Saturday, January 31, 2015

おいしい話 No. 93「Day of Gluttony」


ハビーに持ってこいの仕事が来た。

24 Portland Restaurants in 24hrs / Day of Gluttony

1日に24件のレストランを回り、ひたすら食べまくるという、あるインターネットのサイト番組が、ポートランド編の撮影を行うことになった。ハビーは音声として参加することになったのだが、試食にありつけるのではと、期待が高まっている。

ハビーも私も相当食いしん坊だと思ってたけど、上には上がいた。私なんかこうやって文章にしてレストランの良し悪しを語っているが、世の中にはもっと行動的な人達がいて、レストランにカメラを持ち込み、食いしん坊の番組よろしくビデオセルフィーしながら、自分で評論し、それをアプリを通してレストラン紹介サイトに載せている。それもプロまっつあおなアクションと表現力とコメント。素人には見えないタレント性を見せる。しかもそれの良い所は、美味しい!すごいよ!と紹介したい店しか投稿されない事。ハビーと私のように、肩を寄せ合って、小声で「ダメじゃね、ここ?」という、暗くネガティブな批評は掲載される事はない。

HarryBruceTastemadeとうサイトのアプリを使い、サンフランシスコを中心に、自分が訪れたレストランの紹介を投稿していた。彼らの軽快なトークと、クールな西海岸風スタイル、他の素人とはちょっと違うセンスの良い撮影のテクがTastemedeのスタッフの目に留まったのか、Googleがスポンサーとなり、彼ら独自の番組を作ることになった。それが1日に24件回る「Day of Gluttony」。

人生本当に何が起こるかわからないね。今はYouTubeへの投稿で人生が変わる世の中。HarryBruceもただ食べるの好きで、いろんなレストランに行く事が趣味で、そこからTastemedeへ。そんな単純な経緯から、大手がスポンサーに付くビジネスにつながっていく。ほんと運命ってわかんないもんだ。

とにかく、このプロダクションが、西海岸を上昇し、ポートランドに来るという。ポートランドで24件、一体どこのレストランを選択したのか。そしてハビーが期待しているほど、Crewにその試食の配分が回ってくるのか。「ま、なんかありつけたらいいよね。」仕事というよりも、そんなノリ。

1日に24件回る、と謳っているこのショー、本当に1日で24件撮影するのか? ハビーの説明によると、CrewA班、B班に分かれ、それぞれが12件を担当する。A班が撮影をしている間に B班が次のレストランで現場の準備をする。B班の準備ができたことろにHarryBruceが入り、撮影を行う。その間にA班が次の現場準備の為に移動。HarryBruceA班とB班の間を縫いながら、事実上24件回る、とう構成だ。2日、3日かけて撮影し、後で編集で繋ぎ合わせているわけではない。相当プロデューサーがしっかりしてないと、成功しない技である。

私はハビーに行く先々、店の名前をテキストしてくるように,とリクエストした。撮影は早朝から始まった。一件に対し、約45分ほどの撮影時間で次の店に向かう。B班に配属されたハビーからピロロ、ピロロとテキストメッセージが入る。「Jam on Hawthorn」、「Genies Café」、「Coava Coffee Brew Bar」。午前中はカフェやベーカリーを回っているようだが、聞いた事がない店ばかり。

午後は「Kure Juice」と「Teote」に行った後に、「Water Avenue Coffee」へ。やっとここで知ってる店の名前が出た。続いて「Basecamp Brewing」、「Whiskey Soda Lounge」。ハビーから「Great Juice」とか「The pancake was amazing!」とか「Love their coffee」と、自分のコメントを添えて送られて来る。マジで試食にありつけてんの?

KachkaAwesome Russian Restaurant!」聞くところによると、KachkaWillamette Weekで「2014 Restaurant of the Year」に選ばれた店だとか。知らない、、、。

Pix Patisserie」、「Tannery Bar」、を経た後、最終地点の「East Burn」でA班とB班が合流して、最後の撮影を行う。終了したのは夜中の2時。

HarryBruceは本当に一件一件、綺麗に平らげていたの?死ぬよ。ハビーのインサイダー情報によると、最初は本当に平らげていたようだけど、これは続けていられない、と判断し、料理が出されて、イエーイと二人が何口が食べた後、一回カットして、Crewが残りを食べ、しかっり平らげたぜ、という後半にまた撮影をしたようだ。そりゃそうよね、いくら「Gluttony」と言っても無理でしょ。ああ、それで あのハビーの試食のコメントなわけね。

しかし、サンフランシスコから来たこのプロダクション、どうやってポートランドのこれらの店を選んだのか。A班のリストも見せてもらったけど、当たり前のポートランドセレブ店が ほぼ入っていない。

実はスタッフが1週間ほど前に現地入りし、歩いてエリアを回り、そこでハングアウトするジモピーにインタビューをしてリサーチしたとか。すごい。大きなプロジェクトに発展しても、やっぱり基本の食いしん坊精神は現存したままなねの。実際こうやってポートランドで撮影されている今、同スタッフはシアトルに移動し、足でシアトル編のリサーチを始めている。彼らのハングリー精神には脱帽です。いつしか海外にも足を延ばし、「24 Tokyo Restaurants in 24hrs / Day of Gluttony」なんてEpisodeUpされる日が来るかも。

 
Kiki

 

Day of Gluttony by Tasemade (Episode 1 -3 as of Dec 18 2014)


Harry & Bruce original contribution through Tastemade Apps.


 

 

Posted on 夕焼け新聞 2015年1月号

おいしい話 No. 92「食欲という欲望」


Albertaに住んでいた時、年々ビジネスで盛り上がるストリートを見ながら、居酒屋ができるべきだ!とハビーに訴えていた。今流行りの 家の改装転売をすでに始めていたウチの大家にも、当時買ったばかりの古いテナントビルに、居酒屋を入れてくれ、と直に提案した事もあった。しかし 私の思いは神様にも大家にも届かず、願いが叶う事無くAlbertaを離れる事になった。

あれから2年、先日Albertaに居酒屋ができた、という情報が入って来た。

「なぬぅー?! 今頃なんだってぇー?」

悔しい、なんで私がAlbertaを去った後にできるわけ?

居酒屋の名前は「Bamboo Izakaya」。なんかよさげな名前じゃん。今 個人的にMaruが気に入ってるけど、それと並ぶか抜くのか。早速Websiteを探し、メニューを引き出した。なんとなくMaruに似た串焼きを揃えてる。本格的に備長炭で焼くらしい。また写真がソソる。良い頃合いに焼けた串や、いかにもという居酒屋の雰囲気を出したスナップショットを掲載している。たまらん!

が、しかし、同じ串でもMaruと比べると$1-2高い。これは結構問題だぞ。

この新情報をレストラン開拓好きの友人に教えてあげた。

「ああ それ、Bamboo Sushiでしょ。」「えっ、Bamboo Sushiなの!?」

いつか、ポートランドのローカルレストラン チェーン店現象の話をしたいと思っているけど、このBamboo IzakayaBamboo Sushiの“チェーン店”だと知った時の落胆は隠し切れなかった。そりゃMaruより$1-2高いわけだ。頑張ってるアメリカ人がファンシーな値段で提供する「Izakaya」。そんなお馴染みの印象が私の最初の期待感を踏みつける。

それから23週間、忘れようとした。私のカンは当たってるはず。行っても、やっぱりガッカリして店を出るのが落ち。でも、Websiteの写真のイメージが消えない。Reviewのコメントが頭から離れない。これは もう百聞は一見に如かず。行って確認するしかない。私の偏見が誤りであるか否か。

ハビーと備長炭の炉が設置されているカウンターに座った。店内は写真で見たように、昭和のポスターや、駄菓子屋で見るようなキャラクターや、木版のメニューが飾られ、雰囲気作りは良くできていた。この木版に平仮名で書いてある品々は本当のメニューには載ってないけどね、とハビーに耳打ちする。

You need to leave them alone」とハビーに注意を受ける。

さて、何から行きましょか。最初はビールでしょ。Tsukune $4Beef Skirt $4 Short Rib $12は飛ばして Pork Belly $3。それから Shishito $3 Okura$3 で取り敢えず。後はKimuchi $3を突き出しに間を持たせる。

一本づつサーブされる串は、あっという間にハビーと私の口の中に消えて行く。味は悪くない。Small PlateからMiso Glazed Japanese Eggplant $4を注文。これも美味しかった。Seared Scallop $9が気になる。大好きなScallopだが$9か、、、。仕方ない、注文するべ。お皿に一個だけ乗っかって出て来た。美味しいよ、でもこの一個で$9はどうなんんだろう。Bamboo Sushiチェーンらしいけど。そして本日のスペシャルのPork Ramen $7を注文。ちぃーちゃーい器に入ったミニラーメンは、出たよまた、という味だった。Kojiならこの値段でまともにラーメン一杯食べれるのにね、とまたハビーに耳打ちする。「I know」今回はハビーも同意。

焼酎オンザロックを一杯づつ頼み、さて そろそろ寿司に、とメニューを何回もひっくり返すが、寿司が無い。………..寿司がない!!

この時点で$60を超しちゃっているわけだけど、全く満腹感がない。夜遅く飲みにだけに来て、摘みに二、三品頼むならいいけど、夕食に来るところじゃあないぜ、と思った。

もしまだAlbertaに住んでいたら、「だから 違うって!」と吠えていただろう。

現在、すっかり近所の行きつけになった憩いの大衆食堂Kojiを思う。美味しい食事を堪能した帰りに、「じゃマクドナルドに行くか」と言うジョークをよくやるが、今回は「Kojiで寿司か?」に、真剣に頷いた二人だった。

AlbertaからBroadwayまで南下一直線。Kojiに入ると満席で3組のグループが入口で待っていた。こんな光景初めて見た。自分の彼氏は普通で、ちょっと他の魅力的でトレンディーな男に付いて行きそうになったけど、実は自分の彼氏は とっても人気者である事を発見した、という感じだった。ごめんなさい、ヨソ見しちゃって。

すぐに座れるバーに席を取り、握り寿司を何種類かとネギハマロールを注文する。アペタイザーとメイン、レストランのハシゴをしてまでも、自己の欲求を満たそうとするアタシ達。時々失敗するが、それでも抑えられない。食欲は 私達の理性もコントロール能力も不能にさせる。

結論として、私のカンは当たっていた。Maruを超える事はなかったし、KojiComfortを与えてくれる所でもなかった。開店したばかりだし、Bamboo Izakaya、試行錯誤しながら、向上して行って欲しい。少なくとも、女の子とデートの最中に他の男を思わせ、その男の所に掛けて行きたいと思わせるような、そんな存在にだけはならないように。

 
Kiki

 

Bamboo Izakaya North East

1409 NE Alberta St, Portland, OR 97211
(503) 889-0336


 
Koji Osakaya Lloyd Place

1502 NE Weidler St.  Portland, OR 97232

503-280-0992

http://www.koji.com/lloyd.html

 


Posted on 夕焼け新聞 2014年12月号

おいしい話 No. 91「パーソナル スタイリスト」

 パーソナル スタイリストとは お金持ちだけが持てる特権だと思っていた。世の中に、パーソナル スタイリストという仕事があるっていうのも不思議だけど、要はセラピストやカウンセラーと同じよね。物理的に購入する品はないが、そのサービスを受けて気分が良くなる、っていう。パーソナル スタイリストの場合は、プロを雇って、ショッピングをする。こんな贅沢な話はない。

そんなお金持ち体験が 庶民の私にもできるのか、と思ったのが、Nordstromの広告を見た時。

PERSONAL STYLIST FAST, FUN, AND FREE…” AND ZERO PRESSURE

FreeそしてZero pressure。  マジですか?

Nordstromといえば 老舗のデパート。扱っているブランドは高級品ばかりで、私なんか化粧品売り場止まり。洋服売り場まで行く事は ほとんどない。が、タダでハイソなマダム気分になれるなんて、そんな楽しい事はないではないか。

女友達2人から グル―プメッセージが入る。

What should we do for next holiday???

We should do something fun!

But what?  What could possibly be fun for us now??

いろんな事をやり尽した40過ぎの女達は 1日ぽっかり空いた休日をどう過ごしたらいいのかわからず、ほとんど恐怖におののいていた。

Ladies

例のパーソナル スタイリストのサイトを2人に転送する。

I suggest we should do this!

私達が選んだのは1時間のTrend Consultation。スタイリストが最新のトレンドと、まだ誰も目に止めてない新入荷品を紹介してくれる、というコース。

ずらずらとリストされてるスタイリストの中から、目をつぶってエイヤッと選んだKathyとアポを取る。

次の日、Kathyからメールが来た。私のサイズや好きなカラー、具体的にどういう物を探しているのか聞かせてくれ、と言う。私は自分がよく選ぶ色やデザインをあげ、探しているのは仕事にもアフター5にもいけるスタイルと言い、でも自分が普段選ばないスタイルにもチャレンジしたい、とリクエストし、予算はかなり低め、あんまり高いものは狙っていない、と念を押し、お金持ちじゃないのよ、期待しないでね、というところを強調した説明の返事をした。

これを元に、私の到着前にスタイリストが選んだ洋服を フィッティングルームに用意してくれている、というのがアイデア。

こんなEmailの説明で、会った事もない私に見合った洋服をKathyは事前に選べるのか。不思議だ。

当日、私達はワクワクしながら、Nordstromダウンタウン店の2階洋服売り場に出向いた。私のスタイリストKathyはちょっとぽっちゃりしたおばさんだった。Kathyは私をフィッティングルームに案内してくれ、彼女が用意した洋服を見せてくれた。

. .。」

やっぱ1回のメールの説明だけじゃ、無理よね。私の事知らないのに、「自分が普段選ばないスタイルも」って言われたって、わかるわけない。別の意味で、彼女が選んだ服は、本当に私が選ばないスタイルだったけど。

私達は一緒にフロアに出て、改めて目に留まる服をピックアップすることにした。あれ、結局自分で選んでない?

2人の友達も合流し、フィッティングルームはハンガーにかかった洋服で埋めつくされ、私達の貸切になった。ブラとパンツ一丁で 試着開始。

「これ、なんか違う」「ちょっと足が太くみえない?」「それセクシーじゃない!」「いいっ!

フィッテイングルームに設置された鏡張りのステージに代わる代わる立ち、ポーズを取り、お互いにコメントを投げ合う。スタイリストのアドバイスを聞くというよりも、好き勝手に自分の服探しに夢中になっていた。

No pressureだから、買う必要ないのよ。それはわかっている。ただ、それが仕掛けというか、10着も20着も試着すると、欲しい物が出て来るのよ、これが。ふと見ると友達はしゃがんで、購入候補をカーペットに並べている。「これでしょ、これでしょ、それから これでしょ。」「この足が細く見えるジーンズは絶対買いでしょ」、と言いながら札を見る。$200。「ギョッ。」

私はブラウス2点と、皮のジャケットを睨みつけながら唸っている。ジャケット1$300。行ってしまっていいのか。もう1人の友達は、1$150のハイヒールの色違いを、何度も履き替えている。マダムの賓や余裕など全く無し。スタイリスト達は、クライアント用のソファーに座り込んで じーっと私達の様子を伺っている。1時間のはずが、2時間経っていた。

「やばい、合計すると$500になる。」「アタシは$600よ。」「でもさ、日本にいたら、洋服に5万円なんか普通ジャン。」「だよねー。」

意味のない、気休めの円換算。Nordstromのフィッティングルームで、すっかりのぼせた私達の思考は 完全に脱線していた。

試着で体力を使い果たした私達は、ハッピーアワーのシャンパンでエネルギー補給。スタイリストのセンスがどれだけ生かされたかはともかく、気に入ったアイテムが見つかったのは事実。椅子に掛けた紙袋を満足気に見下ろす。「体験だけ」のつもりだったけど、やっぱり「Free」に動かされて「Free」で済む物は無い。後でクレジットカードの明細に凹む事は目に見えているが、ちょっといつもと違う気分で買い物が出来た事は、パーソナル スタイリスト体験=マル、としておこう。

 
Kiki

 
Nordstrom Personal Stylist




Posted on 夕焼け新聞 2014年11月号

おいしい話 No. 90「死ぬまでにやる事」


誕生日を数週間先に迎えたハビーが、突然スカイダイビングをやりたい、と言い始めた。先日呼ばれたパーティーで、ハビーの友達が スカイダイビング体験談を語っていたのが発端。彼のエキサイティングな話は、人々の興味を引き付けた。ハビーもその群がる輪の中で、目を光らせて話に聞き入っていた。「やりたい!」私に顔を向け、賛同を求める。

「ずーっとやりたいと思っていたんだ!」

うそ、今まで一言もそんな事言ってなかったじゃない。

その日から、ハビーは人に会う度に、スカイダイビングはもう何年越しの夢なんだと語り、一緒にやらないか、とけしかけていた。

皆薄笑いで、特別返答はしない。彼らは私に目を向け、君は一緒にやるのかい?と尋ねる。私も薄笑いを返し、ごまかしていた。

できるわけないでしょ、そんな事。考えた事もないわよ。変な知恵つけれられて困ったもんだわ、と思っていた。

「やりたい!」「やりたい!」「やりたい!」「一緒にやろう!」

欲しい物を得るまで 駄々をこねる子供状態で、ウルサイったらない。

誕生日まで1週間となった。やばい、スカイダイビングをするつもりはないが、他にプレゼントを用意してるわけでも無し、、、どうすんのよ、誕生日の日!?

そこでちょっとだけ、興味本位で オレゴンのスカイダイビング情報をサーチしてみた。一体おいくら万円するわけよ、スカイダイビングって。

出て来たのが、Molalla市にある「Skydive Oregon」。Tandemというプロのインストラクターと一緒に飛ぶスタイルで$190-200。高っ。

ウェブのページをスクロールダウンして行くと、First timerの女の子がTandemでチャレンジするビデオが出て来た。何気にプレイを押してみる。一緒に飛ぶインストラクターが 始終片手にカメラを持ち、この女の子の初ダイブを撮影した映像だった。

ビデオを観終わった時、「やるか?」と思った。

トシのせいだろうか、人生後半に差し掛かると、残りの人生をどう生きるか、なんて事を考え始める。自分はいつまでも生きているように思うけど、ちゃんと終わりは来る。そうなると「Once in a life time opportunity」が目の前に現れたなら「やる!」のポリシーで生きていかないと!

だからと言って、その命を短くするかもしれない危険な事に手を出すこたあないだろ、て話だけど、そうなったらそうなったで それも人生。急にポジティブになる私。

いろんな人達を引きづりこもうとしたが、当日、現地に現れたのはハビーと私の2人だけだった。「今日は生まれて一番最高な誕生日だ!」とはしゃぐハビー。私は酔い止め薬を飲み込む。

開けた平地に滑走路が敷かれ、スカイダイバー達を運ぶセスナが離着陸する。その向こう側に 先に飛び立ったダイバー達が、パラシュートを広げて 空からゆらゆらと降りて来るのが見える。あれだ、数分後には あれがアタシ達なんだ!

まずはグループに分かれて講習を受ける。ベテランインストラクターがさっそうと部屋に入って来て、カジュアルに椅子に座り、口頭で手順の説明をする。時々 木製の人形を使いながら。説明は10分ほどで終了。その後、次は体を使ったトレーニングかと思いきや、もうパラシュートを付けて実践に出る。あの10分の説明だけで!? 

個々にインストラクターがあてがわれ、ギアの装着に入る。瞬間的にインストラクター達の顔をスキャン。充分な経験がありそうなのは誰か。普段なら若いお兄ちゃんを好むところだが、この時ばかりは、どうぞ当たりませんように、と思った。私に指定されたインストラクターは 先に説明をしてくれたベテランインストラクターだった。よかった、私は無事に生還できる、、、!

セスナに乗り込み、13,000フィートまで上昇する。窓から外を覗いた時、「何てことをしてしまったんだ、、、」と、始めて本当の恐怖感が心臓を貫いた。 が、時すでに遅し。「後1分で飛ぶ準備に入る」「30秒前、ゴーグルを付けて」「10秒前、シートベルトを外したからね」。インストラクターがカウントダウンしていく。

セスナのドアが開かれ、前の席の人達から 次々と飛び降りて行く。まるで海に飛び込むように。ドボン、ドボン、ドボン。そしてハビーも。

最後部に座っていた私は、それを全て見ながらすっかりハイ状態。「Are you ready to jump!?」「 YES!

飛んだ。

1分間のFreefallは夢のようだった。腹這いの体制で空中に浮かび、ゆっくりと360度回りながら、オレゴンの地平を見渡す。信じられない、今空を飛んでるなんて!

インストラクターがパラシュートを開き、静かに地上に降りて行く。恐れていた激突もなく、スムーズな着地だった。

We did it!」「We did it!」

ハビーと私の興奮状態は1週間続いた。

そして一週間後、アドレナリンが引きはじめた今になってやっと、とっても恐ろしい事をしてしまったんだという実感が沸いてきている。

 

Kiki

 

Skydive Oregon

12150 Oregon 211, Molalla, OR 97038
(503) 829-3483

http://skydiveoregon.com/first-timers/


Posted on 夕焼け新聞 2014年10月号