先日チャートハウスで食事をした。同世代のママ友と、そのティーンエージャーの娘と。いつも気前の良いそのママ友が、食事のギフト券があるから是非、と誘ってくれた。美しく流れるWillamette Riverをパノラマで一望できるダイニングエリア。そのコーナーにリザーブされていた最高のテーブル。「いいねぇ~」と、ママ友と顔がはちきれそうな笑顔を交わし合う。ちょっと不機嫌そうなティーンエージャーの娘を横に。
ところで、私に子供がいなくても「ママ友」って、呼んでいいのかな? ママが別のママと友達になる場合のみが「ママ友」か? それとも「私の友達はママです」を「ママ友」と呼んでもいいの? うーん、わからなくなってきた。
とにかく、「いいテーブルじゃな~ぁい」とすっかりご満悦で席に着くと、すぐにサーバーのお姉さんがやって来た。
「So whose birthday is it?」
「…ハ??」
「Oooh, it’s mine and hers」とニコニコしながらママ友が私を指す。「エ?」
「Wonderful! When is it? Today?」
「Oooh, hers is June 22 and mine is June 15」と、とびきりの笑顔。ほとんど一ヵ月前じゃないか。
誕生日なんだからと 堂々と良い席を確保し、聞かれるとそのまま正直に一ヵ月前の本当の誕生日を言ってのける彼女。さすが、ママ友、おかんの度胸には勝てぬ。
そんなやりとりの間、メニューを見るティーンエージャーの娘が、更に不機嫌な様相に。
「I don’t have anything to eat…」
「Why?」
「Cuz I’m a vegetarian.」
思わず、ジッと彼女を見る。その横でおかんもジッと娘を見つめている。無言。
Chart Houseは古き良き日のアメリカを思わせるトラディショナルで高級感あるレストラン。もちろんロブスターだの、タイガーシュリンプだの、グリルドサーモンだの、あるはず。そういえば最近 表面を軽く焼いたアヒツナとか流行ってるから そういうのもあるはず!と、娘に元気よく話しかける。ほら、メニューをよーく見てごらん!と。
「I don’t eat anything that has eyes.」
もう一度彼女をジッと見る。そしてその横で、やっぱりおかんもジッと娘を見つめている。
「What are you talking about? Vegetarians
eat seafood. Some vegetarians even eat some chicken two or three times a year,
for some occasions.」と、ティーンエージャーに反論してみる。
「I don’t eat anything that has eyes.」とティーンエージャーの娘は繰り返すのみ。
貝類はオーケーらしい、目がないから。完全に負けてるアタシ。
そこにママ友がメニューを彼女の前に広げて、選択肢を提案する。
「Honey how about “Hummus Trio”? It’s got
three different flavors of hummus. That
sounds good, doesn’t it?」
ハマスって、、、。アタシにしてみたら お酒の摘みディップなんですけど、、、。
「And honey, do you want to get some vegetables from the side? “Asparagus” and “Creamed Spinach”? Wanna
get both? Let’s get both!」
そして残るチョイスは 野菜の付け合わせ欄からですか、お母さん。
このママ友、まさか今日突然、ティーンエージャーの娘から べジタリン宣言を受けたわけでもあるまいし。しかし、食事のギフト券もあるし、場所や景色もいいし、誕生日もついでにお祝いできるし、ということで 黙って(無理やり)娘を連れ出したように思われる。何かしら食べるものはあるだろうと。
お母さんの本日の計画遂行の意思は固かった。それと同じくベジタリアンの娘の意思も固かった。この娘、この母にあり。
こんな親子を目の前に、私は困惑していた、ベジタリアンというものに。ナニを持ってベジタリアンなのか。私の知り合いは魚を食べるぞ、ベジタリアンだと言い切りながら。あと卵やチーズ食べたり、ミルクを飲む人もいるよ。目がある生き物から来てるんだけど、それはどうなの?
私はベジタリアンに対する認知度が非常に低い。何度ベジタリアンと言われても、次に会った時はすっかり忘れて 肉料理を勧めたりする。グループで食事を取る時も、ベジタリアンがいることを必ず忘れ、「焼肉!」なんて提案する。しかも思い思いのベジタリアンがいるから、キープアップできない。誰が何を食べて、何を食べないのか。選り好みをする野菜中心の食生活を送る人、っていう解釈はどう? だめ? こんな事大きな声で言ってたら ティーンエージャーの娘に軽蔑の目で睨まれかねない。
枝豆のハマスをバナナのチップスで食べる娘。まあ、ヘルシーって言っちゃ、ヘルシーなのかもね。なーんて気を許しそうになってたら、最後はChart Houseのシグネチャーデザートである”Hot Chocolate Lava Cake”で締めると言うではないか。皆で一つをシェアしましょうという提案に、「ふたつ!」とティーンエージャーの娘が割り込み、「私 一個丸々一人で食べるから」と言う。
ヘルシーちゃうやん、、、。
一つか、二つか、と押し問答をしているとサーバーのお姉さんが 最終的にケーキを二つ運んできた。一つはお誕生日の貴方達に お店から、と。
勝利の笑みのママ友と、すっかりご機嫌なティーンエージャーの娘。誰もこの親子に 勝てる者はいないとみた。
Kiki
Chart House
5700
SW Terwilliger Blvd, Portland, OR 97239
(503) 246-6963
(503) 246-6963
Posted on 夕焼け新聞 2014年8月号
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