Monday, September 18, 2017

おいしい話 No. 124「カリフラワー ビザ クラスト」


野菜の食べ方も進化したものだ。
世の中がヘルスコンシャスになっている昨今は、その料理方法も豊富。
皆色々アイデアが浮かぶものよね。
特に最近の注目は、カリフラワー。茹でたり焼いたり炒めたりだけではなく、ピュレーにしてスープにしたり、マッシュしてマッシュドポテトの代替にしたり、細かく刻んでライスの代替にしたり! 
先日、Food Networkで ある料理番組を見ていたら、カリフラワーを使ったビザ クラストの作り方を紹介していた。ピザ クラストまでカリフラワーで作るなんて。Who comes up with it!!? 
早速グーグルしてみた。そしたら沢山のサイトでカリフラワーのピザ クラストの作り方が紹介されていた。面白い事に、どのサイトも調味料や分量に差異があるとしても、基本的に同じやり方なのだ。カリフラワーをブレンダーでライス状にし、それを茹で、最後に布巾を使って水分を絞り取り、調味料を加えてクラスト状に形を作りオーブンで焼く、という手順。
興味をそそられた私は、早速一つのサイトのレシピを手本に、作ってみる事にした。

まずカリフラワーをブレンダーで細かくし、たっぷりのお湯で茹でる。ザルに上げたカリフラワーは本当に炊いたお米のようだった。(これで納豆ご飯にしようとは思わないが。)これを布巾で包んで絞る。コツは固―く絞り、水気を限りなく切る、と書いてある。ここで自慢の腕の筋肉が使われるわけだが、どんなに頑張っても完全に水分を切る事ができない。もういい加減腕が疲れたところでボールに移し、調味料を入れて混ぜる。モッツァレラチーズとパルメザンチーズ、オレガノ、塩、ガーリックパウダーに卵。これらがしっかり混ざった後、クッキングシートを敷いたピザパンに、ピザ クラストのように薄い円形に形を作り、400度(F)のオーブンで約20分ほど焼く。その後好きなトッピングを乗せ、再び10分ほど焼くと、Ta-dah! ピザの出来上がり。

これがなかなかイケるのである。三角に切ったクラストが壊れる事なくちゃんと持ち上がる! そしてシンプルで控えめなカリフラワーがトッピングのフレーバーを超える事もなく、いい味を出している。すごい!
唯一つ気になったのが、クラストが思ったほどハードでなかった事。やっぱりまだ水気が多かったのかなあ。あんなに必死で絞ったのに、、、。
そこで私は考えた。
カリフラワーを細かくする前に先に茹で、それからブレンダーにかけた方が、ライス状にして茹でるよりも水分が少なくて済むのではないか。
頭イイ! このやり方を載せているレシピはどこのウェブサイトに行っても見当たらない。ここは実験をして 証明してやろうじゃないの。
次の日に またカリフラワーを買ってきた。まずは沸騰するお湯に小分けしたカリフラワーをを入れ、数分茹でる。ザルにとり、水気を切り、今度はライス状にするためにブレンダーに入れる。ブレンダーで回る茹でたカリフラワーは、ライス状にはならず、マッシュドポテトのような状態になっていった。 あれ!??  不安に思いながらも同じ調味料を入れ、ピザの形を作り、同じ温度と時間で焼いた。完成したクラストは、1枚で持ち上げる事ができず、ボロボロと崩れた。
私は考えた。茹でたカリフラワーをブレンダーにかける前に、一旦布巾で絞るべきだったんだ、と。だから水が多くて、マッシュドポテト状になってしまったんだ!
その翌日 またカリフラワーを買って来た。今回は小分けにしたカリフラワーを茹で、布巾で絞った。必至になって絞った。布巾を広げると、ブレンダーにかけるまでもなく、すでにカリフラワーはボロボロに崩れていた。これをブレンダーにかけるとまたマッシュドポテトになると恐れた私は、包丁で細かく刻み「ライス状」にする事にした。Ah-ha! いちいちアイデアが浮かぶあたしはスゴイ。同じく、調味料を入れ、形を作り、オーブンで焼く。
出来上がったクラストはしっかり繋がっていたけれど、食感が荒く、カリフラワーの味が表に出ている。そして、固さに向上はなかった。

自分のアイデアがどんなにクレバーか証明してやろうと思っていたが、実験の結果、オリジナルのレシピのステップを忠実に守る事がベストである、という結論に至った。どうりでそれ以外のやり方のレシピが見つからないはずだ。やっぱし、料理研究家達が、すでに実験済みなのだと思われる。

この数日毎日ピザつくめ。いやー食べ過ぎだよ ピザばかり。そう落ち込みそうになった時、ハッとする。全部野菜じゃーん! そこでギルティ―が少し軽減された。
カリフラワー ピザ クラスト、素晴らしい!



 Posted on 夕焼け新聞 2017年9月号

おいしい話 No. 123 「ご褒美の旅」


人間たまには、自分の事を「よくやった!」「よく頑張った!」と労ってあげなければならない。たまには、ちょいと財布の紐をゆるめて、自分にご馳走を振舞ったり、買い物や旅行に連れ出したり。節目節目で、自分にご褒美をあげる事を忘れてはいけない。だって、自分がやらなくて誰がやってくれるというの。

先日私もある節目を期に、自分にご褒美を進呈した。34日のナパ、ソノマ ワイナリー巡りの旅。「You deserve this!」と自分に言いながら。

ワインにハマっている最近の私は、カリフォルニアのワインを知らずして USA産ワインの知ったかぶりはできぬ、と思っていた。ワシントンもオレゴンも数々のワイナリーに行って取り敢えず「知っているつもり」でいる。でも カリフォルニアのワイナリーにはまだ行った事がない。それ故 カリフォルニアのワインを知っているとは言えないのである。というロジックが この旅行の理由。

同じくワインにハマっている女友達に声を掛けると、二つ返事でノリノリのOK。早速フライトとホテルをブッキング。そして言わずと知れて行くべきナパ、ソノマ。何にも知らない初心者の私達は、初回はツアーに任せる事にした。

1日目は San Francisco Shuttle ToursOpen Top Napa Sprinter Tourでナパへ。
9時にサンフランシスコのフェリービルディングに集合。ガイドのKyraが最初に訪れるワイナリーがDomain Chandonであると言うのを聞いた時は、友達と湧き上がった。ゴールデンゲートブリッジを渡った所にある展望所で、10分ほどトイレ休憩と写真撮影。まさに霧のサンフランシスコ。橋が半分見えない。しかも強烈に寒い。
しかし、ナパに入るや否や、青空が広がり、ツアーバスのトップが全開になり、気持ちのいい風に吹かれるオープンカーのドライブとなった。
Domain Chandonで 期待のテイスティング。いやお兄さんが注ぐ注ぐ。普通のテイスティングのケチった注ぎ方ではなかった。カリフォルニア流か? 朝からコートヤードにあるテーブルで美味しいスパークリングワインを頂くなんて、ああこれがバケーションという事なのよねー、と顔がゆるゆる。
ナパは小さいワインカントリーのイメージがあったけど、やっぱりカリフォルニア。走っても走っても、ハイウエイの両サイドに 広大なヴィンヤードが果てしなく続いていく。USA産のワインの90%以上がカリフォルニアで作られているというの、納得できる。
次に訪れたのは V. Sattui Winery。ここのテイスティングは 50種類ほどあるワインのリストから自分達が試したいのを5種類選べるという。でも私達、サーブしてくれる女性と気が合い、話しているうちにアレも、コレもと次々にワインを注いでくれ、少なくとも10種類は飲んだと思う。ここのワイナリーには新鮮な料理やチーズを売っているデリがあり、渡されたチケットでランチを買い、外のガーデンでピクニックをした。
この後、Heitz CellarsSt. Clair Brown Brewery & Wineryに。St. Clairはクラフトビールもあり、ワインと一緒にテイスティングした。
サンフランシスコへの帰りは ゴールデンゲートブリッジを渡らずフェリーで。アルカトラス島を横目に、ベイブリッジとダウンタウンのパノラマに向かう光景は素晴らしかった。

翌日はGreen Dream ToursActivity Sonoma Valley Tourでソノマへ。ホテルにピックアップに来てくれたのは、いかにもカリフォルニアンな軽いノリのお兄ちゃん、Dylan。カナダから来たもう一組のカップルと共に出発。ソノマは、Robledo Family WineryLarson Family Winery、そして Nicholson Ranch3件を回った。それぞれがプライベートワインテイスティングのセッティングをして私達を迎えてくれた。
今回の旅で、カリフォルニアのPinot Noirを期待していたけれど、以外に、Chardonnayを見直す事になった。Larsonでのランチピクニックの時に、カナダのカップルと皆が気に入ったChardonnayを一本買ってシェアをした。
その後、ソノマの可愛い街を1時間ほど散策。ウィンドショッピングをしたりアイスクリームを食べたり。
最後のNicholson Ranchでは ワイングラスを片手にヴィンヤードを歩き、担当の人がワイナリーの歴史やカリフォルニアワインの話をしてくれた。この日もまた最高の天気で、気持ちが良かった。Dylanがホテルまで送ってくれた最に、こっそりLarsonで買っていたChardonnayのボトルを私達にギフトにとくれた。How sweet

オンラインで当てずっぽうに選んだツアーだったけど、両日共、期待を大幅に上回る大満足の楽しいツアーだった。これでカリフォルニアワインも語れるようになったし、気分はリフレッシュされたし、今回の自分へのご褒美は高得点をあげたい。


San Francisco Shuttle Tours

Green Dream Tours



Posted on 夕焼け新聞 2017年8月号

おいしい話 No. 122 「好奇心を優先に」


私は昔から引っ込み思案で、人見知りをする人間だと思っていた。子供の頃から母親に「あんたは甘えの人見知り」、とよく言われていた。だから、そうなんだと信じていた。でも、ふと思った。シャイな人間が一人でアメリカに移住するか? 一人で趣味のクラスにサインアップするか? 一人でバーやレストランに行くか?
この間も、友達の知り合いの人に誘われて お料理教室に行って来た。間に入っている友達は行かなかったのに。そのお料理教室で、参加者全員が順番に自己紹介をした。アメリカで見知らぬ人が集うと必ずあるパターン。大の苦手。なのに声を張り上げて結構プライベートな事までベラベラ喋っている自分がいた。
オーガニックのプラントベースの料理はとても美味しかった。ズッキーニ スパゲティーにカシューナッツのクリームソース、ウオルナッツのブラウニー、そしてジンジャービアー。カリフォルニアから数か月前にオレゴンに引っ越してきたという、ヒッピー系のカップルが、このヘルシーな料理教室を主宰していた。レシピは後日サインアップした人に送られてくるという事だったが、待ちきれなかった私は次の日に、もう催促のメールを出していた。「早く送ってくれ。」
人見知りであっても、好奇心が勝つのか。シャイであっても、図々しさがそれ上回るのか。
このカップル、JasonMargeauxが「In Plant We Trust」という名で、ケータリングのビジネスをしているのだが、彼らが、あるミュージシャンとコラボで、ヒーリングのセッションとディナーのイベントを行うという事を知った。その名も「Healing Sounds: An Evening of Sound Bath, Meditation, and High Vibrational Food」。
432hz Sounds Bath Joshuaがクリスタルボウルとギターの演奏をして、1時間の「Sound Bath」と瞑想の時間を過ごしたあと、プラントベースのペルー料理を頂く、という趣向。
こういうスピリチュアル系にすぐ反応する私は、行ってみたい、と思った。数年前にクリスタルボウルのサウンドとヨガ、というクラスを受けて非常に感動した事を思い出した。またあの体験をしたい。しかもディナー付き。
興味は大有りなんだけど、まるで70年代のニューエイジ時代に舞い込むようなイベント、一人で行くのは少々心細いなあ、と思った。しかし、こういうのに行きたいと思う友人がいるのか、とも考えた。23人にあたってみたが、皆返事はノー。シャイな私の心は怯んだが、結局はまた好奇心が勝った。
場所はCarioca Bowlsというアサイボウルなどをメインに提供するレストラン。ダイニングエリアとは別に小さな部屋があり、そこに人々が集まった。人々と言っても私を入れて10人ほど。アジア人は私だけ。
皆ヨガマットや、ブランケットに座ったり、横たわったりして自由なスタイルで演奏を聴いている。私はJoshuaの真ん前に陣取って座った。彼が創造するギターとクリスタルの音色は、部屋全体に充満し、身体の中に浸透してくる。まさに「音に浸かっている」という感じだ。音の振動が身体の細胞の振動と同調し、肉体が砂のように分散し、宇宙に広がっていくようなイメージが頭の中に浮かんだ。一人で来ているなどすっかり忘れていた。
セッションの後は、お待ちかねのディナー。パイナップルと昔からの形態をそのまま保持したペルーのパープルコーンを浸けて作った紫色のジュース、マッシュルームのセビーチェ、そしてペルースタイルのキヌワのスープにパープルコーンのトルティーヤ。
ホストのJasonMargeauxが、せっかくいいお天気なんで外で頂きましょう、と皆を表のパテオに促す。そこで初めて我に返る。しまった、友達がいない。急に一人で来ている事が恥ずかしくなった。だけど、この料理を食べずして帰るわけには行かない。
最初はポツンと一人で座っていたテーブルに、2組のカップルがジョインし、自己紹介が始まり、先ほどのセッションの話や、料理の話、ポートランドでの生活の話など、難なく会話が弾み始めた。隣のテーブルから、パテオのガーデンから摘み取った花が回って来た。「食べれる花よ」。少しづつかじって皆に回して行く。ああ、どこまでヒッピーなんだこの人達。最後には明日が誕生日だと言う私に、全員がお祝いの歌を歌ってくれた。
私は本当に人見知りのシャイな野郎なのか。それともただそうだと思い込んで来ただけなのか。私の中で、引っ込み思案なところと行動すべし!という部分が、常に共存している。ただ最近確信するのは、シャイな気持ちを打ち勝ち、行動に出ると、良い事がある、という事。間違いなく自分の世界や視野や人間関係が広がっていくし、楽しい。これからも、シャイの芽が顔を出しても、「好奇心」に舵を取らせて行くようにしたい。




Posted on 夕焼け新聞 2017年7月号

おいしい話 No. 121 「ソムリエへの道」


もともとワイン好きではあるけれど、ここ数年その度合いが高まっている。過去3年ほどは毎年数回オレゴンのワイナリー巡りに出かけ、様々な種類のワインを試飲するのを楽しんでいる。街ではワインバーを覗いたり、ワイン専門店のテイスティングイベントに出かけたり、レストランに行けば 未開のワインを試してみたり、と ワインの活動が活発になっている。
「ワインの事をもっと知りたい!」
「ちょっとエラそうな顔しながら ワインの事を語れるようになりたい!」
そんな気持ちが日に日に増していっている。
旅の友は、同じくワインに熱を上げている女友達。二人でワインのある場所に出動しては、内輪で辛口な批評をし、その気になっている。

Meg Ryanの「French Kiss」という映画の中で、相手訳の男性がMeg Ryanにワインのアロマの説明をするシーンがある。チョコレートやら、セイジやら、ベリーやら、ロースマリーなんて名前が出て来る。若い頃その映画を観た私は、トンチンカンだった。 ワインって、ブドウから作るんだよね?製造の工程の中で、ハーブとかチョコレートか入れちゃうわけ? そういうアロマや味を出す為に??? 知らなかったわー。

私のワインの知識はそういう次元から始まった。
今では、一般に普及しているスタンダードなブドウの種類も覚えたし、なんとなく個々の特徴もわかるようになってきた。もちろん、ピーチやら、ストロベリーやら、ブラックペッパーなんていうのは、アロマの描写の表現用語であって、実際に入っているわけではない事も知った。ホッ。

ある日この女友達が、「Robertのクラスを受けに行こうよ!」と言って来た。Robertとは、うちの近所にあるワインバーのオーナーで、ワインのプロ。Court of Master SommelierAdvanced Sommelierの資格を保持し、現在頂点である、Master Sommelierの資格を取ろうとしている。試験の合格率は1%にも満たず、世界でもこの資格を持っているのは200数人だとか。
そんなエベレストの登山は全く望んではいないが、ビギナー向けの一番ベーシックな資格があれば、取ってみたいかも、と思った。
毎週月曜日の夜、Robertのワインバーで、Court of Master Sommelierの資格を取ろうとチャレンジしているワインEnthusiastが集まり、勉強会を兼ねたワインテイスティングが行われている。そこに乗り込もう、という提案だった。

そうねえ、知識の豊富なRobertから色々話を聞きながら、ワインを飲むのもいいかもね。というノリで、私と友達は彼のワインバーに出かけて行った。
9時、一人、また一人、といかにも常連の参加者が店に入って来る。それぞれ紙袋に包んだワインボトルを手にしている。え、ワイン、持ち込み? すっかり提供されるものと思い込み、手ぶらで来た私たちは顔を見合わせた。
全員が揃った所で、皆二階に促される。そこには隠れ部屋のような個室があり、大きな丸いテーブルが置かれている。そのテーブルを囲むように皆が席に着く。なんだかシークレットソサエティーに足を踏み込んだような雰囲気で、私と友達は少々不安な心持ちになり、離れまいと、隣同志に座った。
参加者達は、持ってきたそれぞれのワインをテーブルに置き、Robertが手際よく皆にワイングラスを回す。紙袋は取られる事なく、ワインが注がれていく。ブラインドテイスティングなのだ! 
「じゃあ、僕から行くよ。」ホストのRobertが自分のグラスを持ち上げる。ライトの方に翳し、ワインの色を見る。そこから「Sight」に関する彼の描写が始まる。透明度、明るさ、濃度、色合い、ステイン、粘性、ガスの存在などを挙げて行く。次に、「Nose」。鼻をグラスに突っ込んで匂いを嗅ぐ。グラスをグルグル回してエアーを入れた後また鼻を突っ込む。様々なフルーツの名前や、ハーブの名前が次から次へと出て来る。スモークした木やら、腐ったピーチやら、猫のおしっこまで出て来る。ちょっと待ってよー、Cat peeってぇ。なんて思ってちょっと口を出そうとすると、Hushされた。終わるまで待ってと。Robertは続ける。「Palate」。ワインを口に含み、甘み、渋み、酸味、アルコール度、ボディーにテクスチャーと、味覚の描写が始まる。また一口含み、果物のキャラクターや、バランス、レングス、フィニッシュなどが続く。聞いていなかった友達が質問を投げた。またHush。「さっきも言ったように、質問は終わるまで待って。」は~い、、、。小さくなる私達。
これを3分ぐらいやった後、最後に彼の「Conclusion」が述べられる。国、地域、ヴィンヤード、ブドウの種類、ワイナリーの名前、そして年代、
どうやらこれを一人一人がやるらしい。常連の参加者もそれぞれRobertのように順を追って、長々と描写をしていく。私と友達は再度顔を見合わせる。マズイ、、、。

何に一番驚いたかって、彼らのワインを描写するボキャブラリーの豊富さ。甘い、渋い、ドライ、酸味がある、ぐらいしかボキャの無い私は なんとか振り絞って色々言ってみたが、3本目ぐらいから もうネタ切れ。いきなり「Conclusion」に入り、当てずっぽうで「Pinot Gris2014年!」なんて言う始末。

ソムリエの資格を取ろうと勉強する彼らは、本当に真剣だった。ますますビギナーレベルで充分です、と思う私達。彼らに読むといいと勧められた教材は「Wine Bible」。これを手に、ソムリエではなく、Level 1Introductory」(合格率90%)習得へ向けて頑張りたいと思う。



Posted on夕焼け新聞 2017年6月号

おいしい話 No. 120 「スパイスガール」


日本では料理に使うスパイスと言えば、コショウ、ニンニク、ショウガ、赤唐辛子の範囲で留まっている。ワサビやカラシはクックするというよりも、食べる時に付け合わせる物。サンショウを使う地域もあるが、うちの家庭は馴染みがなかった。
Food Networkの番組を見ていると、料理の材料に様々なスパイスが使われている事を知る。バーベキュー用の肉にまぶすスパイスや、手造りのソーセージに、煮込みスープや 色々なタイプのソースなど、聞いた事もないスパイスが入る。うちの家庭料理では見ることもなかった異国のスパイス達。 私にとってそれは未知の存在で、習った事のない数式を見せられているようだった。
例えば、バーベキュー用の肉にすりこむDry rubは、クミン、パプリカ、ガーリックパウダー、オニオンパウダー、チリペッパー、カイアンペッパー。これにブラウンシュガーやソルトが加えられる。ソーセージにはパプリカ、ガーリックパウダー、フェンネルシード、ブラックペッパー、ソルト、レッドペッパー。サーモンのBlackendにはパプリカ、カイアンペッパー、オニオンパウダー、ホワイト&ブラックペッパー、タイム、バシル、オレガノ、ソルトなど。なぜその組み合わせ? そしてその調合の割合に?
中国には「チャイニーズ ファイブ スパイス」というのがあるらしい。シナモン、クローブ、フェンネルシード、スターアニス、そしてセチュアン ペッパーコーン。たぶん日本の料理の「さしすせそ」のような、中華料理の基本の調味料なのだろう。 
中国4千年の時間をかけて、構築された組み合わせか。
ウィッキベディアによると、紀元前2000年頃には既に東南アジアや中東でスパイスのトレードが行われていたようだ。主に味付けや染色に、そして また食べ物の、得に肉類の保存剤としても使われていた。なぜならスパイスには抗菌性の要素が含まれているから。それ故に 時には薬としても使われていた。そういえば、風邪にはハニーレモンのホットドリンクにジンジャー、ターメリック、カイアンペッパーを入れるといいと言うもんね。

うーん、スパイスにどんどん興味が湧いてくる。
特にスパイスが身体にいいと聞くと、もっとスパイスの事を学び、一つ一つの特徴を知りたくなる。そしてそれらを日常の料理に難なく使えたらどんなにいいだろう。
スパイスを知りたい!スパイスガールになりたい! と思った。

さて、スパイスの事を知ろうという第一歩の所で、口がアングリする発見があった。それは「カレーパウダー」はスパイスの一つ、ではない、という事実。
カレーパウダーも 一個のスパイスで、このカレーパウダーというスパイスを入れるからカレー味になるのだと思っていた私。まさか多種のスパイスの組み合わせだったとは。(こんな驚きをしているのは、私だけ???)


であれば、スパイスガールになる最初のステップとして、自分でカレーパウダーを作ってやろうじゃないの、と思った。
スーパーの棚に並ぶカレーパウダーを手に取り、材料をチェックする。本当に色んなスパイスの名前が並んでるわ。コリアンダー、ターメリック、ジンジャー、フェンネルシード、クミン、ブラックペッパー、ソルト、ガーリック、チリ、フェヌグリークシード。インターネットのレシピを見てみると、これにマスタード、シナモン、クローブ、カーダモンなどが入ったりもする。
メイソンジャーに 一つ一つのスパイスを計量スプーンで量りながら入れる。ちょっと指で舐めてみたが、どれとしてカレーの味はしない。全部入れた後に蓋をしてよく振ると、カレーパウダーの黄色い色になった。そして蓋を開けて匂いを嗅ぐと、ちゃんとカレーの匂いがするではないか! 不思議だわぁ。

その日からカレー料理が続く。カレー味の野菜炒め、カレー味の麦ごはんチャーハン、ココナッツミルクを使ったイエローカレー、そして 大麦と野菜のカレースープ。カレーのスパイスが野菜の甘みをうまい具合に引き出すから、野菜が美味しく、モリモリ沢山食べられる。野菜の栄養と、スパイスの健康効果が一石二鳥で得られるカレーパウダー。素晴らしいスパイスの調合品だわ!

4日目にトイレに行くと、黄色い絵の具を水で溶いたようなおしっこが出た。あれ、ちょっとやり過ぎたかしら。いくら身体にいいからって、立て続けは良くないかったかも。
さて、次はどうするスパイスガール? 貰ったサーモンがあるから、Blackend用のRubでも調合するか。
プロのステージに立つまでに、長い実験の道は続きそうだ。



Posted on夕焼け新聞 2017年5月号

Sunday, May 7, 2017

おいしい話 No. 119「The man of stubborn」


世の中には、新しいテクノロジーの商品が出ると、発売と同時に手に入れる人々がいる。ラップトップコンピューターや、iPod、スマートフォン、タブレットに、ブルーレイやフラットスクリーンのテレビ。この間初めてコマーシャルを見たと思ったら、もう音楽は全部iPodに収めている、とか 携帯はスマホでなきゃ不便とか、映画はブルーレイでしか見ないとか、最新機能を持つ商品をすぐさま「欲しい!」と思い、簡単に受け入られるタイプの人達。発売したては値段も高いが、早く欲しい、という気持ちに駆り立てられ、清水の舞台から平気で飛び降りれる人達。
そういう人達と相反するところに立つのが、うちのハビー。新しいテクノロジーを素直に受け入れられない人。
この過去10年ほどの間で次々と発売されてきた様々な機能の商品達を、うちのハビーはことごとく否定してきた。ラップトップコンピューターも、デスクトップのコンピューターがあるからいい。iPodも CDをかけて聴けばいい。スマートフォンもフリップ型の携帯が一番機能が優れている。(それより以前は、携帯を持つ事自体を拒否していた。)タブレットや、ブルーレイプレーヤーや、フラットスクリーンのテレビなんか、必要性を全く見出せない。といった具合で、いちいちケチが入る。「ケッ」てな調子で電気屋に群がる人達を見下していた。
私はなんなんだろうこのオヤジは、と思っていた。こういう種類、何て言う?
やっぱりカメラはフィルムが良いと言う「アナログ派」か? いや、それはちょっと響きが良すぎる。ハビーの場合はもっと屈折している。あまのじゃくと言うか、ひねくれているというか、要するに頑固者なのである。人が良いという物を簡単に受け入れられないという性格。流行に、皆と同じように飛びつけない、頑固オヤジなのである。
ただハビーの頑固オヤジが頑固オヤジらしからぬところは、これらの商品を現在全部持っている、という事実なのである。ものすごく中途半端な頑固オヤジ、貫き通す強さはない。
仕事で必要だからしょうがない、という名目で、拒否していた携帯を買った。あんなに否定していたスマートフォンを今では一秒たりとも離せない状態で持っている。(世間で一番人気のiPhoneは引き続き拒否中。)仕事上ラップトップコンピューター無しでは生活できなくて、タブレットも器材の遠隔操作に便利だとロケに出かける時使っているし。

数年前、ある日ハビーが「しょうがないけど、ブルーレイプレーヤーが必要だ」と言い出した。これも仕事で、ブルーレイ用に仕上げたDVDがちゃんとブルーレイプレーヤーで再生できるかの確認作業の為だと言う。
「うちのテレビでブルーレイが観れるの?」
真空管の付いた分厚いテレビを指さす私。
「このテレビでブルーレイのクオリティを見る事はできないけど、再生できればいいんだよ。」と言う。新しいブルーレイプレーヤーを買い、10年前に買ったテレビに接続し、普通のDVDと共にブルーレイの映画を観ていた私達。

そして1週間ほど前、ハビーがついにこう言い始めた。「HDのテレビにしないと、今やっている仕事のクオリティーチェックができない。」
「ハッ! フラットスクリーンのテレビを買うの私達!!?」
「しょうがないけどね、仕事で必要だから。」
こんな風に、頑固で抵抗している期間が5年から10年。利点は、やっと購入を決心した時には、商品の価格が随分下がっている、という事。

5年前に買ったブルーレイプレーヤー。やっとその機能を確認できる日が来た。早速Best Buyに走る。(買うと決めたら行動は早いヤツ。)ウエブサイトで出ていた目玉商品を買ってくる。古いテレビをどかし、新品のフラットスクリーンをテレビ台に置く。ご満悦な表情のハビー。仕事の為にマスターしたブルーレイDVDを再生する。
「オッケー、バッチリ。」
仕事用に購入した割には、妙に嬉しそうではないか。

その翌日、家に帰るとテレビゲームをしているハビーがいた。2年ほど前に、テクノロジーやコンピューターに強い友人が、任天堂を含む数百というゲームをマッチ箱ほど小さい箱に搭載し、テレビにUSBのケーブルを接続するだけで、簡単にゲームが楽しめるというゲーム機を作ってくれていた。ハビーはそれを新しいテレビに接続していた。
「やーっとこれが使える日が来たよ。」
単調で間の抜けた音楽が画面から流れる。プレイしているのは1990年代の古いゲーム。「やっぱゲームはこの時期のが一番だねー。」

なぜ最初から否定しないで、普通に素直に受け入れらないのだろう、このオヤジは。
何から何まで。結局最後は全部折れてるくせに。
こういう人なんて言う? こんなハビーにつける名前、募集したい。




Posted on 夕焼け新聞 2017年4月号




おいしい話 No. 118 「心のパワー」


昨夜友人が産経ニュースの記事を送って来た。それは筑波大学名誉教授が発表する脳の研究に関する記事だった。
「脳の働きを制御するのは心」と太字で書かれている。人間の身体を統括する全ての司令塔は脳にあると考えられていたが、そうではなかった。その脳の動きを操っているのは自分の心であり、意識だ、と述べている。「脳はテレビやラジオの受信機のようなものであり、心や意識が真の創造者である。脳は私たちが『できる』と思っていることしかできない。逆にいえば、『できない』と考えていることはできないのだ。」
この節を読んで、色んな言葉のピースが頭を駆け巡った。新しい研究結果に対するお驚きよりも、むしろ「やっぱし、そうなんですね、、、」っていう思いだった。
昔の人の諺には、正当性があっていつも感心するのだけど、「病は気から」も、そういう事なんだよね。この間受けたSpiritual readingでも、「事故やアクシデントはありませえん。病気も、自分で選んでいるんです」って、言われたし。NIKEの「You Can Do It!」も科学的根拠の元生まれたキャッチコピーなのかもしれいない。アメリカ人がよく、出来もしないのに(と私は思っている)なんでも「I can do it」と軽く言う事をうざく思っていたけど、実は非常に必要な態度であり、アホの子の発言ではなかったようだ。でもあのアメリカ人のポジティブシンキングのルーツは何なんでしょうね。
登校拒否の子が 朝になるとお腹が痛くなるとか、本当はTic Tacなのに、頭痛に良く効く薬と言って飲ませたら、痛みがなくなったとか、火事場の馬鹿力というか、もうやるっきゃないという状況に追いやられると、人間って無理と思ってた事ができたり。アスリートが自分が勝つというイメージトレーニングをするのも、ブリットニー スピアースが10歳の時から 自分は歌手になると信じていた事も。筑波大学名誉教授の言っている事、Make scenesです教授!と思った。

そして、人間のDNAは書き換え可能な設計図であり、生命を支配する絶対的なプログラミングではないと述べている。これには驚いた。DNAが人間の個々の生態を確定していると思われていたのに、これも真の支配者である「人間の意識」によって書き換え可能なんて。更に記事は心身医療のデイーパック・チョプラ博士の言葉も述べている。「慢性病は意識がつくり出している。怒りや恨みや憎しみなどの感情を持つと、それが悪い遺伝子を活発にしてしまい、ガンや心臓病の原因となる炎症を起こす。一方、喜びや愛、他人の成功を喜ぶという感情を持つと、良い遺伝子が活発になり、身体は病気にかかりにくくなって、肉体年齢も若返る。」つまりは、心の思いや意識を使って、脳を操らなければならない。
そういえば Spiritual readingでも、「Fear」は元々人間の観念には無かった「Poverty Consciousness」で、人間が存続する歴史の中で「学んだBehavior」なんですと言われた。そして、Fearが出て来たら「Delete」して下さい、と。
全ては心の持ちよう、と言うけれど、本当に人は心の持ちようを変える事によって、遺伝子のオンとオフを切り替えれるなんて。なんだか とても、単純で簡単な響き、、、。

そしてまた別のピースが頭を過った。昔従妹が、「脳ってね、辛い状況の中でも顔に笑顔を作ったら、あ 幸せなんや、て思って、どんどん幸せのホルモンを出すから、作り笑いから 本当に幸せな気持ちになるんやって。だから今日から無理やりでも笑顔を作っていくで!」と言っていたのを思い出した。どんどん、脳という物が 単純な細胞機能に見えて来る。

じゃあ、この人間の「心の思い」とか「意識」とか、どこで発生しているの?ていう話になるよね。このコントロールの効かない、怒りとか嫉妬とか悲しみとか苦しみとか。そういう感情の根源は何? 感情の湧水の発生地は何処? それが、人間という生物の不思議さか。どうやって この激しく溢れ出るネガティブな感情を、いかに意識を持ってオフにし、ポジティブシンキングに切り替えるか。それがカギのようだ。

この記事は最後にこう綴っている。「一般に、頭がいい人と悪い人がいるといわれているが、脳そのものにはいい、悪いの区別はない。使い方によって、良くなったり悪くなったりする。脳を上手に使えば、思いは必ず実現する。」
なんと希望のある見解。豚もおだてりゃ木に登る、という事ではないか!

とにかく人間は心のパワーを持っている。だとしたら、これはもう大いにに使うしかないでしょ。賢く使って、夢を叶え、長生きする。実験してみる価値はあるよね。




Posted on 夕焼け新聞 2017年3月号





おいしい話 No. 117 「森山直太朗」


日本に帰った元ルームメイトと 年明けにEmailのやり取りをしていたら、「どうでも良い話なんだけど、、」と 主題を変えて別のメールを送ってきた。去年 森山直太朗の歌を直で聴く機会があったようで、「その時の歌に感動し、それ以来 すっかりファンになっちゃって」と 森山直太朗のアルバム発売記念に子供を連れて行った写真が張り付けていた。「今年の冬休みは、ポートランドに行ってたってツイッターに書いてあったよ!」と、嬉しそうに報告してくれた。
森山直太朗。なんか聞いた事あるなあ。でも写真を見てもピンとこない。森山良子の息子だったっけ? 歌は聴いた事ないけど、森山良子の息子だったら、爽やかな感じなんだろうなあ。ま、森山良子の歌も真面に聴いた事もないけど。なんて言っていると、「今度送ってあげるよ!」と言ってくれた。好きかどうかわからないけど、是非聞いてみて!と。

その会話から5日後、うちの郵便受けに 彼女からの封筒が入っていた。「早っ」。
送られてきたのは「森山直太朗 大傑作撰」と、大題の付いたアルバムだった。なんか、曲を聴くまでもなく、もうこのジャケットのデザインから日本を感じる。

その夜、ダウンタウンでご飯を食べた帰りの車の中で かけてみた。ステレオから流れるメロディーとその歌声は、昔のフォークソング的な、優しくソフトで懐かしい音色だった。なんだか日本の道路を走っているような錯覚が起こる。お母さんの血をそのまんま受け継いだかのような 高く伸びる声。今時なのか、懐メロなのか、昭和と平成の間を行ったり来たりするような、中性的だけど直球な詩とサウンド。そんな風に思っていると、懐かしい曲のイントロがはじまった。「あ」一瞬にして、昭和に引き戻された。「若者たち」

「君の行く道は 果てしなく遠い
だのになぜ 歯をくしばり
君は行くのか そんなにしてまで」

じわじわと目頭が熱くなる。胸が込み上げる。そして 涙が流れ出す。
自然と口が開き、一緒に歌い始めた。

「君の行く道は 希望へと続く
窓にまた 陽がのぼるとき
若者はまた 歩きはじめる」

泣き面に、ぶれぶれの震える声で 森山遼太郎と合唱した。
一体何が起こっているの?どういう現象コレ??
さっき飲んだワインのせいか。涙が出てしょうがない。

自分の「大傑作撰」にこの曲を入れるとは、なんとも渋いではないか。やっぱ昭和生まれか。家に帰った後、もう一度、友達が送ってくれた写真を開いてみる。
15周年記念オールタイムベストアルバム「大傑作撰」発売記念、森山直太朗 感謝状贈呈式」と書かれたサインが金の屏風の上に掲げられ、その屏風の前に並ぶ森山君と、私の友達とその息子。森山君が感謝状なるものを息子に手渡している。記念アルバムのCDを買ってくれたファンへ、ってことなんだろう。なんか、売れている人のわりには、地味なアナログ感が漂う。
しかし こう言っちゃ失礼だが、顔と歌声が一致しない。本当に失礼だが このお顔からあの繊細な声が?と思ってしまう。
まだまだまじまじと観察する私。白いシャツにベストを羽織り、数珠のネックレス。七分丈のパンツに 片足アンクレットに サンダルシューズ。なんと彼の白いシャツの裾からは、ほどけた糸がバラバラと垂れている。まるで何年も着倒したシャツの如く。男前のお兄さんなんだけど、私の腹の笑い虫がムズムズしてくる。

見るんじゃなかったかなー。アタシのさっきの涙は何処へ。
ポートランドに来てたって言ってたけど、もう絶対わからないと思う。というか、ポートランドに馴染み過ぎてしまうんじゃないかと思う。
「もうひとつ!」と友達から追加のメールが来た。
「この前ポートランドに行ったのは、KINFORKっていう雑誌が好きで行ったみたいだよー。」なんじゃらほい。
是非次回ポートランドを訪れる時は、PSUのキャンパスでゲリラコンサートをしたり、Mississippi Studio辺りでライブをしてほしいものだ。うちの近所の教会を借りて ギター1本の弾き語りでもいい。
色々言いたい事言ってる私だけど、私の友達のように、直に歌を聴いたら、本当にハマってしまうのかもしれない。

まだ車のステレオに入っているCD。車を走らせる度に、日本にワープする。時にウルウルしながら 思いに浸る。ちょっとしたエスケープの空間ができる。今の自分や、日本で育ち、暮らした昔の自分を思い出す、私独りの空間。そういう空間を作り出す「森山直太朗 大傑作撰」、(車)一台に一枚かも。

「直太朗を共有できて嬉しいよ!」by 私の友達。




Posted on 夕焼け新聞 2017年2月号






Friday, January 27, 2017

おいしい話 No. 116「ホリデー商戦」


Thanksgiving holidayのトラディションであるBlack Fridayに、どれだけの人が踊らされているのだろうか。アメリカに移住して最初の数年、毎年巷で盛り上がるこの異様な雰囲気に、何かものすごくお得なものを見逃していて、損をしているような気がしていた。アメリカの習慣を習わずして アメリカに住んでいるとは言えぬ、と思い、ある年ついに私はBlack Fridayのセールに出動する事を決めた。
Thanksgivingの夜、目覚ましを4時にセットして寝た。なぜこのセールはこんな早朝から始まるのか不明だが、トラディションなのだから仕方がない。頑張ってやっと6時にモールに着いた。買い物客でごった返しているのかと思いきや、そうでもなかった。(6時じゃ遅かったか?) しかし、置いてある商品も、その値段も、先週来た時と変わってないではないか。爆発的なセールはどこで行われているわけ?? 私の想像では、どの店も値下げの赤札を店中に掲げ、1日限りの叩き売りをしているはずだったのだが。
身体のシステムに反して早起きをし、モールをウロウロした私は、フラフラになって家に帰り(手ぶらで)、そのままベッドに倒れ込んだ。
アメリカ人の友人にこの経緯を話し、自分が味わったヤラレタ感をぶつけると、「ダメダメそれじゃあ」と、逆にダメ出しをくらった。目的無しにただ行ってもダメ。事前にチラシを入念に見て、どの店でどんな商品がどれだけ安くなるのかを調べておき、その商品を狙って、開店と同時に入る計算で現場に到着していなければならない、と言う。Ahh…無理です。
それ以来、私はThanksgivingのトラディションから遠のいていた。その間、Black Friday
Thanksgivingの夜から始まるようになったり、Cyber Mondayとやらがスタートしたりと、トラディションにも変化が起こっていたが、他人事だった。Woodburnのモールに入るI-5の渋滞を横目で見ながら、「ご苦労さん」と思っていた。
だいたい、クリスマスやヴァレンタインデーと同じで、企業の企みに踊らされているだけで、消費者が本当にどれだけの得をしているのは疑問なところ。お祭り気分はいいけれど、蓋を開けてみたら 無駄にお金を落としているだけじゃないの。
そんな批判をしている私の所にもお構いなしに 安売り広告のEmailが入る。一日に同じ会社から何通も入る。このDealは何月何日までよ。この日を逃すとこんなオイシイDealはもうないわよ。これが最後よ。これが最後よ。
毎日EmailInboxが広告メールで一杯になる。消しても消しても30分後にはまた新たなメールが入っている。BombardingCyber abuseGroupon
とうとう私は睨めっこに負け、GrouponからのEmailを開けてしまった。その時点で、すでにGrouponの罠にかかっていたと言える。日曜日の午後、パジャマのままで、ずーっとコンピューターに向かい、クリック、クリック。赤字の金額を見ては、カートに放り込む。オーブン対応化のガラスのコンテナ、いいわねえ。14ピース。ちょっと多いけど、ま、いいか。フリースのLeggings 6パック、色のバラエティーがあるからいいわ。あら、この柄のLeggings6パックもホリデーチックでかわいいじゃない。ホテル使用の枕が4個でこの値段?安い! こんな調子で合計8点の商品をを購入。Grouponの攻撃を逆手に取って、賢い買い物でやり返してやった気分だった。

そして戦略の魔術が消えた頃、注文した商品もパラパラと届けられた。14ピースのコンテナって、蓋もカウントされてたのね。6色のLeggings、この写真と違うまっかっかと真っ青なカラー、誰が履きこなせるの? ワンサイズのはずの柄のLeggings、ブカブカだったり、膝から上に上がらないほど小さかったり、バラバラじゃん! 4個のうち1個の枕は縫い目が破けて綿が覗いているし。え、綿!?
Grouponのカスタマーサービスに返品したいと申し出ると、「Final sale」って書いてたよね?と。な、なんちゅう、、、、。

「あの新しい枕、柔らかすぎるんだけど。」朝起きて来るなり文句を言うハビー。「…...。」「君じゃないか いつも安い物を買うな、って言うのは! 安物買いはお金をドブに捨てるのと同じだって!」
「そうよ!安い物を買うとこういう事になるのよっていう証明をしてるのよ!」

またしてもThanksgivingのトラディションにヤラレタ私。企業のホリデー商戦に完全に踊らされてしまった。(ホリデー商戦て、企業と客の戦い、ていう意味か。)本当にあの友人が言ったように、ずーっと狙ってたあの商品があそこの店で 通常の値段から これくらいの値引きがされる、という事前の下調べがあったうえの購入でない限り、赤いフォントを追ったクリック、クリックの買い物は、安物買いの銭失いとなるのである。
Lesson learned?


Kiki

Posted on 夕焼け新聞 2017年1月号



おいしい話 No. 115「Before the Flood」


ある休みを取った平日、ダラダラとテレビでお昼のショーを見ていた。チャンネルをパラパラと替えて、なんとなく止まったのが「The Ellen DeGeneres Show」だった。お父ちゃんになったJustin Timberlakeが出ていて、子供の話をしたりして、ヤツも大人になったもんだ、なんて見ていると、番組の最後の方で Leonardo DiCaprioが特別出演で登場した。思わぬビッグスターの登場に観客は狂喜していたが、彼のミッションはシリアスだった。
そのミッションは、Leonardoと彼のチームが制作した、地球の気候変動、温暖化に関するドキュメンタリーフィルム「Before the Flood」の紹介だった。彼はこのフィルムを見る事の重大さを語り、人々に大統領選挙の前に必ず観て欲しいと訴えていた。National Geographicのチャンネルで1030日より放送され、YouTubeなどで117日まで無料で見れる、という事だった。
大統領選の投票日まで一般に無料で公開する、という行為に興味を持った私は早速YouTubeのサイトに行って そのドキュメンタリーを観てみた。Leo様はPriusなんかに乗ったりして、エコな男だというのは知っていたけど、3年かけてドキュメンタリーフィルムを作っていたり、ここまで真剣に環境問題にコミットしているとは知らなかった。
フィルムは 良く出来ていた。環境問題に無知だった私は かなり学ばされた。北極やグリーンランドのアイスは確実に溶けている。海岸の水嵩が増え、住まいを追いやられる島や晴天の日に洪水が起こる町がある。この温暖化の原因は、人工による温室効果ガスの増加によるものであるとされている。
石油、石炭、天然ガスの大量使用と、森林の減少や海の汚染による温室効果ガスの濃度の上昇。つまり、森林や海が大気内の二酸化炭素などのガスを吸収して自然のサイクルを促しているが、森林破壊や、化石ガスの燃焼や、海の汚染などにより、その自然のバランスが崩れ、異常発生しているガスが大気内に溜まり温室効果の現象を起こしている、との事。
ショッキングな映像が沢山あったが、その中でも特に、インドネシアのPalm treeの広大な範囲による森林火災や伐採だった。そこにはインドネシア政府とPalm oilを原料とする商品を製造販売する大会社の癒着により、状況は改善される事無く、事態は深刻になっていくばかり、という説明があった。関与している大会社のリストに日本の大手会社の名前を見た時は 心が痛かった。
そしてもう一つ驚いたのが、牛の牧畜によるメタンガスの発生量。牛から吐き出されたメタンガスが、温暖化の原因の一つであると取り上げられているなんて、アメリカはそこまで影響を与えるほど大量に牛の生産をしているのか! いくつかの大手ファーストフードチェーン店を思い浮かべる。普段からそういう所には行かないけれど、考えると気持ち悪くなってきた。友人のベジタリアンが「環境問題の為に肉は食べない」と言っていた意味が今やっとわかった。
Leonardoが選挙前に無料でこのフィルムを公開した理由は、地球温暖化を誤まった情報だと公言し、容認しない政治家がいる為に、その貴重な一票をよく考えて投じて欲しいという願いあっての事のようだ。地球温暖化を無知でバカげた誤報だとする政治家達は 温室効果ガス発生の原因を作り出している大会社から大きな支援を受けているとされている。そういうビッグガイ達を相手にいち個人が出来る事は、自分達の住まいの中で、エネルギー消費の節約を心がける事。

私がこのフィルムを見て決めた事は、Palm oilが使われている商品を出来るだけ買わない事、そしてファーストフードチェーン店に行かないのは元より、肉の購入の頻度を抑え、必要な時は、ローカルのファーマーから購入する事。
No more Doritos for you!
悲しい目を向けるハビーに厳格に言いつける。
Palm oilの難しい所は、口紅から、マーガリンから、菓子類から、インスタントヌードルから、洗剤まで、様々な商品に使用されていて、原材料名が単純に「Palm oil」でなく、色んな名前に変わって表示されている事。真剣なアクティビストになるには、更なるリサーチを必要とする。

ゴシップ番組やタブロイド紙でスクープされるLeo様のデート風景は、ガールフレンドは変われども、毎度チャリンコ。その徹底ぶり、やっと納得。

選挙が終わった今、もうYouTubeでは無料では見れなくなっていたけれど、Googleしてみるとhttp://docur.co/documentary/before-the-floodのサイトが出て来た。そのうちDVDの発売もあると思うので、是非多くの人に観てもらいたい。



Kiki

Posted on 夕焼け新聞 2016年12月号