Saturday, November 28, 2015

おいしい話 No. 102 「ダイヤモンド探し」


何人の人が、自分の大好きな美容師さんを持っているだろう。センスがあって、腕が良くて、自分の「こうしたい」という説明をしっかりわかってくれ、そのイメージにより近く仕上げてくれる美容師さん。私は それって結婚相手を見つけるより難しいと思っている。
そう言う私でも、日本では10年同じ美容師さんと添い遂げた。アメリカに渡ってからも、里帰りするれば彼女の所に出向き、カットをしてもらっていた。この美容師さんとは、初回にいきなりケミストリーが反応し合い、私の夢の中のお姫様を語るような微妙な説明も、まるでその絵がはっきり見えてるかのように、「あ、こういうことね」と即座に理解してくれ、いつも思い通りのスタイルに仕上げてくれた。それは10年通い続けた中で、1度も壊される事のない強い信頼となっていた。

でもココでの美容師運はゼロ。アメリカ生活ウン十年、そういう「必ずこの人に」という美容師さんが、未だ見つかっていない。 
一度とっても素敵なカットをしてくれた女性がいた。しかし すっとぼけの私は、その女性の名詞を貰うのを忘れ、同じ美容院に戻った時にはその人を指名できず、薬中のような女性をあてがわれ、怒り爆発で帰ってきた。
とは言っても、私はそんなピッキーでもない。友達に言うとびっくりされるけど、どこにでも行く。$15くらいのスーパーカット系から、パールディストリクトにあるこじゃれた店まで、どこにでも、評判とか関係なく飛び込みで行く。確かにスーパーカット系は、多くを望んではいけないことを学んだが、カットに$6070を払い、ハイライトに$160170を払ったら、ちょっとはなんとかなって欲しいと思うわけよ。しかし 毎回、軽い「怒り」が波立ち、美容室を出てからの2、3日はそれが静まらないのである。

「あんたはいいわよ、天然カーリーヘアだから、どんな失敗カットでも 誤魔化しきくじゃない。」
この問題に関して同じく不満をこぼす友人にこう言われた。
What!? I am offended!
そりゃ確かに髪を洗えばセットも崩れ、せっかくスタイリングしてくれた憧れのストレートヘアも流れ、もとのクルクルヘアに戻り、ヘアデザインがなんだって?という事になる。でも、他人には理解不能でも、自分の中にはこだわりがあるわけよ。そいうものでしょ 女って。

ある時思った。まともな金額を払って美容師探しをするのは いよいよ馬鹿らしい。Grouponがあるじゃないか。同じサーチをするなら、コスト削減でいくべし。それで、気に入った美容師に出会えば、そこから普通に通えばいいじゃない。Brilliant!と思った。
Grouponのサイトで、ヘアカットとフルハイライトのDealを探す。シャンプー、コンディショナー、スタイリング込みで$69$79、安い! 美容院の名前を見るが、もちろん知らない。でもいい。購入の決め手は、ロケーション、フルセットの値段、そして掲載されているモデルの写真。ワインを生産地と値段とラベルで決めるのと同じよ。これで 2度と来るものかぁと思う美容師だったとしても、「所詮GrouponDealだしっ」と自分を慰められる。

という事でここ23年、ずーっとGrouponで美容院を転々としているが、最近気が付いたのは、腕が良くて人気の美容師はGrouponを利用していないという事。何故なら彼らはその必要性がないから。Grouponは客寄せをしなければいけない人達が利用している。でも、石の山からダイヤモンドが見つかる場合もあるわけだから、希望は捨てない。諦めない。いつか 必ず、この人凄い!ていう人が見つかるはず!

そして今日、半年ぶりに美容院に座る私。Grouponの自己紹介では、LAなどで働いた数十年の経験があり、かなりベテランで自信がある感じだった。電話で予約をした時のあのぶっきらぼうな喋り方も、その表れだと思った。
登場したのは、結構年配のオジサン、、、。いや、ベテランとなるとこの年齢くらいするでしょ。「I am doing this for 40 years. I know what I am doing.」と、私の注文を軽く聞き流しながらそう言う。「I really hope so…..
ハイライトのアルミホイルを頭中に付け、おかまを被せられて数十分。周りを観察すると、ここで働く美容師達は皆「ベテラン」ばかりという事に気付いた。そしてサービスを受けている客達も、シニア層。あれ、また やっちゃった アタシ?
オジサンのカットをする手が震えている。私はただひたすら沈黙になる。
ハイライトの色の具合も、レイヤーの入れ方も、私の最初の説明覚えてるオジサン?
来た来た来た、薄らと 怒りが煮立ち始めた。
いかん、いかん。GrouponDealを思い出せ。$69$69$69

私のダイヤモンドはどこに埋まっているのだろう。正貨を払っても「あなたじゃなきゃ駄目なの!」という美容師は、一体どこにいるのだろう。



Kiki



Posted on 夕焼け新聞 2015年11月号

おいしい話 No. 101「マヨネーズ」



生活改善、健康食生活大作戦に入る時に、キッチンの棚から パントリーから 冷蔵庫からと一斉掃除をし、添加物、保存料、MSG、その他わけのわからん化学調味料が入っている食材を排除した。いやー、気持ちいいー、すっきりー、なんて言ってたけど、実は一品だけ、どうしても捨てられない物があった。キューピーのマヨネーズ。
マヨネーズはキューピーじゃなきゃだめ! こっちで売っている軽くて薄い味のマヨネーズはマヨネーズじゃないっ!と 言い切り、ハビーにも 間違っても他のブランドを買って来ないようにと、強く言いつけていた。キューピーに勝るおいしさを持つ市販のマヨネーズはどこにもない、と信じていた。キューピー最高。日本の商品最高!
「ハニー、でもこれ MSG入ってるよ。」
ハビーが水を差す。ガーン。
やっぱし 入っていたか、、、。ていうか、キッチンから排除した食品のほとんどは、日本で製造された物だった。
日本の食品は工夫が沢山で、バラエティーが豊富で、美味しい。でもその「美味しい」という感覚に達するために、様々な化学調味料の配合で調整されていたりする。あの崇拝していたフワフワモチモチ食パンも、どうやってその食感が出来上がっているのか、もう一度しっかりリサーチをした方が身の為かもしれない。

ハビーに指摘されても、キューピーのマヨネーズは捨てる事が出来なかった。ブロッコリーを茹でた時や、卵サンドを作る時や、お好み焼きをしたい時、どうしたらいいのよ! 得にアタシとハビーが大好きなポテトサラダ。キューピーのマヨネーズがなかったら 作れないじゃないの! とにかく、念の為に、という事で このチューブは袋に入ったまま冷蔵庫にそっとしておく事にした。

さて、秋に入った最近のCSAは 取り立てのじゃがいもが多くなってきた。マッシュドポテトにしたり、ポテトのキーシュにしたり、丸ごとグリルしたり、色んな料理方で旬の味を楽しんでいる。ポテトサラダ以外。
捨てられもしなかったが、使いもしていなかったマヨネーズ。今週のCSAには リンゴにキュウリにレッドオニオンが入っている。私のポテトサラダの材料が肩を並べている。ポテトサラダ食べたい。でも マヨネーズ、、、。

一人でうだうだと煮え切らない私にハビーが一言。
「自分で作れば?」

はっ。自分で作る、、、! そうだ、マヨネーズって手作りできるんだ!
すぐさま頭に浮かんだのは 小学校の時の家庭科の時間。何班かに分かれて、毎週いろんな料理を作っていたが、マヨネーズも作ったよ そういえば! 小学生の私が作れたんだから 今の私が作れないはずはない。
早速ネットで作り方を検索する。卵の黄身、油、レモン汁、塩、コショウ、そして隠し味のマスタード。めっちゃシンプルな材料。コツは分離しないよう、油を少しづつ入れながら撹拌する事。最初、泡だて器で シャカシャカと混ぜていたけど、わりと疲れるのね、これ。ハンドミキサーにスイッチ。泡だて器一本でよく作ったよなあ、と小学生だった当時の自分に感心。パワーを最強に合わせ、ウィーンと混ぜていく。卵の黄身一個に対して、油が150CC。結構油使うのね。マヨネーズの真相を初めて見た感じ。あんまり沢山摂取するべきではない物と、実際自分で作りながら 認識した。これが手作りの利点という事かもね。何をどれだけ使っているか、自分でちゃんと把握できる所が。

ハンドミキサー様々、数分後、美しく滑らかなマヨネーズが出来上がった。しかも、美味しい!ちょっと手作りのマヨネーズに感動。全然大層な事じゃなかったわ。茹でたブロッコリーに付けてパクリ。マジ美味しい。手作りに勝るものはない。手作りのマヨネーズ最高!
早速、ポテトサラダに取り掛かる。新鮮な野菜に フレッシュなマヨネーズ。なんか気分が良いわ。

はあ、これで、正式にキューピーのマヨネーズとお別れする事ができる。今までしがみついていたこの思い。もう心残り無く、手放せる。
冷蔵庫を開け、マヨネーズの袋を取り出す。さようなら、ベイビー。
その時、その背後に身を隠す お好み焼きソースを発見。あっ!マヨネーズだけでなく、これも無意識に残しておいたか!

次のチャレンジは手作りのお好み焼きソースか。安心食生活も、一筋縄ではいきません。



Kiki



Posted on 夕焼け新聞 2015年10月号

Sunday, October 4, 2015

おいしい話 No. 100 「Pay for experience」


Plate & Pitchforkの開催するDinnerに行って、またポートランドに住んでいてよかったな、と思っちゃったよ。本当に人々の食に対する意識が「フレッシュ、オーガニック、シンプル、ポジティブ、そしてクリエイティブ」に注がれていてる。皆が 健康を考え、材料を知り、それがどこから来ているのか、誰がプロデュースしているのかを学び、それらの新鮮でおいしい食事を楽しみ、尽きるところは 人生を楽しんでいる。
Plate & Pitchforkのアイデアは、皆を地元の農家に招き、生産者と交流をとりながら、その生産過程を学び、その農家で取れた新鮮な材料を 腕利きのシェフに料理をしてもらい、Willamette Valleyのワインと共に頂く。夏の早い夕方、畑の中に白いクロスをかけたテーブルを設置して。(この夢のような美しいイメージは彼らのウェブサイトで。)
Winery, Farm, Chefがコラボして、自然の中にダイニングルームを作り上げる。なんて素晴らしい企画なんだ!
ポートランドらしいっちゃ、ポートランドらしいが、友人からのInvitationがなければ、そんな秘密の花園の食事会があるなんて、知らなかったよ。
Plate & Pitchfork2003年から 毎年夏にこのイベントを開催しているとか。一番気候の良い7月、8月の週末に10-11回のみのDinner。単発のシーズン限定企画だが、多分確実に知名度を上げてきているはず。アイデアの面白さもあってか、有名レストランのシェフの名前も見られる。人数限定のプライベートディナーだし、そういう意味でも、お一人様の料金が$135から$185までというのは 高い!というよりも、納得の金額なのかもしれない。しかも、ほとんどがSold out状態。
友人が選んで、もう先に買ってあったのは Domaine DrouhinでのワイナリーツアーとDinner$160。 
高い! 何にそんなお金かかってんの??? というのが もちろん一番最初の私のリアクション。ワイナリーツアーでしょ、食事でしょ、他に何が付いて来るの? テイスティングは? ワインボトル1本 おみや? それも無いのに$160!?
いかんいかん。いい大人の女性が、これくらいの金額でうろたえてちゃあ いかん。Experienceに対しても料金を払っているという気持ちを忘れちゃいかん。シェフもそのアシスタント達もポートランドからやってくる。材料費にスタッフ賃金にWineryの場所提供代にプロフィットを考えると、そりゃこれくらいはするでしょ。そんな勝手な予算割り出しで 最終的に自分を納得させた。
ポートランドから 車で約1時間ほど走ったDaytonDomain Drouhinはある。当日は、今年最高気温の、真夏日和の日だった。 Highway-99WからNE Breyman Orchards Rd.に入る。ゆっくりと丘を登っていくと、雲ひとつない真っ青な空を背に ぶどう畑が畝となって広がるのが見え始める。突然フランスのワインカントリーに来た気分になる。素敵ぃー!
美しく立派なDomaine Drouhinのエステートは、壮大なぶどう畑の斜面に建っていた。こんなにマガジンの写真のような光景のWineryに来たのは 初めてかもしれない。
ロビーに入ると、ウエルカムドリンクとして、ロゼが注がれていていた。グラスを片手に外のバルコニーに出る。360度ワイン畑が広がり、その向こうに町や林が伸びていく。ああ、気持ちいい。
トレーに乗ったアペタイザーが出回り始めた。レセプションが始まったようだ。
5-6種類のアペタイザーはどれも美味しく、何度もお姉さんを追いかけては お変わりをもらった。ワインもちょこちょこ継ぎ足しに来てくれる。結構いいスタートじゃない?
いよいよツアーに出発。まずは 外に出てぶどう畑まで歩く。ワイン造りを愛して止まない職人が自ら、エステートの歴史と、ぶどうの成長に関して、オレゴンの気候や気温、水、土の話など ハンズオンの講義をしてくれた。次に蔵に移動し、ぶどうの醸造過程や、樽詰め、貯蔵などの話を聞く。よくCraft workというけれど、本当にそうなのである。
こうやって私達がEducateされている間、外ではDinnerの用意が着々と進んでいた。
エステートの広い庭の一部に背の高い木々が立ち並んでいて、強く熱い直射日光を枝々が遮り、オアシスのように涼しい風が吹き抜ける場所がある。ここに白いテーブルクロスに美しいブーケが飾られたテーブルが並ぶ。即席設定した野外キッチンには、シェフやそのスタッフ達がエプロンに麦わら帽という井出達で腕をふるっている。本日のシェフは Crown PaellaScott Kettermaと、HoldfastJoel StocksWilliam Preisch。英気溢れる、夢と希望を抱いたシェフ達、そして、この企画の発起人、実行者である、Erika Polmarが、席に着いたゲストを前に、挨拶のスピーチをする。皆若い! とっても素敵なアイデアだけど、こういうコラボの企画を実際に現実化していくって、本当にすごい。なんか、いいなあ。提供する側も、される側も、こういう「機会」を楽しみむために、一生懸命働き、お金を使う価値を見出しているような気がする。楽しい人生を送るには、そういう観念も不可欠だな、と思った。
第一のコースは夏野菜のグリル。SupplyしているのはSun Gold Farm。アタシのCSAの農家じゃん! 次に薪の直火で料理したパエリア。そして、柔らかい牛肉の煮込み料理に、デザート。Domain Drouhinが選んだワインをそれぞれペアリングして頂く。無限に注がれるワインと、おいしい食事と、テーブルを囲む他のゲスト達との会話を楽しむ。最高!
これは 充分金額に見合っていると納得(再度割り出し)。文句無し。来年はSun Gold FarmDinnerに行きたい。
今年はもう終わっちゃったけど、来年のPlate & PitchforkWebは要チェックだわ。
陽が沈むと、72度目という満月、「Blue moon」が、本当に雲のない蒼い空に 大きく、オレンジ色に浮かぶ。
最後まで、生きてる事の喜びを感じた一日だったわ。こんな日を 自分の人生の中にもっと取り入れられるよう これからも頑張って働くぞっ。

 Kiki


Plate and Pitchfork

Domaine Drouhin


Posted on 夕焼け新聞 2015年9月号

おいしい話 No. 99 「CSA」


健康オタク化の道は更に続く。
6月からCSAのメンバーになった。CSACommunity Supported Agriculture
地元の農家から、直接野菜を購入するシステム。農家をサポートしながら、同時に新鮮な野菜のシェアを受ける。小売りを省き、生産者から直買いとなるので、価格も割安となる、というのがアイデア。ハビーの両親も一時期やってたし、メンバーになっている人の話は聞いた事あったけど、まさか自分達がサインアップするとは思っていなかったわ。いろいろCSA をやっている農家を調べた結果、Forest GroveにあるSun Gold Farmというところと契約する事に決めた。毎週木曜日のピックアップで、期間は6月から10月まで。価格は$450。悪くないんでないの?ハビーの両親も含め、メンバーにになっている人達を見ていると、相当な量の野菜を毎週受けているので、結構たべきれず、無駄にしてしまっている様子だった。それを考えると、Full shareのオプションは私とハビーにとってToo muchではないか。ということで、近所に住む友人を巻き込みFull share2家族で分ける事にした。
ということは、$22518週分の野菜を貰うことになる。これはすごいお得!

支払いは全部前払い。この前払いによって得たまとまった資金で、農家たちは次期の種や苗を購入したり、作業の機械を修理したり、新しく買い替えたり、農作の計画を立てる事ができる。これが、作物の確実な出荷先が確定できるという部分も含め、農家をサポートする、というわけだ。
さて、私達メンバーは、ほとんど信用買い。毎週木曜日の5時から7時の間に、指定された公園に取に来てね、という事だが、ほんとにいんのかよ、と思うわけよ。犯罪大国で、様々な恐ろしい事件が日々起こる中、不思議な事に この信用取引がちゃんと成り立ったりするから、アメリカって面白い。弟一回目のピックアップの日、その公園に行くと、野菜の入った緑の袋をピクニックテーブルにに並べて、女の人がちょこんと座っている。あれか?
近づいて行って、あの、野菜を取りに来たんですけど、と言うと、プリントアウトしたリストを見下ろしながら 名前を聞く。チェックマークを付けてお終い。はいどうぞ。友人が変わりに取り行った時も同じ。両家が取りに行けなくて、他の人に頼んだ時も同じ。名前の申告のみ。
なんか、めっちゃあっさり。

こんな感じで毎週ちゃんと野菜の配当を得ている。
袋には 毎週だいたい7から10種類の野菜と果物が入っている。福袋みたいなものね。と言っても、ニュースレターで「今週のシェア」を先に教えてくれるんだけどね。今週はキャベツ、スイートコーン、ペッパー、ポテト、サマースクワッシュ、キュウリ、パセリ、ビーンズ、そしてリーク。6月はオニオン、バジルやレタス、ケール、ブルーべリ—、スノーピー、スナップピー、ファバビーンなどが多かった。月が替わるに連れて収穫物が変わってくるから面白い。これから、8月、9月、そして秋のシーズンになるとどんな野菜が送られてくるのか、とっても楽しみ。なんか、季節に出来るものを食べていた子供の頃を思い出すわ。
さて、2家族で分けているといえども、結構な分け前が手元に残る。ここで奮闘するのが、いかに無駄なく全てを食べきるか。大量な野菜を毎週消費して行く中で、同じ料理ばかりでは飽きてしまう。そこでレシピなど見ない私が インターネットで検索し、新開地を見出すようになった。ズッキーニのパスタ、キューリの冷たいスープ、リークのキッシュ。野菜って、美味しい!改めて野菜のありがたみを感じている日々。この絶対食べきってやる根性が、完全に野菜中心、大量摂取の生活に導いていっている。つまり、健康生活まっしぐら。CSA、とってもいい効果よね。私達メンバーもすっかりサポートされています。

Kiki


Sun Gold Farm
6995 NW Evers Rd
Forest Grove, OR 97116
503-357-3851


Posted on 夕焼け新聞 2015年8月号



Sunday, June 28, 2015

おいしい話 No. 98「ヘルスコンシャスな人」


Juice personになると宣言して1ヵ月以上経った。この間、Juice personどころか、すっかり生活習慣を改めた人にトランスフォームしちゃった。
オーガニックの野菜でジュースを作り、毎日飲む事で 身体にどういう効果があるのか、そしてどういう種類の野菜が何に効果があるのか、なんていう事を調査し始めたら、止まらなくなった。野菜は必ずオーガニックを、という所から、農薬の事や、遺伝子組み換え作物、加工食品、水道の水の事や、プラスティック製品まで、「事実」がどんどん目に飛び込んできて、ハビーと私は目が開きっぱなしになった。
OMG! What a world we are living in!

これらを目の前にすると、全く世の中に無関心で、無知だったと認めるしかない。今までVeganVegetarian、はたまたGluten freeと公言する人達を「好き嫌いのヒドイ人達」「好みの偏った人達」「スタイルだ」と括っていた。でもこの人達は、単純な個人のチョイスではなく、もしかしたら 私達よりずっと知識が有り、世の中の環境状態を理解し、賢い選択で自分の身体を守っている人達かもしれない、なんて思えてきた。
よくおかんに言われた「文句を言わずに なんでも出された物を食べなさいっ!」を実行していると、とんでもない健康状態に陥りそうな食品が溢れている。Portlandiaで、レストランが出すチキンの歴史をいちいち聞く客、というエピソードがあるようだが、もうNo jokeだわ。自分をEducateして、健康にいい物を選んでいかねば! ほらね、すごいトランスフォームしちゃったでしょ。こんな意識、全く持って無かったもんね、以前は。

そこで 食品や環境について考えた時、初めてポートランドって素晴らしい、と思った。地元に農家が沢山あるし、新鮮オーガニック野菜や、健康を考えた食品の品揃えは多いし、ファーマーズマーケットもあちこちでやってるし、市のお水にフロライドは入ってないし。近所には 少々高いが、Whole FoodsNew SeasonsCo-opもある。やっぱりこういう店が近くにないと、面倒くさがりやの私は続かない。

私が一番変わったのは、ラベルを読むようになった事!これは大きな成長である。以前はしょっちゅう「Diet」とか「De café」とか買って帰って、失敗こいていた。表にドーンと張っているラベルでさえも見ないでこれだから、裏を回して成分や材料なんか見るはずもなかった。ところが今は しっかり材料のリストを読んでいる。分量が多い物から先に提示されていることを知った。長いリストと、読めない材料や、XやらYやらが連なる名前の材料が入っている商品は、なるだけ避けるようにと教わった。マーケットの通路に立ち、ジーっとパッケージを睨みつける私。明らかに買い物に要する時間が長くなった。しかし もう、ハビーに呆れ顔で「Please read labels」とは言わせない。今の私はスマートショッパーなのだから。

家のパントリーや冷蔵庫も大掃除。食べ物の断捨離を行った。精製されたり、漂白された小麦粉や、塩、砂糖を撤去。MSG、添加物、着色料、その他不明な表示の入っているパッケージ物も、買ってきたばかりであろうが、大好物であろうが、結構いい値段したものであろうが、どんどん棚から取り除く。なんか気持ち良い! ハビーと二人で、顔を見合わせご満悦。まさか、こっち側の健康思考の世界に身を移すとは思ってもみなかったが、人間出来ない事は無い。あんなにコッテリ脂のノッた肉好きだった私が、トランスフォーム後、まだ一度も「肉ぅーーー!」を唸っていない。エライッ。

そういえば、最近Paleo Dietていうのを耳にする。人間の基本の食生活(原始時代?)に戻ろうという事らしい。人々は自然の中で手に入る木の実や、果物、植物を食べていた。家畜や養殖される前の、野生の動物や魚介類を食べていた。そこには農薬も、ホルモン剤も、化学調味料も、加工の技術もなかった。
なるほどね。一見極端な提案みたいだけど、本当に山奥の洞穴に住み始めようぜ、というんではなく、マーケットで商品を選ぶ時、それを意識していこうぜ、という事だと思う。私だけでなく、世の中がもっと大きく健康思考に移行していってると感じる。

今夜はハビーがチキンと野菜のローストを作ってくれた。
Don’t worry.  They were happy chickens.
肉屋のおっちゃんに確認したそうだ。なんか、真のポートランダーになってきているぞ。あとこれで、裏庭に畑を作り、鶏小屋を建てれば 立派なアーバンヒッピーだ。健康生活デビュー2ヵ月弱。健康オタク化の道は続く。


Posted on 夕焼け新聞 2015年6月号

おいしい話 No. 97「Juice Person」


最近人々の間で、ジュースを作るのが流行っているわよね。去年のブレンダーの売り上げ台数は記録的だったよう。大酒飲みの友人も何人かブレンダーを買ったりして、世間の波に合わせ、健康思考にギアを変えようとしている。「毎朝作って朝食として飲んでるんだけど、なんだか体が調子いいわ。」
「へー。」
私はJuice personにはなれない、と ハビーにこぼす。健康を意識した選択をしながら生活をする、そして きちんとした食生活を管理する。できねえ。
だいたい、うちにはブレンダーなんてないし、作りたいと思っても作れないわけよ。
「何を言ってるんだい。ブレンダーうちにあるじゃないか。」「え、あれは壊れてるわよ。」「壊れてないよ。この前も使ったばかりだよ。」「……..。」
壊れた事にしといてくれれば、どんなに簡単か。

その数日後、友達とCostcoに行くと、超高機能ブレンダーマシーンのデモンストレーションが行われていた。いかにもの、口の上手い、デモのオジサンが、ジョークを差し込みながら 軽妙にこのマシーンの素晴らしさを説明している。「アタシのブレンダーに似てる」と友達が言う。「え、持ってんの?」「うん、持ってる。」「使ってる?」「使ってない。」
バナナ、ホウレンソウ、ニンジン、パイナップルをブレンダーに放り込む。パイナップルなんか、芯まで入れちゃう。氷を入れてスイッチオン。全てを砕き、あっと言う間に、スムージーができた。私と友人は小さいカップに注がれたそのサンプルをすぐさま掴み、味見をする。美味しい。
オジサンは、間を空ける事なく次のレシピを作り始める。そして、温かいスープに冷たいシャーベットまでも披露する。
栄養満点な一品が手間いらずで出来て、毎日の健康生活に抜群の役目を果たします。Costco特別価格、$499.99ドル! お買い得ですよ!
500ドル! 高っ。
40分以上デモのオジサンの前に張り付いて、散々試飲をした私達だったが、価格を聞いた途端、「じゃ、そろそろ」と後ろざしに足を引き始めた。その空気となって消えようとしていた私達をオジサンはすかさず見つけ、大声で呼びかける。
お嬢さん達、買ってかないの!?このシルバーは最後の色だよ。持って行きなさい。ほらカートに入れてあげるから!
あっと言う間にオジサンがブレンダーの箱を私達のカートに投げ込んだ。
「えっ?!」とは思ったものの、ここでオジサンと問答してもしょうがない。このまま引くべ、とブレンダーをカートに入れたまま、その場から立ち去った。
「買い物中に考えて、どうしてもいらないならレジで落としていけばいいからぁ!」オジサンの叫び声が背後から追ってくる。

奇遇にもその数日後、年間検診でドクターに食生活を改める警告を受けた。特にお酒。アルコール摂取は真面目に抑えなさい。きちんと栄養を考えた食を取りなさい。
アルコール摂取部分は除いても、自分的にはそんな不健康な選択をしているつもりはなかったが、このドクターの指摘に目が覚めた。私はトシを取っていっている。もう若くはない。例えセールスのオジサンにお嬢さんと呼ばれても、それを間に受けているバヤイではない年齢に来ているのだ。
老化をしている事を考えた上での、食生活を真剣に考える必要があるのだ。
あのブレンダー、レジで落としてくるべきでは なかったかも。

早速ハビーに宣言する。「私は今日からジュースを作る!うちのブレンダーを出して!」
「ブレンダーじゃあ、ジュースは作れないよ、ジューサーじゃないと。」
「へ?」ちょっと混乱。
「ブレンダーは入れた物全部を砕いてミルクだの、ヨーグルトだのを入れてスムージーを作るもの。野菜ジュースを作りたいなら、野菜や果物のエキスだけを絞り出すジューサーを買わなきゃ。」
やっぱり私はJuice personじゃなかったわけだ。全部がごっちゃになっていた。

真のJuice personに成るために、早速高機能ジューサーを購入。オーガニックの野菜を買ってきて、丸ごとジューサーに突っ込む。ニンジン、ビーツ、ケール、ブロッコリー、アスパラガス、生姜、ニンニク。勿論パイナップも芯が付いたまま入れる。エキスが絞り出され、カラカラになったpoopがマシーンのお尻から押し出される。すごい、一滴も残さず、エキスを絞り出しているようだ。Mason jar2瓶分のジュースが出来た。あんだけ大量の野菜を使って、2瓶かい。健康生活を営むって、お金がかかるのね。ヘルシーショップで売っているジュースが高いと文句を言っていたけど、Juice personになって初めて納得。いや、するよな、そりゃ。

決して「うまいっ」とは言えないが、確実に強力パワードリンクであるジュース。すっかり健康挽回できる気がしてきた。ワイン1杯を控えて、ジュースに転換。今日から私も立派なJuice personです。



Posted on 夕焼け新聞 2015年5月号


Monday, April 27, 2015

おいしい話 No. 96「Mystery Diner」

食べ物を見るのも、食べるのと同じくらい大好きなハビーと私は、Food Networkの番組を年中見ている。レストランの紹介番組から、20 - 30分間で勝負のチャレンジ番組まで、紹介される料理にヨダレを垂らす。暇な時は このチャンネル一本流しっぱなしで、永遠と見ていることもある。特に「オレゴンのポートランドにある」とか、「オレゴン、ポートランド出身の」いう紹介には、敏感に耳が立ち、座る態勢を整え、じっくり画面に集中しちゃうのだ。
先日もいつものようにFood Networkをつけっぱなしにしていると、「Mystery Diner」という番組が始まった。これはレストランやバーのオーナーが不信に思う従業員の真相を掴むため、Charles Stilesというその道のエキスパートを呼び、隠しカメラや偽従業員、偽客を使って捜査をする、という番組。
この番組が「オレゴン州ポートランドの」と紹介された。「このエピソード、ポートランドだよ!」と、ハビーを大声で呼ぶ。「Dar Salam」というイラク料理の店だとか。この辺ではまだピンと来ない。レストランの正面が映った。
あれ?
続いて、レストランの前の通りとその半ブロック先の四つ角が映った。
「あっ!これAlbertaじゃない!」
店の名前では わからなかったが、この数秒の映像で場所がどこなのかすぐにわかった。依然はクレープ屋だったけど 中東系の店に変わって、いつか行ってみようと話していたレストランだった。
こんな近所の店がテレビに出てるなんて! ワクワクしてきた。
Dar Salam」は ポートランドで唯一のイラク料理の店。この頃材料として仕入れた野菜などがよく無くなっている事に気づき、従業員の誰かが盗んでいるのではないか、という疑惑が出て来た、と言うオーナー夫妻。そして最近、店の目と鼻の先に、イラク料理のフードカートが出て、「Dar Salam」にしか売られて無いはずのMahshiという料理が売られている。それも「Dar Salam」で働く誰かと結び付いているのでは、という事だった。
そこに Charles Stilesが登場する。事情を聴いたCharlesは店内、店外に隠しカメラを設置し、店の隣の空き屋にFBIもまっつあおのモニター室を作り上げ、その別室から全ての動きを監視する。
少々大袈裟な構成だが、目が離せない。疑惑のターゲットはマネージャーと、二人の調理人。そして例のフードカートの男達。Charlesが自分のチームメンバーをシークレットダイナーとして、このフードカートに送る。そこで販売しているのは、「Dar Salam」でしか食べられないはずの、米や野菜を詰めた玉ねぎの料理MahshiIraqi Lamb Shawarmaのサンドイッチ。
Charlesから指令を受けたシークレットダイナーがそれらを全部買い上げ、モニター室に持っていく。「Dar Salam」のオーナーがそれぞれを味見して確認する。
Yes, this is our Mahshi and Lamb!
すごい、自分の料理がわかるんだ、、、。

カートが空っぽになり、商品が無くなった男が「Dar Salam」の脇の路地に行く。手に持っていたクーラーボックスをそこに置き、そのままレストランの中に入って行く。出て来たのはマネージャー。男とマネージャ—がテーブルの椅子に腰かけ、他愛の無い会話をする。その間、マネージャーが誰かにテキストメッセージを送っている。受け取ったのは、キッチンにいる調理人の一人。この調理人がTo Go Boxに新しいMahshiを詰め、路地に出て、男が置いたクーラーボックスの中に入れる。これが完了した事をマネージャーにメッセージで返す。男がテーブルにある二つ折りのメニューにキャッシュを滑り込ませ、レストランを去る。マネージャーはそのメニューからキャッシュを取り出し、自分のポケットに押し込む。カメラが全てを捉えていた!

疑惑の真相が明らかになった番組終了後、ハビーと私の心はイラク料理に心を奪われていた。
そして翌日の夕方、私達は「Dar Salam」のテーブルに着いていた。犯人と判明した従業員たちは即座にクビになったから今は居ないものの、あのウエートレスのお姉さん、見覚えない?なんて話しながら店内を見渡す。テレビに出てたのよね、、、。「Mistery Diner」に。
注文したのは モチロンそのまんまIraqi Dolma MahshiLamb ShawarmaLamb Shawarmaはサンドイッチではなく、Rice Plateにした。
いや~美味しかった! 初めてのイラク料理だったけど、「Authentic」な気がした。そりゃあ 盗まれてたまるかい、っていう話だわな。二人でシェアしても大満腹で、この良心的な値段。めったにポジティブな評価をしない私だけど、是非行って頂きたい。
不誠実な従業員をとっぱらい、宣伝の目的もきっちり果たした「Mistery Diner」。今回のエピソードもお見事でした。

Kiki

Dar Salam
2921 NE Alberta St.
Portland OR 97211




Posted on 夕焼け新聞 2015年4月号