Thursday, December 8, 2011

おいしい話 No. 38「メキシコ家族旅行」

ここ数年、年に一回、ハビーの両親と弟と一緒にメキシコに家族旅行に行くのが恒例になってきた。私が一番最初に参加したのは 付き合い始めて半年、まだ結婚などの話が出る前で、ハビーの両親には1回しか会ったことがなかった。つまり2回目のご対面で、いきなり家族旅行に参加してしまったわけ。さすが、アメリカ人の心の大きさは大陸の大きさのようです。
カルチャーの違いというか、1回しか会ったことないのに、もう家族旅行に参加してしまった私は 緊張して、どういう行動に出てよいものかと、いつもドギマギしていた。プラス、初めてのメキシコ旅行で 言葉も土地感覚も全くなかった私は、ただひたすら、自分が何をしたいと言うこともなく、皆の意見にすべて同意しながら、後をついて回っていた。

今年のメキシコ家族旅行は、私にとって あの初参加依来2回目の、Puerto Vallartaという市が選ばれた。頻繁に会うことができない距離に住んでいるから、家族で一緒に過ごす時間を作るための家族旅行、が趣旨なわけで、ホテル代など主な費用はこの御両親様から出ていることを考えると、あんまり自分勝手な行動はとれない。が、自分達の意志で行動し、自分達なりに楽しめる日を1日持ってもいいじゃないか、ということで、数日滞在する中の1日はハビーと二人だけで過ごすことになった。
そこで 二人が選んだのはダウンタウン。Puerto Vallartaはメキシコの西海岸にある市で、ダウンタウンは海に面した海岸にある。最初の旅行で来た時に 強く印象に残っていたのが、ビーチ通り沿いに転々と設置されていたオブジェ達。どこの芸術家の作品なのかわからないが、何か宗教的で、宇宙的で、未来的で、強い願いや希望を表現していた。
もう1度あのオブジェ達を見たい、今度こそは写真に収めたい、という私の不完全燃焼から来た思いが ふつふつと沸き起こる。なぜ不完全燃焼なのかというと、つきあって間もない彼氏の一家について回ってた最初の旅では、カバンからカメラを出すことさえもできなかったほどのドギマギ状態だったのだ。なんてウブな私! 今回、このオブジェ達をまた見ることができた喜びで、私は写真を何枚も撮った。これでもか、と言わんばかりに。

ビーチ通りをさらに歩き続けると、砂浜にロマンチックに赤いクロスのテーブルを出し、藁のパラソルを立てたレストランが見えた。あら素敵なお店じゃないの、と近づいていくとその隣にも、またその隣にも、ロマンチックなレストランが並んでいるのが見えた。前に来た時には、ここまで足を延ばさなかったので気がつかなかったが、主に観光客を対象としたレストランがビーチ上にぎっしり並んでおり、それぞれが広げたテーブルとパラソルで 訪れる人々を呼び込んでいた。
すっかり雰囲気に呑まれたハビーと私はここで夕食を取ろうというこになった。そこまでの決断はよかったが、ハビーが鯛の丸焼きをレモンとバターとガーリックで頂く料理を食べたい、と言い出した。それに対して私が、新鮮な白身魚、海老などを使ったメキシコ風シーフードサラダのCebicheを食べたい、と言い出す。お互いをハッピーにするために、その両方を、おいしく、安く食べられる店をみつけなければならなくなった。
一件一件外に掛けているメニューを覘きながら、レストランの立ち並ぶビーチを、上ったり下ったり。鯛はあるがCebicheがない。Cebicheはあるが鯛がない。Cebicheも鯛もあるが、鯛が切り身で姿焼きじゃない、などと決めかねているうちに、気が付いたら太陽が水平線にどんどん傾き始めた。そして、ビーチに並ぶテーブルにはキャンドルが飾られ、松明に火が灯され始めた。
とうとう陽がすっかり落ちてしい、決断できない自分達に嫌気がさしてきた頃に、やっと無理矢理1件の店に入った。そこはビーチ沿いでもなければ、鯛もCebicheも置いておらず、それは特大マルガリータと、マリアッチの陽気なおじさんたちの演奏にとってかわる、という、私たちに非常に有り勝ちな結末となった。
私たちが 何故かクラムチャウダーなどをすすっているその頃、ハビーの両親と弟は、どこかで鯛の丸焼きを食べていたと翌日判明。自分の意志がどうだとか、ワケのわからないことを行って別行動などするものではない。家族旅行では 家族と共に行動し、両親の意見に素直に同意して後を付いて回る事。途中どうであれ、結果、美味しい物を逃す事はない。家族と一緒に過ごす時間はとっても大事なのです。特にこんな優柔不断な二人には。

Kiki



Posted on 夕焼け新聞 2010年5月号

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