コツは固―く絞り、水気を限りなく切る、と書いてある。ここで自慢の腕の筋肉が使われるわけだが、どんなに頑張っても完全に水分を切る事ができない。もういい加減腕が疲れたところでボールに移し、調味料を入れて混ぜる。モッツァレラチーズとパルメザンチーズ、オレガノ、塩、ガーリックパウダーに卵。これらがしっかり混ざった後、クッキングシートを敷いたピザパンに、ピザ クラストのように薄い円形に形を作り、400度(F)のオーブンで約20分ほど焼く。その後好きなトッピングを乗せ、再び10分ほど焼くと、Ta-dah! ピザの出来上がり。

これがなかなかイケるのである。三角に切ったクラストが壊れる事なくちゃんと持ち上がる! そしてシンプルで控えめなカリフラワーがトッピングのフレーバーを超える事もなく、いい味を出している。すごい!
唯一つ気になったのが、クラストが思ったほどハードでなかった事。やっぱりまだ水気が多かったのかなあ。あんなに必死で絞ったのに、、、。
そこで私は考えた。
カリフラワーを細かくする前に先に茹で、それからブレンダーにかけた方が、ライス状にして茹でるよりも水分が少なくて済むのではないか。
頭イイ! このやり方を載せているレシピはどこのウェブサイトに行っても見当たらない。ここは実験をして 証明してやろうじゃないの。
次の日に またカリフラワーを買ってきた。まずは沸騰するお湯に小分けしたカリフラワーをを入れ、数分茹でる。ザルにとり、水気を切り、今度はライス状にするためにブレンダーに入れる。ブレンダーで回る茹でたカリフラワーは、ライス状にはならず、マッシュドポテトのような状態になっていった。 あれ!??  不安に思いながらも同じ調味料を入れ、ピザの形を作り、同じ温度と時間で焼いた。完成したクラストは、1枚で持ち上げる事ができず、ボロボロと崩れた。
私は考えた。茹でたカリフラワーをブレンダーにかける前に、一旦布巾で絞るべきだったんだ、と。だから水が多くて、マッシュドポテト状になってしまったんだ!
その翌日 またカリフラワーを買って来た。今回は小分けにしたカリフラワーを茹で、布巾で絞った。必至になって絞った。布巾を広げると、ブレンダーにかけるまでもなく、すでにカリフラワーはボロボロに崩れていた。これをブレンダーにかけるとまたマッシュドポテトになると恐れた私は、包丁で細かく刻み「ライス状」にする事にした。Ah-ha! いちいちアイデアが浮かぶあたしはスゴイ。同じく、調味料を入れ、形を作り、オーブンで焼く。
出来上がったクラストはしっかり繋がっていたけれど、食感が荒く、カリフラワーの味が表に出ている。そして、固さに向上はなかった。

自分のアイデアがどんなにクレバーか証明してやろうと思っていたが、実験の結果、オリジナルのレシピのステップを忠実に守る事がベストである、という結論に至った。どうりでそれ以外のやり方のレシピが見つからないはずだ。やっぱし、料理研究家達が、すでに実験済みなのだと思われる。

この数日毎日ピザつくめ。いやー食べ過ぎだよ ピザばかり。そう落ち込みそうになった時、ハッとする。全部野菜じゃーん! そこでギルティ―が少し軽減された。
カリフラワー ピザ クラスト、素晴らしい!



 Posted on 夕焼け新聞 2017年9月号

おいしい話 No. 123 「ご褒美の旅」


人間たまには、自分の事を「よくやった!」「よく頑張った!」と労ってあげなければならない。たまには、ちょいと財布の紐をゆるめて、自分にご馳走を振舞ったり、買い物や旅行に連れ出したり。節目節目で、自分にご褒美をあげる事を忘れてはいけない。だって、自分がやらなくて誰がやってくれるというの。

先日私もある節目を期に、自分にご褒美を進呈した。34日のナパ、ソノマ ワイナリー巡りの旅。「You deserve this!」と自分に言いながら。

ワインにハマっている最近の私は、カリフォルニアのワインを知らずして USA産ワインの知ったかぶりはできぬ、と思っていた。ワシントンもオレゴンも数々のワイナリーに行って取り敢えず「知っているつもり」でいる。でも カリフォルニアのワイナリーにはまだ行った事がない。それ故 カリフォルニアのワインを知っているとは言えないのである。というロジックが この旅行の理由。

同じくワインにハマっている女友達に声を掛けると、二つ返事でノリノリのOK。早速フライトとホテルをブッキング。そして言わずと知れて行くべきナパ、ソノマ。何にも知らない初心者の私達は、初回はツアーに任せる事にした。

1日目は San Francisco Shuttle ToursOpen Top Napa Sprinter Tourでナパへ。
9時にサンフランシスコのフェリービルディングに集合。ガイドのKyraが最初に訪れるワイナリーがDomain Chandonであると言うのを聞いた時は、友達と湧き上がった。ゴールデンゲートブリッジを渡った所にある展望所で、10分ほどトイレ休憩と写真撮影。まさに霧のサンフランシスコ。橋が半分見えない。しかも強烈に寒い。
しかし、ナパに入るや否や、青空が広がり、ツアーバスのトップが全開になり、気持ちのいい風に吹かれるオープンカーのドライブとなった。
Domain Chandonで 期待のテイスティング。いやお兄さんが注ぐ注ぐ。普通のテイスティングのケチった注ぎ方ではなかった。カリフォルニア流か? 朝からコートヤードにあるテーブルで美味しいスパークリングワインを頂くなんて、ああこれがバケーションという事なのよねー、と顔がゆるゆる。
ナパは小さいワインカントリーのイメージがあったけど、やっぱりカリフォルニア。走っても走っても、ハイウエイの両サイドに 広大なヴィンヤードが果てしなく続いていく。USA産のワインの90%以上がカリフォルニアで作られているというの、納得できる。
次に訪れたのは V. Sattui Winery。ここのテイスティングは 50種類ほどあるワインのリストから自分達が試したいのを5種類選べるという。でも私達、サーブしてくれる女性と気が合い、話しているうちにアレも、コレもと次々にワインを注いでくれ、少なくとも10種類は飲んだと思う。ここのワイナリーには新鮮な料理やチーズを売っているデリがあり、渡されたチケットでランチを買い、外のガーデンでピクニックをした。
この後、Heitz CellarsSt. Clair Brown Brewery & Wineryに。St. Clairはクラフトビールもあり、ワインと一緒にテイスティングした。
サンフランシスコへの帰りは ゴールデンゲートブリッジを渡らずフェリーで。アルカトラス島を横目に、ベイブリッジとダウンタウンのパノラマに向かう光景は素晴らしかった。

翌日はGreen Dream ToursActivity Sonoma Valley Tourでソノマへ。ホテルにピックアップに来てくれたのは、いかにもカリフォルニアンな軽いノリのお兄ちゃん、Dylan。カナダから来たもう一組のカップルと共に出発。ソノマは、Robledo Family WineryLarson Family Winery、そして Nicholson Ranch3件を回った。それぞれがプライベートワインテイスティングのセッティングをして私達を迎えてくれた。
今回の旅で、カリフォルニアのPinot Noirを期待していたけれど、以外に、Chardonnayを見直す事になった。Larsonでのランチピクニックの時に、カナダのカップルと皆が気に入ったChardonnayを一本買ってシェアをした。
その後、ソノマの可愛い街を1時間ほど散策。ウィンドショッピングをしたりアイスクリームを食べたり。
最後のNicholson Ranchでは ワイングラスを片手にヴィンヤードを歩き、担当の人がワイナリーの歴史やカリフォルニアワインの話をしてくれた。この日もまた最高の天気で、気持ちが良かった。Dylanがホテルまで送ってくれた最に、こっそりLarsonで買っていたChardonnayのボトルを私達にギフトにとくれた。How sweet

オンラインで当てずっぽうに選んだツアーだったけど、両日共、期待を大幅に上回る大満足の楽しいツアーだった。これでカリフォルニアワインも語れるようになったし、気分はリフレッシュされたし、今回の自分へのご褒美は高得点をあげたい。


San Francisco Shuttle Tours

Green Dream Tours



Posted on 夕焼け新聞 2017年8月号

おいしい話 No. 122 「好奇心を優先に」


私は昔から引っ込み思案で、人見知りをする人間だと思っていた。子供の頃から母親に「あんたは甘えの人見知り」、とよく言われていた。だから、そうなんだと信じていた。でも、ふと思った。シャイな人間が一人でアメリカに移住するか? 一人で趣味のクラスにサインアップするか? 一人でバーやレストランに行くか?
この間も、友達の知り合いの人に誘われて お料理教室に行って来た。間に入っている友達は行かなかったのに。そのお料理教室で、参加者全員が順番に自己紹介をした。アメリカで見知らぬ人が集うと必ずあるパターン。大の苦手。なのに声を張り上げて結構プライベートな事までベラベラ喋っている自分がいた。
オーガニックのプラントベースの料理はとても美味しかった。ズッキーニ スパゲティーにカシューナッツのクリームソース、ウオルナッツのブラウニー、そしてジンジャービアー。カリフォルニアから数か月前にオレゴンに引っ越してきたという、ヒッピー系のカップルが、このヘルシーな料理教室を主宰していた。レシピは後日サインアップした人に送られてくるという事だったが、待ちきれなかった私は次の日に、もう催促のメールを出していた。「早く送ってくれ。」
人見知りであっても、好奇心が勝つのか。シャイであっても、図々しさがそれ上回るのか。
このカップル、JasonMargeauxが「In Plant We Trust」という名で、ケータリングのビジネスをしているのだが、彼らが、あるミュージシャンとコラボで、ヒーリングのセッションとディナーのイベントを行うという事を知った。その名も「Healing Sounds: An Evening of Sound Bath, Meditation, and High Vibrational Food」。
432hz Sounds Bath Joshuaがクリスタルボウルとギターの演奏をして、1時間の「Sound Bath」と瞑想の時間を過ごしたあと、プラントベースのペルー料理を頂く、という趣向。
こういうスピリチュアル系にすぐ反応する私は、行ってみたい、と思った。数年前にクリスタルボウルのサウンドとヨガ、というクラスを受けて非常に感動した事を思い出した。またあの体験をしたい。しかもディナー付き。
興味は大有りなんだけど、まるで70年代のニューエイジ時代に舞い込むようなイベント、一人で行くのは少々心細いなあ、と思った。しかし、こういうのに行きたいと思う友人がいるのか、とも考えた。23人にあたってみたが、皆返事はノー。シャイな私の心は怯んだが、結局はまた好奇心が勝った。
場所はCarioca Bowlsというアサイボウルなどをメインに提供するレストラン。ダイニングエリアとは別に小さな部屋があり、そこに人々が集まった。人々と言っても私を入れて10人ほど。アジア人は私だけ。
皆ヨガマットや、ブランケットに座ったり、横たわったりして自由なスタイルで演奏を聴いている。私はJoshuaの真ん前に陣取って座った。彼が創造するギターとクリスタルの音色は、部屋全体に充満し、身体の中に浸透してくる。まさに「音に浸かっている」という感じだ。音の振動が身体の細胞の振動と同調し、肉体が砂のように分散し、宇宙に広がっていくようなイメージが頭の中に浮かんだ。一人で来ているなどすっかり忘れていた。
セッションの後は、お待ちかねのディナー。パイナップルと昔からの形態をそのまま保持したペルーのパープルコーンを浸けて作った紫色のジュース、マッシュルームのセビーチェ、そしてペルースタイルのキヌワのスープにパープルコーンのトルティーヤ。
ホストのJasonMargeauxが、せっかくいいお天気なんで外で頂きましょう、と皆を表のパテオに促す。そこで初めて我に返る。しまった、友達がいない。急に一人で来ている事が恥ずかしくなった。だけど、この料理を食べずして帰るわけには行かない。
最初はポツンと一人で座っていたテーブルに、2組のカップルがジョインし、自己紹介が始まり、先ほどのセッションの話や、料理の話、ポートランドでの生活の話など、難なく会話が弾み始めた。隣のテーブルから、パテオのガーデンから摘み取った花が回って来た。「食べれる花よ」。少しづつかじって皆に回して行く。ああ、どこまでヒッピーなんだこの人達。最後には明日が誕生日だと言う私に、全員がお祝いの歌を歌ってくれた。
私は本当に人見知りのシャイな野郎なのか。それともただそうだと思い込んで来ただけなのか。私の中で、引っ込み思案なところと行動すべし!という部分が、常に共存している。ただ最近確信するのは、シャイな気持ちを打ち勝ち、行動に出ると、良い事がある、という事。間違いなく自分の世界や視野や人間関係が広がっていくし、楽しい。これからも、シャイの芽が顔を出しても、「好奇心」に舵を取らせて行くようにしたい。




Posted on 夕焼け新聞 2017年7月号

おいしい話 No. 121 「ソムリエへの道」


もともとワイン好きではあるけれど、ここ数年その度合いが高まっている。過去3年ほどは毎年数回オレゴンのワイナリー巡りに出かけ、様々な種類のワインを試飲するのを楽しんでいる。街ではワインバーを覗いたり、ワイン専門店のテイスティングイベントに出かけたり、レストランに行けば 未開のワインを試してみたり、と ワインの活動が活発になっている。
「ワインの事をもっと知りたい!」
「ちょっとエラそうな顔しながら ワインの事を語れるようになりたい!」
そんな気持ちが日に日に増していっている。
旅の友は、同じくワインに熱を上げている女友達。二人でワインのある場所に出動しては、内輪で辛口な批評をし、その気になっている。

Meg Ryanの「French Kiss」という映画の中で、相手訳の男性がMeg Ryanにワインのアロマの説明をするシーンがある。チョコレートやら、セイジやら、ベリーやら、ロースマリーなんて名前が出て来る。若い頃その映画を観た私は、トンチンカンだった。 ワインって、ブドウから作るんだよね?製造の工程の中で、ハーブとかチョコレートか入れちゃうわけ? そういうアロマや味を出す為に??? 知らなかったわー。

私のワインの知識はそういう次元から始まった。
今では、一般に普及しているスタンダードなブドウの種類も覚えたし、なんとなく個々の特徴もわかるようになってきた。もちろん、ピーチやら、ストロベリーやら、ブラックペッパーなんていうのは、アロマの描写の表現用語であって、実際に入っているわけではない事も知った。ホッ。

ある日この女友達が、「Robertのクラスを受けに行こうよ!」と言って来た。Robertとは、うちの近所にあるワインバーのオーナーで、ワインのプロ。Court of Master SommelierAdvanced Sommelierの資格を保持し、現在頂点である、Master Sommelierの資格を取ろうとしている。試験の合格率は1%にも満たず、世界でもこの資格を持っているのは200数人だとか。
そんなエベレストの登山は全く望んではいないが、ビギナー向けの一番ベーシックな資格があれば、取ってみたいかも、と思った。
毎週月曜日の夜、Robertのワインバーで、Court of Master Sommelierの資格を取ろうとチャレンジしているワインEnthusiastが集まり、勉強会を兼ねたワインテイスティングが行われている。そこに乗り込もう、という提案だった。

そうねえ、知識の豊富なRobertから色々話を聞きながら、ワインを飲むのもいいかもね。というノリで、私と友達は彼のワインバーに出かけて行った。
9時、一人、また一人、といかにも常連の参加者が店に入って来る。それぞれ紙袋に包んだワインボトルを手にしている。え、ワイン、持ち込み? すっかり提供されるものと思い込み、手ぶらで来た私たちは顔を見合わせた。
全員が揃った所で、皆二階に促される。そこには隠れ部屋のような個室があり、大きな丸いテーブルが置かれている。そのテーブルを囲むように皆が席に着く。なんだかシークレットソサエティーに足を踏み込んだような雰囲気で、私と友達は少々不安な心持ちになり、離れまいと、隣同志に座った。
参加者達は、持ってきたそれぞれのワインをテーブルに置き、Robertが手際よく皆にワイングラスを回す。紙袋は取られる事なく、ワインが注がれていく。ブラインドテイスティングなのだ! 
「じゃあ、僕から行くよ。」ホストのRobertが自分のグラスを持ち上げる。ライトの方に翳し、ワインの色を見る。そこから「Sight」に関する彼の描写が始まる。透明度、明るさ、濃度、色合い、ステイン、粘性、ガスの存在などを挙げて行く。次に、「Nose」。鼻をグラスに突っ込んで匂いを嗅ぐ。グラスをグルグル回してエアーを入れた後また鼻を突っ込む。様々なフルーツの名前や、ハーブの名前が次から次へと出て来る。スモークした木やら、腐ったピーチやら、猫のおしっこまで出て来る。ちょっと待ってよー、Cat peeってぇ。なんて思ってちょっと口を出そうとすると、Hushされた。終わるまで待ってと。Robertは続ける。「Palate」。ワインを口に含み、甘み、渋み、酸味、アルコール度、ボディーにテクスチャーと、味覚の描写が始まる。また一口含み、果物のキャラクターや、バランス、レングス、フィニッシュなどが続く。聞いていなかった友達が質問を投げた。またHush。「さっきも言ったように、質問は終わるまで待って。」は~い、、、。小さくなる私達。
これを3分ぐらいやった後、最後に彼の「Conclusion」が述べられる。国、地域、ヴィンヤード、ブドウの種類、ワイナリーの名前、そして年代、
どうやらこれを一人一人がやるらしい。常連の参加者もそれぞれRobertのように順を追って、長々と描写をしていく。私と友達は再度顔を見合わせる。マズイ、、、。

何に一番驚いたかって、彼らのワインを描写するボキャブラリーの豊富さ。甘い、渋い、ドライ、酸味がある、ぐらいしかボキャの無い私は なんとか振り絞って色々言ってみたが、3本目ぐらいから もうネタ切れ。いきなり「Conclusion」に入り、当てずっぽうで「Pinot Gris2014年!」なんて言う始末。

ソムリエの資格を取ろうと勉強する彼らは、本当に真剣だった。ますますビギナーレベルで充分です、と思う私達。彼らに読むといいと勧められた教材は「Wine Bible」。これを手に、ソムリエではなく、Level 1Introductory」(合格率90%)習得へ向けて頑張りたいと思う。



Posted on夕焼け新聞 2017年6月号