最近全く外食をしていない。あんなに新しいレストランが出来ると、すぐに飛んで行って、トレンドの味を楽しんでいたのに。美味しくて おしゃれな店開拓のためなら お金に糸目もつけなかったのに。
ここ数カ月家に籠っている。あそこにこんな店が出来た、あんな店が出来た、という情報も入って来ない。ていうか、それをキャッチしようとしていたアンテナが折れている。興味が失せているので 折れっぱなしで放置。
実は私はそんなに贅沢できるほど お金に余裕があるわけではないんですね、という話もあるが、それでもギュッと目をつぶり、クレジットカードを握りしめて 飛び出して行こうとしないのは、流行りのお店の、流行りのスタイルに飽きた、から。
新鮮で、オーガニックで、地元の農家から直に仕入れた、という触れ込みの食材に飽きた。倉庫や、古い家や、鉄筋の建物を改装し、天井や厨房が吹き抜けて見えるデザインの内装に飽きた。少ないポーションにお高く留まった値段に飽きた。一杯10ドルのカクテルに、一皿15ドルのハンバーガーに飽きた。
クオリティは高いが、個性が無くなった。もうどこに行っても 同じ味。NWの、Portlandの、レストランに飽きた。
そう嘆く私は キッチンで 「Pizza a Go Go」のチラシを目を見つめている。真っ赤なコピー用紙に、ゴーゴーダンスを踊りそうな女の人の影がプリントされたそのチラシ。「WE DELIVER」の大文字がヘッダーに付く。
それは、N Williams Ave.にあるピザ屋のメニュー。
「ハニー、今夜は何を配達してもらうー?」
ハビーにそのメニューを渡す。
The
Triple Dipper ✔、Electric Cowboy ✔、 Midnight
Boogaloo ✔。
「このチェックマークは何?」
ボールペンで書き込まれた✔マークをハビーが指摘する。
「それは今までに 注文したピザよ。」もうすでに7種類のピザにチェックマークが付いている。
「この星が三つ付いているのは何?」
Gimme Some Love ☆☆☆
「それは 三ツ星級に美味しいと思ったピザよ。」
「じゃあ、この矢印が付いているのは?」
→ Groovin’
「それは今度注文しようね、って言ってたピザよ。」
「勝手に矢印を付けないでくれヨ。ボクが次に食べたいのは このピザなんだから!」と怒ったハビーが、青ペンで Mirror Ballを丸で囲む。
ここ2カ月、ご飯を作る気分が沸かないと、キッチンの引き出しからPizza a Go Goのメニューを取り出す、というパターンを繰り返す私。外食に興味が失せた、湯水のように金は溢れない、そして出不精がそれに覆い重なる。それで行き着いたのが ピザのデリバリー。
なぜピザなのか。それは、デリバリーの特典を改めて知ったから。今の時代、Pizza HutやDomino Pizza以外の選択がある。ハンドメイドのクオリティーをデリバリーで味わえるのだ。
なぜPizza a Go Goなのか。それは うちが配達圏内だったから。そして初めて配達してもらったピザが感動的に美味しかったから。それゆえGimme Some Loveに三ツ星が付いている。
ピンポーンと鳴れば、ハビーが玄関まで出て行ってピザを受け取ってくれる。そして 優しいハビーは、支払いも次いでにしてくれる。ノーメイク、TシャツとトレーニングパンツでグータラしていてもOK。いや、そんな姿でも 配達のお兄ちゃんに応対できるのが デリバリーサービスの良さ。
いろんなレストランの味に飽きたと言っている私が、飽きもせず 一件のピザ屋のピザばかり食べている。次会は何を注文しようか楽しみでしょうがなく、13種類のピザに 徐々にチェックマークを付けながら 喜んでいる。DVDやBlazersのゲームをTVで観ながら、好きなビールやワインを安く買ってきて、お家でピザを食べる。私は 冬眠期に入ったのか。
いや、Pizza a Go Goのピザは冬眠期の食事にとどまらない。13種類のピザを制覇した後は、「Make Your Own Pizza」で最高の組合わせを生み出してやろうと、ピザに対する意気込みは続く。なぜ? 赤いメニューのチラシを手に取り、観察する。よーく隅々まで目を通してみると、ちぃちゃーいフォントで こんな説明があった。
“At PIZZA A GO GO we handcraft our quality ingredients daily”, ここまではいい。 “We use
only 100% whole milk mozzarella, freshly prepared toppings, quality meats and
local organic produce (when available) on our pizzas.”
あれ、やっぱり結局これなのね。今日の今日まで気が付かなかったケド。こういう紹介文抜きでは 店のアピールにはならないのが、ポートランドか。
でも”when available”て、ところが気に入った。肩に力が入っていない適当さ、気楽さがある。…て、思って気が付いた。ああ、そうか! 私は 「この気楽さ」を ピザに求めているんだ。店側が主体でなく、私側が主体となって食べる事を楽しみたい、という気持ちから、Pizza a Go Goのデリバリーにハマっているのかもしれない。
Kiki
PIZZA A GO GO
3240 N Williams Ave.
Portland, OR 97227
www.pizza-agogo.com
503-335-0300
Posted on 夕焼け新聞 2014年3月号
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