去年の パパへのクリスマスプレゼントは、ハビーの案により、ホットドックとビール付き、Blazersのゲームご優待券。クリスマスカードの封筒の表に「VIP Invitation」と書き、パパに手渡した。
まだ一度もBlazersのゲームをアリーナで観戦したことのないパパは、絶対喜ぶはず、今年のBlazersはホットでトップラインナップに入り続けているから得にエキサイティングだよ。とハビーは自分の案の素晴らしさに興奮していた。
でも「VIP Invitation」と書いておいて、アリーナの天井に近い格安シートに、ホットドックってのはどうなの。
“Are you kidding!? YOU HAVE TO have a hot dog and beer when you get to
the games!”
私の冷めた突っ込みに、鼻息荒く反論するハビー。そして徐にBlazersのシーズンチケットを持っている友人ダンの例題を出して来た。ダンはBlazersのホームゲームがPortlandである度に、1時間離れた町から わざわざ観戦に来る。しょっちゅう誘われて連れて行ってもらっているハビーによると、ダンは毎回必ず、ホットドッグを注文する。ここModa Center(もとRose Garden)で売られているホットドッグが、どのゲーム場で売られているホットドッグより美味しい、と断言するらしい。すぐ影響を受けやすいハビーは、それにつられて ダンと一緒に毎回ホットドッグを食べる。いや、これが 実は結構うまいんだって、絶対に一度は食べてみたほうがいいって、と力説する。
ここで私が反射的にやってしまうのは、これだけの話で、自分の優れた想像力を使い、勝手にすごいイメージを創り上げてしまうこと。すぐさま 頭の横にぽわ~んと雲が浮かび、湯気の立ち上がるホットドックの絵が写し出された。柔らかいホットドックバンに、こんがりグリルで焼かれた細長いソーセージが横たわる。数か所熱で皮が裂けており、そこからジュージューとソーセージのジュースが流れ落ちている。カプリと一口いくと、カリッと皮がはじける音がし、ジューシーな肉の美味さが口の中に広がる。食感のイメージは昔日本で食べてた、日本ハム「シャウエッセン」ポーク粗びきウインナーソーセージ。
トッピングは刻んだ玉ねぎと酢漬けのハラペーニョスライス、もしくは炒めた玉ねぎとクリームチーズ。どちらにしてもマスタードは粗びきに限る。
この時点で、ゲーム観戦の日がすっかり待ち遠しくなっていた。
当日、パパ、ハビーと共に、腹べこ状態でアリーナに到着。ロビーではいつもテレビで見るスポーツキャスターが 煌々と光る照明を受け、ゲーム前の中継をしていた。ロビーを埋めるBlazersファンの熱気に、私達の気持ちも盛り上がる。エレベーターで3階に上がり、売店エリアへと向かう。まずはビール。IPAが一杯、9ドル! 街のバーの値段の2倍….。しょうがねえ、こういう場所だからね。次に、ホットドックの売店へ。ホットドック一つ5ドル75セント。一見、そこまでひどい値段ではない、と思った。まあまあ、こういう場所だからね。頭には 自分が想像したホットドックが貼り付いていた。
はいよ、3人前ね、とカウンターに出された代物に、目が釘付けになった。フツーのホットドックだった。Safewayで売っているような8個入り1袋1ドルくらいのホットドッグバンに、8個入り1パック1ドルくらいのソーセージが乗っかっているだけだった。計17ドル25セント。ひとつひとつ皆に手渡しながら、私はハビーの顔をジッと見る。
トッピングのチョイスはSauerkraut, Relish, そしてChopped Onionの3つだけ。 オニオンを乗せ、ポンプの頭を押して まっ赤なケチャップとまっ黄なマスタードを掛ける。ペンキの液みたい。この黄色、何かを彷彿させる。
3人でベンチに座り、それぞれのホットドッグにかぶりつく。モグモグと勢いよく食べるパパとハビーを観察。普通のアメリカ人だわ。これに問題はないようだ。パサパサとドライなホットドッグバンに歯ごたえのない柔らかいソーセージ。かなりの期待はずれ。
初めてのアメリカ旅行、野球を観に行くんだ、という話を当時の 英語の先生に話したら、野球場に行くなら必ず買って食べなきゃいけないものがある!と ある食べ物を教えてくれた。彼の説明を聞いても全く未知の代物だったが、私の頭の中にはとてつもなく美味しそうな食べ物が創り上げらていった。トウモロコシで出来たポテトチップスのようなチップスの上に溶けたチーズと色々なトッピングが乗っている食べ物。
実際は、ペンキの液みたいな、まっ黄なチーズがかかったトルティーヤチップスだった。
明らかに、その味に問題があるのは私だけのようだった。
何がいつも私に失望を招く? 必要以上の想像力と、行き過ぎた期待度?
苦悩する私にハビーが一言、”It’s just simple that tradition over powers taste, so reeelaaax”。明らかに、慣習に勝るものは無し、、、。
Posted on 夕焼け新聞 2014年2月号
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